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第010話

「私の愛はもう他の人に向かっているから、もうこの悲しい場所には戻ってこないよ」

私は横で携帯をいじりながら、何事もないように装っていた。

警察署の前に着いた時、和也は持っていた書類を林さんに渡して、私を脇に引っ張った。

「会社のプロジェクトで重大な問題が起きた。俺が行って対処しなければならない。君は先に中に入ってて、後で迎えに行くよ」

私は笑みを消し、和也を疑うように見つめた。彼の額には汗がにじんでいた。

彼の手を振り払い、林さんのそばに歩み寄った。

「行こう。私はまた捨てられたけど、今度は嬉しいわ」

林さん夫婦は何も言わず、私の後ろにいた和也を睨んでから、一緒に歩き出した。

私は振り返らず、彼が私が想像したほど簡単には立ち去らなかったことも見なかった。彼は私が警察署に入るのを見届け、しばらくその場をうろうろしてからようやく去った。

しかし、こんな振る舞いを誰に見せようとしているのだろう?

和也は白川美咲を追って直接イギリスに行った。メッセージもなければ、電話も一度もかかってこなかった。

翌朝目が覚めて、彼女のSNSの投稿を見て知った。

「私がこんなにあなたにとって大切だったなんて。これからは、もう劣等感を持たないわ」

写真には、彼女が裸の上半身の男性に寄り添っている姿が写っていた。誰かは聞かなくても分かる。

私はその投稿に「いいね」を押し、同時にそのスクリーンショットを和也に送った。

「また彼女のところに行くために私を捨てるの、楽しい?」

その日の午後、私は数人のリフォーム業者に連絡を取り、半年かけて手掛けた家を指差して言った。

「全部壊して!」

取り壊して再利用できる電化製品は、下の階で新婚夫婦が使っていたものに安く売った。

持ち運べないものや床のタイルさえも、大工たちがハンマーで次々と砕いていった。

廃墟となった家を見つめながら、私は最後に黒いインクをすべての壁に投げつけた。

三浦安奈にその写真を送って満足し、鍵を床に放り投げて家を出た。

私が愛情を注いでリフォームした婚房が、この二人のためになるくらいなら、絶対に壊した方がいい。

「これこそ私の女よ、かっこいい!」

トウモロコシをかじりながら笑っている安奈の姿を見て、私は笑みを浮かべた。彼女が私を元気づけるためにわざわざ電話をかけてくれたのだと知っていた。

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