共有

第008話

彼は言葉に詰まり、一瞬返事ができなかった。

もう一度彼を見ることなく、私は手を上げてドアを閉めた。

「このクズ男!まさか情深い男だと思ってたのに、感情があるのはあのクズ女にだけなんだ!」

三浦安奈の強引な質問攻めに負けて、私はこれまでの経緯をすべて話した。

彼女はしばらく横に座ったまま呆然としていたが、二人を片付けに行くと思いきや、目を赤くして泣き出した。

「もしあの日、タクシーの運転手さんがいなかったら、私はもう君に会えなかったんじゃないか?」

記憶の中で、彼女が泣いている姿を見たことがなかった。そんな彼女に私もつい涙が込み上げ、彼女の胸に顔を埋めて嗚咽した。

「それでも許せないわ。こんなにひどい目に遭わせられて、簡単に済ませるわけにはいかない。君の後ろに誰もいないと思ってるの?私、安奈がどういう性格か知らないわけじゃないでしょ!」

彼女はいつも勢いがあり、特に私のことになると火薬のようにすぐに突進していく。

私は急いで彼女をなだめて言った。

「分かってる、分かってるから。私に任せてくれる?」

そのため、退院前夜に和也が深夜に病室に現れて私の手を引こうとした時、私は彼の手を振り払った。

「柚子、ごめん。この間、ずっと考えていた。君と団子を追い出したのは間違いだった」

彼の手を避けて顔を背け、私はライトをつけた。

「私たちの関係って何?君は私に謝る必要なんてないよ。私がこうなったのは自業自得だから」

彼は焦った表情で、強引に私の手を握りしめた。

「ごめん、俺が悪かった。君は俺の婚約者なんだ。ずっとそう思っていたんだ。あの日、俺が口を滑らせたんだ」

私は笑いそうになった。

「本当に私たちの間に何が問題だったか、分かっているの?」

私が言葉を投げかけると、彼は明らかに興奮して、こう言った。

「誓うよ。これからは白川美咲のことはもう気にしないし、彼女とも二度と会わない」

私はその場で立ち尽くし、彼の震える手が私の頭を撫でるのを感じた。

長い時間が過ぎ、私は涙を浮かべながら笑った。

「和也、もう一度やってみようか。でも、約束を破る者には、千本の矢が突き刺さる運命だよ」

私が三浦安奈をフランスに帰らせた後、私は退院してすぐに婚房に戻った。

和也が私を支えて家に入ると、家がきれいに片付いているのを見て、彼はおどけるように言った。
ロックされた本
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status