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第303話

小塚悠人はそれを見て、急いでしゃがんで赤い小さなボールを拾おうとしたが、それよりも先に骨ばった手がそのボールを拾い上げ、手の中で弄び始めた。

「この小さなボール、なかなか風変わりだな」声は穏やかで柔らかかった。

小塚悠人は声の方向を見て、その人物を見上げた。話しかけてきた男は眉目秀麗で整った顔立ちをしており、黒と白のオーダーメイドのスーツを着ていたが、その雰囲気は佐藤峻介とはまるで正反対だった。

一人は鋭利で冷酷だが、もう一人は柔和で温かい。

彼の眉と目はまるで春の三月の太陽のように、見る者をほっとさせるようだった。

彼は佐藤峻介の友人の一人であり、桐原清十郎であった。

こんなに近くで彼の香りを嗅ぐことができ、薬草が混じり合ったような淡い冷たい香りが漂ってきた。

小塚悠人は穏やかに笑い、「手作りのものです。今の機械製品とは違います。ありがとうございます」と言った。

桐原清十郎はその小さなボールを小塚悠人の手のひらに返しながら言った。「若旦那が車の鍵を拾うこともできないほど、この小さなボールは君にとってとても大切なものなんだね」

「大切な友人からの贈り物なので、当然大切にしています。お邪魔してすみません」

小塚悠人は車の鍵を拾い、大きな袋を持ちながら身を引いて道を開けた。

桐原清十郎はそれ以上何も言わず、長い足で軽食店に入っていった。

小塚悠人が去った後、桐原清十郎は携帯電話を取り出し、気だるそうに電話をかけた。

電話がつながると、佐藤峻介の苛立った声が聞こえてきた。「何か用か?」

「用もなく電話しちゃいけないのか?まだ君の優子ちゃんを見つけてないのか?」桐原清十郎の声には、どこか茶化すような響きがあった。

「笑い物にしたいなら他の日にしてくれ。今は時間がない」

そう言って佐藤峻介が電話を切ろうとしたその時、桐原清十郎は得意げに笑い、「でも、僕はもう見つけたんだよ」と言った。

佐藤峻介は電話を切る手を止め、声を高めた。「なんだって!優子ちゃんはどこにいる?」

「さっき少年に会ったんだ。彼の車の鍵から祈りの赤い小さなボールが落ちたんだけど、その編み方が昔君が持っていたものと全く同じだった」

あの頃、佐藤峻介は毎日大切に持ち歩いていた赤い小さなボールを思い出した。

「そいつはどこにいる?」

「3分前まではここにいたけど、今はもう行
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