第85話

「井上監督と仲が悪いの？」真弓は尋ねた。

「いいえ」礼子がさりげなく言った。

でも、彼らの間柄は何だかおかしいと思った。

どうして礼子は雄一の電話に出なかったか？

監督の電話に出ないわけがないだろう？

もしかして、礼子は人気女優だからって？

今回のドラマは規模と投資額が普通であり、礼子がエンタメ業界でいつもこのレベルの数倍の規模と投資額のドラマを撮影していたと聞いた。

だから大物面したのか。

でも、礼子は大物面する人じゃないような気がしていた。

「眠い」礼子があくびをした。「寝る」

「いいよ」

他人のプライベートだから、真弓は当然聞かなかった。

それに、彼女は礼子とまだ馴染んでなかった。

何だか分からないが、「ベッドを共にする」関係となった。

......

翌早朝。

真弓は起きて朝食を作り、簡単だが、ついでに礼子の分も作った。

礼子が眠そうに寝室から出てきて、ダイニングテーブルの上の朝食を見て、あくびをして言った。「食べないよ。ダイエット中なの」

真弓に対して遠慮しなかった。

礼子が誰にでもこういう態度かと真弓は非常に興味があった。

「......昨夜はよく食べていたじゃないか？」

「だからダイエットするのよ」礼子が当たり前のように言った。

「朝食食べないと胃に悪い」

「知ってる。助手がゆで卵と脱脂乳を用意してくれる。車に乗ってから食べるよ」

「もう行くの？」

「昨夜、井上監督に遅刻しないように散々言われたじゃ、監督を敢えて怒らせるなんてできないわ」

でも、昨夜監督の電話に出なかった。

「夕べ有難う」礼子が真弓に目を瞑って笑った。「結婚の時、ご祝儀をいっぱいしてやる」

「......」誰と結婚するの。

......

礼子が星野グループと契約したことは、ビジネス業界とエンタメ業界に即座に衝撃を与えた。

礼子が中規模の星野グループと契約するなんて、想像もできなかった。

しかし、予想外だったため、この件はトレンド入りして、星野グループの人気が急速に高まった。

文哉がオフィスに座り、顔が暗くなった。

真弓はただこの効果を望んでいただろうか?!

非常識なことを利用してトラフィックを増やしたいのか！

それでどうするの！

星野グループの服装は普通過ぎて、長持ちしないだろう。ブームが終わったら、全て