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第19話

真弓に言われて瑠璃子は言葉を失った。

「真弓、瑠璃子は君のことを心配したのに、どうしてこんなに情けなくて、彼女を苛めたの?僕と別れて気が済まないと思うが、どうせ、僕たちは親戚じゃ......」

「文哉、何度も言ったが、自分を買被りしないで、私にとって、君は既に死んだ。瑠璃子のことが嫌ったのは君と無関係だ。勿論、少しの関係はある」真弓は一旦止まって続けて言った。「さらに嫌いになっただけだ」

「姉さん、私を揶揄ってもいいが、文哉君を責めないで......」

瑠璃子の話しが終わらない内に、真弓は向きを変えて去って行った。

ほんとに、みっともなかった。

真弓の背中を見て、瑠璃子がかっとなって悲鳴を上げそうになった。

文哉も同じぐらい怒っていた。

彼の事をも益々気にしなくなった。

「真弓」

一夫が彼女を大声で呼止めた。

真弓は唇をすぼめた。

彼女は非常に不本意ながら向きを変えた。

鈴木家に戻って、彼らの用事が済まないと、彼女は簡単に離れないと分かっていた。

「ついて来てくれ」一夫が一言を残して行った。

真弓は我慢して彼の後を追って行った。

今度、呼び戻して、彼女を揶揄うだけではなく、きっと何かの企みがあると思った。

鈴木家の2階にあるスカイガーデンに来た。

一夫が立ち止まり、冷たい口調で聞いた。「今日の事、君がやったのか?」

「何のことですかお父さん?」真弓はわざと分からないふりをした。

一夫は怒りを抑えた。「もちろん画像の事だよ」

「お父さんの買被りです。私は星野グループに就任したばかりで、信子さんとのことを知る筈がないでしょう......」

「もういい!」一夫は怒鳴って彼女の話を中断した。

最初に真弓を疑っていたが、信子の事があまり知られてないし、会社に来たばかりの真弓に知られるわけがないと思った。彼女はそんなに凄いと信じたくなかった。

「これから男を紹介してあげるから、付き合ってみてくれ」一夫が単刀直入に言った。「君のような女、身の程を弁えて、気を利かせてよ」

そう言われた時に、スーツ姿の男が現れて、それはさっき隣に座っていた男だった。

「こちらは馬場先高志だ。お婆さんの孫嫁の兄で、今年35歳、年齢的にぴったりだ」一夫が紹介した。

彼を一瞥して、真弓は話さなかった。

高志は率先して手を伸ばしてきた。「こんにちは、真弓さん」

「鈴木と呼んでください」真弓は手を伸ばさず、表情が冷たかった。

「高志の家庭は普通だが、彼は今樋口グループに就職していて、未来が明るい。バツイチで6歳のお子さんがいるが、とても大人しいお子さんで......」

「お父さんがいいと思って、どうして大切な瑠璃子に紹介してやらないのですか?私に紹介して損したじゃないですか?!」

「真弓、気を利かせて!」一夫はすぐ激怒した。

「ごめんなさい。用事があるので、これで失礼します」

「止まってくれ!」

「おじさん、僕と真弓さんに話をさせていただけませんか?」高志が積極的に話しかけた。

真弓を警告するように強く睨みつけて、一夫が腹立ったまま離れた。

真弓は離れなかった。一夫の面子を考えたくないが、はっきり高志に説明をして、面倒なことにならないようにしたいと思った。

しかし、彼女が話す前に、高志は言い出した。「鈴木さん、北城での君の評判が良くないことをみんな知っているよ。鈴木家の面子を念じて来たのだ。君のような女が大嫌いだ。高嶺の花のようなふりをしないでくれないか?!」

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