前世の虐めに目覚めた花嫁、婚約破棄を決意
滝川奈津美は三年間、黒川涼に尽くし続けた。自分の誇りも、プライドさえも捨て去るほどだった。
しかし涼にとって彼女は所詮、予備の選択肢、いつでも切り捨てられる存在でしかなかった。
神崎市の誰もが知っていた。涼が本当に愛しているのは白石綾乃であり、奈津美は安っぽい代用品に過ぎないことを。
結婚式当日、奈津美は何者かに拉致され、三日三晩もの間、散々な目に遭わされた。
それなのに涼は身代金を払うことを拒否し、むしろその日のうちに白石綾乃と結婚式を挙げてしまったのだ。
その時、奈津美の目が覚めた。
気づけば三年前、婚約パーティーの日に戻っていた。白石綾乃の自殺未遂の知らせを聞いて、涼が彼女を置き去りにした、あの日に。
周りの視線は冷ややかだった。
しかし奈津美は一切取り乱すことなく、ただ静かに婚約破棄を告げた。理由は「黒川グループ社長のED疑惑」。
その一言で世間は騒然となった。
かつて彼女を徹底的に軽蔑していた涼が、今度は彼女を壁際に追い詰めて言った。
「奈津美、こんな駆け引きが楽しいのか?」
「社長、厚かましいという言葉は初めて聞きました?」
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