All Chapters of 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~: Chapter 51 - Chapter 60

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1 親睦会の夜

中川師長から聞いた話もまだ半信半疑、白川先生や七海先生の気持ちもよくわからないままで私は数日を過ごした。今夜は、歩夢君が企画してくれた親睦会の日。日頃あまり話せない看護師の仲間達と親睦を深める会を開きたいと提案し、こうして素敵なお店を予約してくれた歩夢君には本当に頭が下がる。激務の合間、入れ替わりで集まれるメンバーだけにはなるけれど、せっかくの機会なのでみんなで楽しみたいと思っている。「珍しいわね。春香さんが来てる」「ほんと。こういう場所、苦手なんだと思ってたのに」そんな声が耳に届く。そう、嬉しいことに今日は春香さんが来てくれている。相当頑張って歩夢君が声をかけてくれたに違いない。きっと春香さんは、他の誰からの誘いも受けないだろうから。「皆さん、ドリンク注文しますから言って下さい」早速、歩夢君が先頭に立って会を仕切ってくれている。こういうところを中川師長も嬉しい反面、心配もしているのだろう。それでも、とても楽しそうな歩夢君の笑顔に、私まで幸せな気持ちになった。「藍花ちゃん、この前あなたのことを『可愛い』って言ってる患者さんがいたわよ」「えっ」先輩看護師がみんなの前で言った言葉は、私を赤面させた。「うんうん。確かに藍花ちゃんって可愛いしスタイルいいし、雑誌のモデルさんみたいだよね」「や、やめて下さい。そんなことないですから」「藍花ちゃん、そんなに可愛いんだから彼氏いるんでしょ?」その質問の最後に被せて、歩夢君がグラスを倒した。「あっ!すみません!」慌ててみんなでテーブルを拭く。「どうしたのよ、歩夢君。いきなりグラスを倒すなんて」「す、すみません。ちょっと手が当たって」苦笑いしながらテーブルを拭き続ける歩夢君は、ほんの少し動揺しているように見えた。「それにしても春香さん、今日はよくきたわね。病院では行かないって断ってた気がしたから」会話の内容が私から春香さんに変わってホッとした。女性の会話はコロコロと変化する。どんどん枝分かれし、気づいたら元々何について話していたかなんてすっかり忘れてしまう。
last updateLast Updated : 2025-03-13
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2 親睦会の夜

「……はい」春香さんは、相変わらず小さな声で笑顔もない。「どうして来てくれたの?」「……特に意味はないです」「春香さんが来てくれて嬉しいわ」「ああ……はい」受け答えの悪さに、先輩達もすぐに絡むのをやめてしまった。なぜかずっと不機嫌な顔で座っているのが気になってしまう。「藍花さん。これ食べて下さい。美味しいですよ」「あっ、ありがとう。うわぁ、美味しそう、いただきます」歩夢君は、奥の方にある料理をお皿に少しづつ取って渡してくれた。他の先輩達にも同じようにしている。こんな配慮ができる男性は、好感度が自然に高くなる。しかも、盛り付け方も綺麗だ。歩夢君の繊細さが現れている気がした。「はい、どうぞ春香さん」「……ありがとうございます」春香さんは、歩夢君からお皿を受け取ると、その場から離れ、違うテーブルに移った。私が近くにいるのが気に入らないのだろうか。そう思うと何だかとても心が痛い。せっかくの時間を楽しめなくなりそうで切なくなる。「大丈夫ですか?藍花さん」「う、うん。大丈夫だよ」「本当に?顔色悪いですけど……」歩夢君の気遣いが嬉しい。「そんなことないない。楽しいよ」「あの……少し話しませんか?」そう言って歩夢君は、奥のテーブルを指さした。「……えっ、あの……」私は、歩夢君と話すところを春香さんに見られたくなくて、言葉に困ってしまった。2人でいるところを見たら、きっと嫌な気持ちになるだろうから。「大丈夫……ですか?」「うん。でも、今日はみんなで話そうよ」「……あっ、そうですね。すみません」「謝らないで。ごめんね」「……そう言いながら藍花さんも謝ってますよ」「あっ、えっ、そうだね。謝ってたね」2人とも苦笑いした。何だかお互いぎこちなくて、少し寂しそうな歩夢君を見たら胸が苦しくなった。中川師長が言ってたことは本当なんだろうか?曖昧な感じではあったけれど、私のことを好き……って……今でもまだ歩夢君の想いが私にはよくわからない。
last updateLast Updated : 2025-03-14
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3 親睦会の夜

それから数時間して、親睦会は楽しい雰囲気の中で終了した。春香さんはあまりみんなとは話していなかったけれど、歩夢君が喋りかけていた時だけは、ほんの少し笑顔も出ていた。ほとんどみんなが帰った後、歩夢君は春香さんと私を途中まで送ると言ってくれた。「ごめんね、歩夢君。ありがとう」「いえいえ、同じ方向ですから」「……」春香さんは黙っている。3人での会話はやはり弾まない。「春香さん、今日はみんなでワイワイ過ごせて楽しかったね」「……まあ。でも、微妙です。藍花さんはみんなに笑顔をふりまいていて、何だか誰にでも良い顔してるのがちょっと……」「えっ」「何を言ってるんですか、春香さん。藍花さんにそんな言い方しちゃダメですよ」「……来栖さんは藍花さんの味方なんですね」「味方とかじゃなくて、みんなで仲良くしたいだけですよ。笑顔の方がいいじゃないですか。春香さんも笑顔でいて下さい」「私は、誰にでも笑顔をふりまいて好かれようとする女性が苦手なだけです。誰かみたいに」「春香さん……」私のことを言われていると思うとつらくなる。春香さんは私を敵対視して、目も合わせてくれない。「藍花さんはね、とても優しい人ですよ。春香さんは誤解してます。みんな仲良く……」「もういいです!私、1人で帰りますから」歩夢君の言葉を聞かず、春香さんはすたすたと歩きだした。「歩夢君、行ってあげて。お願い」「……でも、藍花さん……」「私は平気。春香さんが心配だから」「……わかりました。気をつけて帰って下さいね。じゃあ、行きます」「うん、お願いね」歩夢君は走って春香さんを追いかけた。夜空に向かってため息をひとつ。春香さんは、どうしてこんなにも私を嫌うのだろうか?ここまで言われると、もうどうしていいのかわからなくなる。楽しい時間を過ごせた夜が、こんな形で終わるのはとても悲しい。私は肩を落とし、静かな夜の道を1人ゆっくりと歩きだした。
last updateLast Updated : 2025-03-15
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1 お似合いの2人?

「今日もいい男だね~」「そうですか?ありがとうございます」白川先生は、個室に入っている齋藤さんという80歳の女性の患者さんを診ていた。「ずいぶん顔色も良くなりましたね。手術の傷も良い具合です。来週には退院できると思います。よく頑張りましたね」患者さんにいつものように優しく話しかける蒼真さん。「白川先生みたいなハンサムな主治医なら、私、ずっとここに居たいわ~。退院しても家に1人だから寂しいし」「私も齋藤さんとお話するのは楽しいですが、傷が治ったら退院です。またいつか……と言いたいところですが、医師としては戻って来られないことを願うしかないですね。でも、退院まではいつでも声をかけて下さい」「本当にいい男だ。優しい男は女を幸せにするからね」齋藤さんはかなりの蒼真さんファンだ。みんな、この容姿と言葉の魅力にハマっていく。だけど、先生は私に厳しい。最近は、アメとムチを使い分けられている気もするけれど、蒼真さんの本音はなかなか読み取れない。「あなた、えっと……」「あっ、蓮見です」蒼真さんに比べて、私は何と存在感の薄いことか。患者さんに名前も覚えてもらえないなんて――「そうそう蓮見さんね。あなたはとってもキュートな女だね」「そ、そんなことありません!」齋藤さんは、顔から下の方まで視線を落としながら、私をまじまじと見た。キュートだなんて、蒼真さんの前で恥ずかしくて顔から火が出そうだ。「あなた、キュートの意味がわからないの?」「えっ、い、いえ。意味はわかります。でも、私はキュート……ではないので」否定をする時の顔に笑顔は無い。私は、蒼真さんに注意されないように慌てて無理やり笑顔を作った。
last updateLast Updated : 2025-03-16
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2 お似合いの2人?

「キュートっていうのは蓮見さんみたいな人のためにある言葉だよ。あなたは私の若い頃にそっくりだから。昔は私もあなたみたいにキュートだったんだからね」「齋藤さん。あなたは今でもとてもキュートです」蒼真さんは、優しさ満開の笑顔で言った。「あらぁ~。白川先生にそんなこと言われたら嬉しくて心臓がドキドキするわ~。今じゃなくて、もっとずっと若い頃に先生に出会いたかった。そしたら、人生バラ色だっただろうに」可愛らしく胸に両手を当てる姿が乙女だ。年齢を重ねても、こんな可愛らしい仕草のできる素敵な女性でいられることがうらやましい。「でも、若いってことは素晴らしいね。宝物だよ。今を大切にしなよ、蓮見さん」「……はい。1日1日を大切にしたいと思います」「真面目だね~。ピチピチの蓮見さんは、白川先生とお似合いだよ。あなた達は付き合ってるのかい?」齋藤さんの突拍子もない質問にとても驚いた。「ち、違います!そんなわけないじゃないですか。絶対に有り得ないですから。そんなこと言ったら白川先生に失礼ですよ」照れすぎて、速攻、全否定した。「あら、顔が赤いわよ。別にいいじゃない、そんな恥ずかしがらなくても。本当に2人はお似合いなんだから。白川先生、あなたはどうなんだい?」止めて……それ以上聞かないで、と心が叫ぶ。「齋藤さん。うちの看護師をあまりからかわないで下さいね」「そ、そうですよ。からかわないで下さいね」蒼真さんは、私とお似合いなとど言われて嫌な気持ちになっているかも知れない。そう思うと苦笑いするしかなかった。「ですが……蓮見は齋藤さんほどではないですが、結構可愛らしいところがあるんです」「えっ」「ですから、この先はどうなるかわからないです」蒼真さんの言葉に一瞬頭がパニックになりそうだった。いや、これは冗談に違いない。だとすればかなりのブラックジョークだ。「 あらやだ。素敵じゃない!もし他の人だったらヤキモチ妬いちゃうけど、蓮見さんは可愛らしいから応援するわよ。本当に、私もあと少し若かったら白川先生の彼女になれたのに残念だわ~」齋藤さんの笑い声が病室に響いた。「いいですね。その元気があれば大丈夫ですよ。齋藤さんにはきっと、私なんかよりずっとダンディな男性がお似合いです。じゃあ少し休みましょう」そう言って、蒼真さんは齋藤さんの掛け布団の歪みをさり
last updateLast Updated : 2025-03-16
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3 お似合いの2人?

「先生、ありがとう。また2人で来てね、本当にいいコンビだよ」「じゃあまた。失礼します」私達は病室を出た。「あの、患者さんに適当なこと言わないでもらえますか?」「いきなり何だ?」「何だって、冗談だとしても、あんな言い方して間違って広まったらどうするんですか?」「広まったら?何か問題か?」蒼真さんは私に真顔で答えた。「も、問題かって、そんなの問題に決まってます!蒼真さんに迷惑がかかりますから。もし私なんかと変な噂が流れたら……」「それならそれで構わない」「えっ……」「白川先生!すみません、ちょっとよろしいでしょうか?」「ああ」蒼真さんは、看護師に呼ばれてさっさと行ってしまった。構わないなんて……本当に適当過ぎる。実際、噂になったら嫌な思いをするくせに。私は、その場で齋藤さんみたいに心臓に手を当ててみた。どうしてだろう、すごく鼓動が激しい。「おかしいよ、こんなの……。本当、何なの?」思わずそう呟いた。蒼真さんは、私の心を振り回して楽しんでいるのか?もしからかわれているとしたら、かなりキツイ。私は、何ともいえないモヤモヤした気持ちを引きづりながら、ナースステーションに戻った。「ちょっと蓮見さん!」その時、突然、誰かに声をかけられた。「痛い!!」かなり語尾の荒い口調に驚き、私は思わず持っていた医療機器を足の上に落としてしまった。「藍花さん!!大丈夫ですか!」叫び声を聞きつけて、歩夢君が慌ててこちらに駆け寄ってくれた。「大変です、靴下にかなり血が滲んでます。切れてしまったのかも知れません」しゃがんで私の足先を見ながら歩夢君が言った。指の部分に重いものが落ちたせいで、確かに白い靴下が真っ赤になっていた。ふと顔を上げると、その視線の先に春香さんがいた。私に声をかけたのは春香さんだったんだ――歩夢君と私のやり取りを見てしまったせいか、春香さんはそのまま背を向けてどこかに行ってしまった。
last updateLast Updated : 2025-03-17
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4 お似合いの2人?

「だ、大丈夫だから、これくらい平気。心配しないで」「何言ってるんですか!ダメですよ。今、外来時間外ですから白川先生に診てもらいましょう」そう言って、私の肩を支えて数歩だけ歩かせてくれた。「ここに座ってて下さい。白川先生呼んできますから。痛いと思いますけど、少し我慢して下さいね」歩夢君は、私のために必死になってくれている。ナースステーションにいた他の看護師達も心配してくれ、そのせいで仕事の手を止めさせてしまった。私が仕事に集中していなかったことで、みんなに迷惑をかけてしまったんだ。こんな調子ではいつまでたっても立派な看護師になんてなれない。「先生、こっちです!」歩夢君は、たまたま近くの部屋にいた蒼真さんを連れて戻ってきてくれた。「す、すみません!」怒られると思い、私はとっさに謝った。「何してる、気をつけないとダメだろ!」やっぱり、怒っている。「は、はい、すみません。たいしたことないのに先生にお手数をおかけして……」「バカ言うな。傷をなめていたら感染症を引き起こす。そんなことくらいわかるだろ?」「……はい。すみません」「見せて」「はい……」蒼真さんは、ゆっくりと私の靴下を脱がせた。そして、しゃがんだまま私の足を持って患部をじっくりと見た。足の指を見られてるだけなのに、ものすごく恥ずかしい。「ここ、痛いか?」ビニールの手袋をしてる蒼真さんの手は血で染まってしまった。「はい、少し痛みます」患部の辺りを触れられると確かに痛かった。「ここは?」「大丈夫です。……先生、本当にすみませんでした。私の不注意でした」「そうだな。万が一、患者さんの足に落としたら取り返しがつかない。常に機器を取り扱う時は気をつけるんだ」蒼真さんの言葉にハッとした。「はい、気をつけます。本当に……すみません」蒼真さんの言う通りだ。もし患者さんの足に重い機器を落としていたら……そう思うだけでとても恐ろしくなった。
last updateLast Updated : 2025-03-17
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5 お似合いの2人?

もっと注意を払って日々の仕事に取り組まなければならないと改めて反省した。「爪が少し割れてしまって血が出てるんだ。縫わなくても大丈夫そうだな。歩夢、念の為、整形外科にレントゲンを頼んでくれ」「わかりました!」私の怪我は、結局、ナースステーションにあった救急箱と薬で治療できる程度だった。レントゲン検査も異常がなく、骨折はなかった。みんなは安心してくれたけれど、包帯を巻いてくれた蒼真さんにも、色々動いてくれた歩夢君にも、心配をかけてしまった他の看護師達にも……みんなに迷惑をかけてしまった。本当に心から反省しなければいけない。それにしても……あの時、私を呼び止めて、春香さんはいったい何を言いたかったのだろうか。あんなに怒った口調で……でも、私のために必死になっている歩夢君を見て、きっといたたまれなかっただろう。自分の好きな人が私なんかに優しくしていたら……腹が立ってしまうのは当然のことだ。春香さんを思うと申し訳ない気持ちにもなるけれど、でも……この複雑な思いはいったいどこに向ければいいのだろうか?傷の痛みは痛み止めで少し落ち着いてはいるけれど、心の中にはグレーの雲がかかって晴れないままだった。
last updateLast Updated : 2025-03-18
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1 最後に言わせてほしい

「嘘!!七海先生、うちの病院辞めちゃうの?」そのニュースは、突然ナースステーションに稲妻みたいに落ちてきた。「えー!どうして辞めちゃうの~。私、七海先生の大ファンなのにショックだよ」「私だってめちゃくちゃショック!白川先生とどっちにするか悩んでたのに~」看護師達が噂してる話をすぐには受け入れられなかった。七海先生が病院からいなくなるなんて……先生とはついこの間話したばかりなのに、そんなことは一言も言っていなかった。また今度誘うからって……あれはやはり社交辞令だったのだろうか?「七海先生のご実家って、それはそれは大きな産婦人科なんでしょ?そこに戻るんだって。うちの松下院長と七海先生のお父様が親友だから、お父様に言われてここで修行してるって聞いたことがある。でもさ、イケメンツートップの1人がいなくなるなんて、絶対寂しいよ~」「病院に来る楽しみが減っちゃう」「私も~」そっか……七海先生、本当にいなくなるんだ。あの時、先生に誘ってもらい、初めてゆっくり話したけれど、あれから病院でもなかなか会えていない。確かに、七海先生の優しい笑顔にはいつも癒されていた。もう会えなくなるなんて……私は急に複雑な気持ちになった。「ほらほら、噂話はそれくらいにして仕事しなさい」中川師長の言葉で、みんなはまた仕事に戻った。平穏な日々の中に当たり前のようにあることが、急に無くなってしまうことはある。だけど、松下総合病院に七海先生がいなくなるなんて、それがどういう感覚なのか、私にはまだわからなかった。私もみんなと同じように「ショック」なのか。本当にいなくなって初めてわかるのか。「あっ」また余計なことを考えている自分にハッとする。前のような失敗をしてはいけない。とにかく仕事に集中しなければ……私は、七海先生への気持ちを一旦、胸の奥にしまい込んだ。
last updateLast Updated : 2025-03-18
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2 最後に言わせてほしい

しばらくして、蒼真さんが七海先生のお別れ会をしようと提案してくれた。やはり、七海先生のことは本当だったんだ。同じ大学の先輩である七海先生のために、みんなでバーベキューをと考え、病院からそれほど遠くない都会の中でグランピングができる場所を予約してくれた。そんなところがあるのことも知らなかったけれど、すごく興味があった。自然の中のキャンプにも行ったことがなく、実際に実現するのは無理そうだから。キャンプの雰囲気が味わえるならそれで十分素敵だと思った。私達の仕事では全員が1度に集まることはできない。七海先生と白川先生がお休みの日に、他のメンバーが入れ代わり立ち代わり入ってこれるよう考えてくれていた。***数日して、その日がやってきた。偶然にも私も休みになり、今日は1日中ずっとお手伝いをしようと思った。それにしても都会の真ん中にこんなオシャレなキャンプ場があるなんて……何も準備せずにキャンプができるよう全てが揃っていてとても便利だ。かなり広くて明るいグランピングの中は本当に豪華で、テーブルや椅子、寝ころべるようなソファもあった。殺風景ではなく、可愛らしい小物をたくさん使った飾りも素敵で、そこにいるだけで楽しい気分になれた。特に女性の看護師達はみんなテンションが上がっていた。バーベキューもすぐ横でできるようになっていて、材料もお任せで、至れり尽くせりの環境だった。お肉や海鮮、新鮮な野菜もたくさんあり、すごく美味しそうだ。プロの料理人がいてバーベキューの焼き方を教えてくれたり、それ以外の料理もその場で作ってくれるのには驚いた。今日はこんなに素敵な集まりなのに会費は1000円だけで、場所代や料理、七海先生に送るプレゼントまで、残りは全て蒼真さんが負担していた。かなりの出費だと思う。だけど、蒼真さんは、それ以上お金を受け取ろうとはしなかった。
last updateLast Updated : 2025-03-18
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