実は、最近、母が階段から足を踏み外してしまって……」「えっ!!お母さん、大丈夫なの?」「はい。でも、その時は本当にびっくりしました。大きな物音がして、慌てて見にいったら母が倒れてて。すぐに階段から落ちたってわかったんですけど、僕、心臓が止まるかと思いました」「それはもちろん心配するよ」「……はい。歩けない状態だったし、頭を打ったみたいだったから救急車を呼んで松下総合病院に運んでもらったんです。頭のCTは異常なくて、でも怪我して血が出てたから、白川先生が急いで処置してくれました」「白川先生が……」「はい。すごく丁寧に対応してくれて、色々検査もしましたが、特に骨にも異常なくて……本当に安心しました。母は、みんなに心配かけちゃうなんて看護師として失格ね……って笑ってましたけど」「大変だったね」「母があんな風に倒れている姿を思い出すと背筋が凍るんです。もしあの時僕が家にいなかったら母はどうなっていたんだろうって」「うん……」「母は、今まで僕を1人で育ててくれた大切な人です。本当に大変な苦労があったと思うんです。だから、僕が看護師として早く一人前になって、もっと生活を楽にしてあげたい、安心させてやりたいってすごく思います。これからもずっと母を大事にして恩返しがしたいです。もちろん、今はまだまだ半人前にも届かないですけどね」初めて聞いたけれど、歩夢君はこんなにもお母さんのことを大切に思っている。色々つらいことがあったからこそ、歩夢君はもう二度とお母さんを悲しませたくないのだろう。なんだか泣けてくる……「不思議……です」「えっ?」「母がシングルマザーだってこと、今まで誰にも話したことなかったんです。なのに藍花さんには何でも話せてしまうっていうか……話したくなります」歩夢君……「私なんかに話して良かったのかな……。でも私、話を聞いて、歩夢君の真っ直ぐで優しい気持ちは、必ずお母さんに伝わってるって、すごく思ったよ。本当に素敵な親子の絆だよね」歩夢君は、私に向かってニコッと微笑んだ。その顔がとても可愛らしくて、少しだけ「キュン」となった。
Last Updated : 2025-02-27 Read more