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3 あなたの強引な誘いに戸惑って

Author: けいこ
last update Last Updated: 2025-03-01 13:19:13

ここが病院でなければちょっとしたデートスポットになっているだろう。

今は患者さんもみんな病室にいて、ここには誰もいない。

息を飲む音さえも聞こえるような静寂。

ひっそりと静まり返った世界に、私達はまた2人きりでいる。

「藍花……」

「あっ、はい」

白川先生に、急に名前を呼ばれてドキッとした。

そうだ、2人の時は名前で呼ぶと約束していたんだ。

こんなキラキラした景色を白川先生と見ながら、名前も呼び捨てにされ、さっきから何だか落ち着かない。

起こるはずのないシチュエーションの連続に、私はだんだん自分が自分じゃないみたいに思えてきた。

「藍花はなぜ看護師に?」

「えっ?」

急な質問に驚いた。

白川先生が私の志望動機などに興味があるのだろうか?

私は、不思議な感覚のまま話を続けた。

「あの……私の理由は聞かない方がいいと思います」

そう言うと、白川先生は少し疑問を持ったように私を見た。

「なぜ?」

「なぜって、そんなこと興味ありますか?私が看護師を目指した理由なんて……」

「教えてくれ、俺は藍花のことが知りたい」

甘く囁く声。

私は、この声に無性にドキドキしてしまう。

しかも、こんな近くにいて、真っ直ぐ目を見ることができない。

心臓がバクバクと動き、私はその急激に変化し始めた感情を必死に隠した。

「は、恥ずかしいですけど……。子どもの頃に見たドラマの影響です。すみません、本当に恥ずかしいです」

言ってしまった……

それになぜか謝っている自分がいた。

白川先生にはそんな単純な理由で看護師になったことを知られたくなかった。

なのに、どうして話してしまったのだろう。今さら後悔してももう手遅れだ。

「ドラマ?」

「はい……。そうです」

先生は、どう思ったのだろう。

やっぱり呆れられたのか?

こんな理由、適当過ぎて真面目じゃない!と、叱られるような気もしていた。

だけど、本当のことなんだから仕方がない。
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    「蒼真さん……」スカートの上から私の足をゆっくりと撫でる細くて長い指。その行動に戸惑いが隠せない。私は今からどうなってしまうのか?「こんな告白は嫌いか?」「こ、告白?」蒼真さんはソファの前に膝まづいたまま、今度は手を伸ばして私の髪に触れた。そして、そのまま耳に触れ、その指はゆっくりと唇へと移った。「好きだよ、藍花」「……蒼真……さん?」いったい何が起こったのか?蒼真さんは何を言っているの?「こんなに誰かを好きになったのは初めてだ。俺、頭がおかしくなるくらいお前を求めてしまう」「……ちょっ、ちょっと待って下さい。そんなこと……そんなこと……」まるで状況が理解できない。体がソファにフラフラと倒れ込んでしまいそうになる。「藍花?」「そ、蒼真さんが私を好きだなんて信じられるわけないです。好きって……好きっていったいどういう意味なんでしょうか?私には全く意味がわかりません」頭の中が大混乱していて、パニックを起こしそうになっている。「どうして俺を信じない?」「どうしてって、信じられるわけないです。蒼真さんが私を選ぶわけない。蒼真さんみたいな全てに優れている人は、私なんかを選びません。選ぶならもっと……」もう、自分が何を言っているのかもわからない。ただ口が勝手に開いているだけだ。「もっと?」「もっと……その、あの……」言葉が全く出てこない。「藍花が信じなくても俺はお前が好きだから。それは偽りない真実だ。藍花は俺のこと、どう思っている?」「えっ……」「俺は藍花の思いを知りたい。今の正直な気持ちを聞かせてくれないか?」私は夢でも見ているのだろうか?白川先生……蒼真さんはどうして私なんかに好きだと言うの?「私……今のこの状況がよくわかりません。疑問だらけです。正直、今まで自分の中にはいろいろな感情がありました。自分の本当の気持ちがはっきりしなくて。モヤモヤして……」「……」蒼真さんは私の言葉に真剣に耳を傾けている。私は、ひとつひとつ、絞り出すように自分の思いを言葉にしようと頑張った。「でも、私……変なんです。自分の気持ちがはっきりわからないくせに、どうしようもなく体が熱くて、私……蒼真さんのこと……」この先の言葉を口に出すのが怖かった。自分が自分じゃないみたいで、すごく恥ずかしい。「その先を聞きたい。聞かせて

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    ただ靴下を脱がされただけなのに、どうしてこんなにもドキドキするのだろう。蒼真さんはお医者さんとして私の傷を心配してくれているだけなのに。「うん、確かに良くなってるな。爪も綺麗だ」「はい、ありがとうございます。あれからちゃんと感染症にならないように診てもらってましたから、本当に大丈夫です」私は慌てて靴下を履こうとした。なのに、手が震えて上手く履けない。落ち着けば当たり前のようにできることが、なぜか上手くできなくて焦る。その時、蒼真さんがモタモタしている私の手にサッと触れた。「履かなくていい。このままでいいんだ。このままで……」「えっ……」「藍花、覚えてる?この前、患者さんに言われたこと。俺達はお似合いだって」「……はい。覚えています。確かに言われましたけど、あれは私をからかってただけですから」「あの人はからかってなんかいない。本気だった。本気で俺と藍花が似合っていると言ってくれたんだ。それに俺も、そう思ってる」蒼真さんは、ソファに座る私を見上げた。その瞳は潤み、唇は艶を帯び、恐ろしい程、男の色気を感じた。「わ、私達が似合ってるなんて、蒼真さんまでからかわないで下さい」「藍花……」その瞬間、私は頬に温もりを感じた。蒼真さんの手が触れている。気づけば目の前に美し過ぎる顔があって、私は直視できずに、思わず自信のない顔を背けた。「目を逸らすな。俺を見て……」「そんなこと言われても、わ、私……み、見れません」心臓が激しく脈打ち、あまりのことに息の仕方がわからなくなる。「藍花、見て。俺を見るんだ」心も体も溶かすような甘い声。私はその声につられるように、ゆっくりと蒼真さんの顔を見た。とんでもない至近距離で目と目が合う。その不純物など全くない美しい瞳にハッとして、私の全てが吸い込まれてしまいそうになった。「俺は、お前が欲しい」「えっ……」あまりにも深い衝撃。蒼真さんの言葉に撃ち抜かれたように体中に電気が走る。「藍花……」例えようのないその妖艶な姿。蒼真さんの表情が情欲に満ちた瞬間、私達の間に残っていた壁は……完全に崩れ去った。

  • 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~   8 情熱的なあなたと夜明けを迎えて…

    嬉しいとはいえ、この心臓が飛び出しそうなシチュエーションは、そろそろ限界に近い気がする。月那は、「美味しいご飯、美味しいお酒、ベランダから星を見たりなんかして……。あ~もうその後は『私、どうなってもいい!』ってなるんだよ、絶対に」なんて楽しそうに言っていた。本当に人ごとだと思って……私達はベランダになんか出ない。だから、何も起こらない。きっと……起こるわけがない。蒼真さんはこんなに落ち着いているのに、私だけが内心あたふたしているのがすごく恥ずかしい。「カレー、本当に美味しかった。ありがとう」「いえ……。こちらこそたくさん食べてもらえて嬉しかったです」「美味しいものでお腹が満たされると、人は幸せな気持ちになれるな」「そうですね……」蒼真さんがとても穏やかに言ってくれた言葉が、何だかくすぐったく感じる。美味しい……と、何度も言われると心から作って良かったと思えてくる。2人の時のこの優しさが、病院でもずっと続けばいいのに……とつい願ってしまった。子どもの頃のこと、好きな食べ物、影響を受けたテレビのこと、プライベートな内容を惜しげもなくたくさん話してくれる蒼真さん。話せば話すほど興味が湧き、もっと色々聞いてみたいと思った。まるで患者さんと話すみたいに……いや、それ以上にリラックスしている蒼真さんに、私も次第に心を開いていった。「白川先生」と、こんなにも自然体で会話ができる日がくるなんて、少し前までは思いもしなかった。私達は、時間を忘れてお互いのことを話した。「藍花、足はもう大丈夫か?」「あ、はい。もう大丈夫です。本当にありがとうございました。蒼真さんにすぐに手当してもらったおかげです」「見せて」先生はソファから降りて、私の足の前にしゃがみこんで傷口辺りに手を伸ばした。「本当にもう治ってますから」私は、思わずロングスカートの中に足を引っ込めて隠した。「ダメだ。ちゃんと見せて」蒼真さんは私の足を優しく掴んで、スカートの裾から外に出した。そして、靴下をゆっくりと脱がせた。やっと緊張が少しずつ溶けてきたのに、こんなことをされたらまた……

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