All Chapters of 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~: Chapter 11 - Chapter 20

89 Chapters

5 オシャレ過ぎる産婦人科医に誘われて

一瞬で顔が真っ赤になった。定義とかって言われても……次から次へと連続して押し寄せてくる私への褒め言葉に戸惑いが隠せない。「笑って。藍花ちゃんの笑顔は、僕の疲れた体に1番よく効くお薬みたいだから」七海先生……とびきりの優しい笑顔と共に放たれる甘いセリフにドキドキが止まらない。いったいどういう顔をして受け止めればいいのだろう。「さあ、行こう。お腹空いたな、何食べよっか」私達は駅の近くにある中華料理店に入り、そこでは他愛もない話をして楽しく食事をした。七海先生は聞き上手だし、話し上手。患者さんに人気がある理由が改めてわかった気がした。「すみません、ごちそうさまでした。とっても美味しかったです。本当にありがとうございました」「いえいえ。その代わり、またどこか行こうね。藍花ちゃんと一緒に大好物のエビチリとチャーハンを食べたら元気になれたよ。明日も……仕事頑張れる」「そ、そんな。また行こうなんて彼女さんに申し訳ないです」七海先生レベルなら、独身だけど、さすがに彼女はいるだろう。いないわけが……ないか。「彼女?そうだね。確かに2年前まではいたような気もするけどね。もう忘れたよ。君がうちの病院に入ってきた頃の話。それからはずっと1人でいる。全く寂しい男だよ」七海先生は苦笑いした。「彼女さん、どうしていないんですか?先生みたいに……その……イケメンさんなら女性がほおっておかないんじゃないですか?病院にも先生のファンはたくさんいますし」ミーハーのようでかなり失礼かとは思ったけれど、思わず聞いてしまった。うちの病院の七不思議の1つを――「ファン……ね。確かにこんな僕に好意を示してくれる人もいて有難いなって思うよ。でも……彼女を作るのは難しいね」
last updateLast Updated : 2025-02-19
Read more

6 オシャレ過ぎる産婦人科医に誘われて

こんな僕……?七海先生みたいな素敵な人が、そんな言い方をすることに違和感を覚えた。まさか、七海先生、自分に自信がないのだろうか?「今日、先生と話してわかりました。私を気遣っていっぱい話をして下さって。すごく穏やかで優しい人なんだなって思いました。だから、皆さんが先生のことを信頼したり、素敵だなって思ったりするんだろうなって。……あっ、すみません、偉そうですよね」それに少し強引なところがあることも知った。人は、話してみないとわからないものだ。先入観だけで人を判断してはいけないと改めて感じた。「偉そうなんかじゃないよ。そんな風に言ってくれて素直に嬉しいよ。さっきも僕のことイケメンさんって言ってくれたしね。だけど、上手くいかないね。本当に想ってもらいたい人にはなかなか想ってもらえなくて……」たまに見せる七海先生の切なげな表情は、憂いを帯びていて、とても妖艶で胸を刺激する。「とにかく、また誘うね。今日は帰ろうか。駅まで送るよ」「あっ、はい。本当に今日はありがとうございました。美味しかったです」七海先生はわざわざ私を駅に送り届けてから、近くに止めてあった車で一人暮らしのマンションに帰っていった。今日の七海先生とのやり取りは、いったい何だったのだろうか?わけのわからない余韻を残した感情は、行き場を探しながら頭の中をぐるぐる回った。
last updateLast Updated : 2025-02-20
Read more

1 あなたの魅力に気づく月の夜

今日はまた白川先生に注意された。中身は全然たいしたことじゃない。それほどキツく言われたわけでもないのに、勝手に落ち込んでしまってる。私だけが白川先生に睨まれてる気がして……最近、先生と話すのが少し憂鬱になっている。中川師長に相談しようかとも思っているけど、何だか言えないまま時間が過ぎていた。それに、先生は正しいことを言ってるだけで、私が強くなって成長すればいいだけの話。グジグジ悩んでいる自分がいけないんだ。だけど……苗字の呼び捨てはそろそろ止めてもらいたいし、色々考えると負のループに陥っている気がする。「邪魔」「えっ!あ、すみません」振り向くと白川先生がいた。驚いてすぐに横にズレたけど、こんな広い廊下で特に邪魔になっているとは思えなかった。「蓮見」「は、はい!」「お前、今日の夜の予定は?」「えっ、よ、予定……?」「無いんだな。わかった、じゃあ今夜付き合え」えっ、えっ!?私にはかなりヘビーな内容過ぎて、何を言ってるのか理解できなかった。「あの……私、予定が無いとか何も言ってません」「無いんだろ?」定期的に会ってくれる彼氏もいない上に、確かに今日は何も予定は無い。それでも、勝手に決めつけるなんて失礼な話だ。「な、無かったら何なんですか?」白川先生の言い方が気に入らなくて、つい反抗的な返事をしてしまった。「仕事が終わったら、フラワーショップの前で待ち合わせ。いいな。必ず来いよ」何を言われてるの?フラワーショップは、病院を出て数分行ったところにあるけど、そこで待ち合わせをするの?誰と誰が?頭がパニックになる。「あ、あの!ちょっ、ちょっと無理やり過ぎませんか?急にそんなこと言われても困ります」日頃の恨みだろうか。まだまだ新人の看護師が、白川先生にこんな言い方をするなんて。自分の発言に自分で驚いた。「黙って待ってろ。いいな」え、嘘、行っちゃった……白川先生の行動に呆気にとられて動けない。勝手に決めて、待ってろなんて、めちゃくちゃ強引過ぎる。まさか、私があまりにどんくさいからお説教されるのだろうか、それとも、もしかしてクビにされるとか!?
last updateLast Updated : 2025-02-20
Read more

2 あなたの魅力に気づく月の夜

どうしよう……私はもっと看護師を続けたいし、誰かの役に立ちたい。しっかりしていないにしても、辞めさせられたらあまりにも悲しい。無理やり約束させられて、白川先生の意図がわからなくて困惑する。とにかく――今は何も考えないようにするしかない。モヤモヤはするけれど、きちんと仕事をしなければ。私は、気持ちを切り替え、仕事に戻った。***言われた通りフラワーショップに向かいながら思った。今日は外来がかなり混んでいたから、白川先生の方が遅いはず。きっと疲れているだろう。イライラしていないか心配になる。いったい今日は何を言われるんだろうか。考えていると自然に足取りが重くなる。「あ……」目の前にはフラワーショップ。もう着いてしまった、先生はまだ来ていない。少しホッとしている自分がいて、変な気分だ。確かに、本来なら、何を言われるのかもわからないのに、こんなにも不安になる必要はない。必要はないのだけど……白川先生は、本当にカッコ良い。認めざるを得ないくらいの「超イケメン」だと思う。だけど、私の中ではあの意地悪な感じのせいで全部台無しになっている。白川先生も、七海先生みたいに優しかったら……きっともっと素敵な男性だと思えるのに。「藍花!!」その時、誰かが私の名前を呼んだ。藍花……って、この声、いつも聞いてる……って、嘘!!「し、白川先生!」どうして先生が私の名前を?いつもは「蓮見」としか呼ばないのに。いったい何が起こってるの?「待たせたな、悪かった」「え……」白川先生が、私を名前で呼んだ上に謝っている。こんな展開、予想もしていなかった。この人は、本当にあの白川先生なのか?いつもとの違いに大いに違和感を感じた。「藍花、どうした?そんな顔して」「あっ、えと、すみません。……ちょっと驚いてしまって」つい本当のことを口走ってしまった。「なぜ驚く?」「な、なぜって……」
last updateLast Updated : 2025-02-20
Read more

3 あなたの魅力に気づく夜

答えに困っていると、「まあいい、歩くぞ」白川先生は、そう言って黙って歩きだした。とても横には並べなくて、私は少し下がって着いていった。ん……?先生の歩幅、いつもと違う……病院ではかなり足早に歩く先生に、私は小走りで着いていくのが必死だ。なのに、今日は私に合わせてくれてるのだろうか。そんなこと、あるはずないとは思うけれど。「ここでテイクアウトしよう」「……ハンバーガーですか?」「ハンバーガーは嫌いか?」「い、いえ、好きです。でも、テイクアウトしてどこかで食べるんですか?」「ああ。いいところがある」テイクアウトしたハンバーガーを、白川先生と一緒に食べるなんて信じられない。何が起こっているのか、理解に苦しむ。私達はハンバーガーを買って、また歩きだした。目的地がどこなのかはわからない。ただ2人の地面を踏む音だけが、夜の静けさの中に響いている。「ここ」先生が足を止めたのは、病院から歩いて7分くらいの場所だった。目の前に流れる浅めの川。その両側が川原になっていて、土手を降りて、広いスペースに置かれたベンチに腰掛けた。3人がけのベンチの真ん中にはドリンクが2個。見上げると夜空に綺麗な月が浮かび、それが川面に写って何とも幻想的な雰囲気をかもし出している。時折、秋の風が優しく頬をかすめ、体に当たる澄んだ空気がとても心地良かった。遠くの方に目をやると、大きな陸橋をライトを付けた車が行き交っているのが見えた。「寒くないか?」「はい、大丈夫です。すごく気持ちの良い夜ですね」「ああ、そうだな」高い位置に光る星がこんな綺麗に見える場所……今まで知らなかったのが残念だ。白川先生は、いつからこの場所を知っているのだろう?「はい、これ」私は、袋からハンバーガーを取り出して渡してくれた先生に、「ありがとうございます」と言って頭を下げた。まだ少し温かい。「すみません。ご馳走になります」「ハンバーガーで悪いな」「いえいえ、嬉しいです」先生、また謝った……今日の先生は、本当に別人なのかも知れない。もしかして双子だったりして、入れ替わって私を騙してるのかも……なんて、思わずバカな想像をしてしまう。
last updateLast Updated : 2025-02-21
Read more

4 あなたの魅力に気づく夜

「いただきます。あの……先生、ちょっといいですか?」食べる前にどうしても聞きたくなった。「何?」「私、今から外科医の白川先生と2人でハンバーガーを食べるんですよね。なんかこの組み合わせがどうもよくわからなくて。なぜ、私はここにいるのでしょうか?」「……内科医なら良かったか?」「え?えっと……その……」真面目な顔をして困ってたら、白川先生は突然私の目の前に顔を近づけた。「真剣に考えるな。笑え」この距離感に、思わずハンバーガーを落としてしまいそうになった。今、すぐ目の前にある白川先生の笑顔。月の光にほんのりと照らされて、一つ一つの顔のパーツがはっきりと私の視界に入り込んできた。ほんの数秒でギブアップ――あまりの美しさに直視することができない。私はサッと正面を向き、冷静を装うためにハンバーガーを口にした。小刻みに震える手。緊張で飲み込みにくいことを悟られないように、ドリンクで必死に流し込んだ。「ど、どうして私に声をかけてくれたんですか?今日ここに来た理由は……?」念を押すように、また質問した。確かに嫌な答えなら聞きたくない気もするけれど、早く答えを聞きたい気もした。「理由……か」「は、はい。私、今日誘われてからずっと思ってました。白川先生に……怒られるのかなって。だからすごく緊張してて」「なぜ?俺がどうして怒る?」「え?どうしてって……あの、私、いつも先生に注意されてばかりなので……。もちろん、私が仕事ができないのが悪いんですけど」「……藍花は俺に怒られたいの?」「そ、そんなわけないです!怒られたいなんて思ってません。思ってるわけないです。それに、私のことを藍花って呼ぶのも変ですよ。いつも病院では「蓮見」って呼ぶのに」「お前は「蓮見 藍花」だろ?だったら蓮見でも藍花でも同じだ」その理屈、かなり変――同じじゃない、全然。
last updateLast Updated : 2025-02-21
Read more

5 あなたの魅力に気づく夜

「先生は他の看護師には「さん付け」なのに、私だけ「蓮見」って呼び捨てにするの、ちょっと……嫌でした。怖い感じがして、嫌われてるような気もして。それに、いきなり藍花って呼ばれるのもやっぱり……何だか変です」ずっと心でモヤモヤしていたことをようやく口に出せた。「名前で呼ぶのは歩夢も一緒だ」「それは歩夢君が男子だからいいですけど……」白川先生は少し黙ってしまった。もしかして怒らせてしまったのか?この空気に耐えられないと思い始めたその時、白川先生は空を見上げながら言った。「蓮見も、藍花も……どちらもとても美しい名前だ。だから、つい呼び捨てしたくなる」「えっ……」「藍花……って呼ばれるの、そんなに嫌か?俺は……お前を藍花って呼びたい」私の耳元まで近づいて甘く囁いたその声が、あまりにセクシーで艶っぽくて、私は腰が砕けそうになった。何なのか、この展開は?かろうじてベンチから滑り落ちないように耐えたけれど、今、私の体は急激に熱くなっている。心臓も激しく動き出し、何だかよくわからない状況に動揺が隠せなかった。自分に何が起こっているのか、まるで理解できない。七海先生に感じた妖艶さ、それとはまた違う白川先生の色気――どちらからも、大人の男性として申し分ない魅力を感じるけれど、やはりタイプは全然違う。当然、同じわけない。正直、今の今まで白川先生のこんな一面を見たことがなかった。全く知らなかった男としての部分を発見し、すごく不思議で複雑な感じがした。そうか……白川先生のファンは、みんなとっくに気づいてたのだろう。この、何とも言えない先生の魅力に。いつもすぐ近くにいたのに、私が先生のことを怖がり過ぎて気づかなかっただけなんだ。好きとか嫌いとか、よくわからない。まだ苦手意識だって全然消えないけれど……それでもたぶん、今までよりは白川先生に怯えなくて済むような気がして、少しホッとした。「あ、ありがとうございます。名前を褒めてもらえて嬉しいです。両親も喜びます」何を言ってるんだろか、動揺し過ぎだ。気の利いたことを言えない自分が情けなくなる。白川先生に呆れられたかも知れない。
last updateLast Updated : 2025-02-21
Read more

6 あなたの魅力に気づく夜

「あっ、そんなことより白川先生もハンバーガー食べて下さい。冷めてしまいますから」「その白川先生っていうのやめてくれないか」「えっ?」「俺には「蒼真」という名前がある。白川より蒼真の方が好きなんだ。だから蒼真でいい」「そ、そ、そんなこと!よ、呼べるわけないじゃないですか、突然何を言い出すんですかっ」白川先生を「蒼真」と呼ぶなんて、あまりに恐れ多くて、思わず大声を出してしまった。「別に普通だろ。俺は「藍花」って呼ぶ。だからお前は俺を「蒼真」って呼ぶ。ただそれだけのことだ」「それだけって……。でも他の看護師はみんな白川先生って呼んでますよね」もしかして私が知らないだけで、プライベートではみんな蒼真って呼んでるのだろうか?「俺が呼び捨てにするのは藍花だけだ。だからお前も必ず蒼真と呼ぶこと。2人きりの時だけでいい。それくらいできるだろ?」「先生、ちょっと強引過ぎませんか?私、白川先生の家族でも彼女でもないんですよ。だいたい私なんかに『蒼真』なんて呼ばれて嬉しいわけないですよね?何か魂胆があるんですか?」少し激しめの口調で言ったら、なぜか先生はニヤリと笑った。「やっと言った。それでいい。これから先、俺のことは必ず蒼真と呼ぶんだ。嫌だとは言わせない」「えっ、で、でも……」「これは業務命令だから取り消せない」「ぎょ、業務命令!?そんな……。先生、意地悪です」「そうか?なら、もっと意地悪しようか?」「そ、それは嫌です!」「だろ?なら素直に呼べばいい」白川先生は、平然とハンバーガーを食べ始めた。私はこんなにもドキドキしてるというのに――このやり取りの本当の意味を、私は怖くて聞けなかった。ただ先生にからかわれているだけなのか?冷静に考えれば、白川先生にはちゃんとした彼女がいるかも知れない。こんなイケメン先生が、私に好意を持っているはずがないし、あんなに注意ばかりされていた私を女性として相手にするわけがない。やはり……これは意地悪なのか?でも、逆らえばどうなるかわからない。これからは嫌でも「蒼真」と呼ぶしかないのだろうか。
last updateLast Updated : 2025-02-22
Read more

7 あなたの魅力に気づく夜

「わ、わかりました。呼びます」「いい子だ。じゃあ、どうぞ」「どうぞって……」私を見つめる白川先生の瞳は、とても綺麗で吸い込まれそうだった。この美しい顔のせいで、鼓動がまた激しくなる。でも、呼ばなきゃ――私は、呼吸を整えるため、深く息を吸い込み、そして、吐いた。「そ、そ……」ダメだ、やっぱり言えない。こんな恥ずかしい思いは初めてかも知れない。私、きっと今、赤面してる。「どうした?早く言ってくれないか?」「あっ、は、はい」「俺は藍花に、蒼真って呼んでほしい」白川先生は、私が言うまで諦めてくれそうにない。それなら、もう、言うしか――「そ、蒼真さん……」先生の言葉に背中を押され、私は何とか名前を呼べた。「ダメだ、やり直し。ちゃんと俺を見て」あ……目を閉じて言う作戦は、残念ながら失敗に終わった。「や、やっぱり無理です」「言い訳はいい。早くして」もはや、この強引なわがままを切り抜ける方法はひとつも無いと思った。「蒼真さん……」意を決して呼んだ名前は、声が小さ過ぎて、夜の静けさの中ですぐに消えた。もう、これ以上は無理だ。顔から火が吹き出してしまいそうで思わず目をギュッと閉じた。「よくできました。今日は、これでおしまいにしておく」そう言って、白川先生は私の頭を優しく撫でてから、ニコリと笑って残りのハンバーガーを全部食べた。「帰ろうか」「はい」2人で土手を歩き、来た道を駅まで戻る。何だかまだ信じられない。今日のことは全部夢だったのか?もしかして私は、ベッドの中にいて眠ってるのだろうか?目覚めたら何もかも無かったことになっていて、いつもの現実に引き戻されるのか……だけど、私の頬は温かい。すぐ横を歩く先生の髪、体、長い足にも、ちゃんと動きを感じる。これは、幻じゃなく現実なんだ――隣にちゃんと……先生がいる。2人きりの時間は嘘じゃなく、手を伸ばせば、きっとその背中にも触れられる。私達は、同じ空間にいて同じ時を過ごした。明日からはまた、病院での仕事が待っている。だけど、私が歩く足取りは、ここに来るまでとは確実に違ってる。ほんの少しだけ心が軽くなった気がして、ちょっと……嬉しくなった。
last updateLast Updated : 2025-02-22
Read more

1 親友とマッサージと内緒話

「いらっしゃいませ!あっ、藍花~。今日予約だったよね。待ってたよ」「私も楽しみにしてた」たまにやって来るのは、親友である雨宮 月那(あまみや つきな)の彼氏が店長をしているマッサージのお店。月那は、このお店で働き出して4年になる。2年前、私が病院に務めだした頃、体の疲れを癒したくてここに通い始めたのがきっかけで、すごく仲良くなった。月那はもちろん女性だけど、気づけば友達以上恋人未満みたいな関係になっている。何でも隠さずに話せる、とても頼りになる親友だ。一緒にいるとすごく落ち着く。24歳で同い年の月那は、ショートカットが良く似合う美人だ。明るくさばさばした性格で、誰にでも態度が変わらない。31歳の彼氏とは同棲中で、いつかは結婚するそうだ。「今日はオイルマッサージでいいよね?」「うん、お願い。疲れ溜まってて」「了解、任せて」私は、いつものように個室に入ってベッドに横たわった。オイルマッサージの時はほぼ全裸で、用意された紙の下着をつける。初めは恥ずかしかったけれど、もう慣れてしまった。静かに優しいピアノ曲が流れる空間で受ける月那のマッサージは、いつも気持ち良すぎてとても癒される。香りも良く、極上のご褒美時間だ。毎回、施術中はお互いの相談話になる。どうしても仕事のことが多くなるけれど、月那は松下総合病院の患者でもあるから、先生達や看護師、病院のことをよく知っている。だから、私の話を全部わかってもらえるのが有難い。看護師の仕事にも興味があると言って、よく質問もしてくれる。でも今回に限っては、いつもとは少し違う……いや、全然違う相談内容になりそうだ。仕事ではなく、恋愛話に――私は、白川先生、七海先生、それぞれと話したことを全部月那に伝えた。
last updateLast Updated : 2025-02-22
Read more
PREV
123456
...
9
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status