Semua Bab 優しさを君の、傍に置く: Bab 11 - Bab 20

31 Bab

酔っ払いの妄想か勘違いもしくはこれがひとめぼれ《1》

隣の男が青い顔をしたのは、それから三杯目の時だった。俺の前には、綺麗に空のグラスが置かれているのに対し、そいつが漸う置いたグラスにはまだ中身が半分ほど残っていた。 「ちょっと、翔さん。もう無理しない方がいいですよ」 慎さんがそのグラスを遠ざけて、水のグラスを差し出した。いよっしゃ!と、ひそかにカウンターの下でガッツポーズをする。互いに言葉はなくとも目と目の会話で始まった意地の張り合いは、どうやら俺の勝利で片付きそうだ。つってもやばかった。俺の方も多分あともう一杯いかれれば、無理だった。そう素直に認めるくらいに、視界はグラグラ揺れていて頭も瞼も異様に重かった。こん、と音がして俺の目の前にもグラスが置かれた。多分、水だ。 「ほんと、馬鹿ですか貴方たち」「いやいや煽ったのアンタだから」 絶対、わかってて調子乗らせたろ。グラスに口を付けて、中のひやりと冷たい液体を流し込む。やっぱり、水だった。散々アルコールを流し込んだのに(というより明らかにその所為で)ひどく乾いた喉に心地よい。 「まさかここまで張り合うとは思わなかったんですよ」 軽く肩を竦めて飄々と言ってのけるこの男は、絶対確信犯だ。性質が悪い。彼は佑さんと軽く言葉を交した後、カウンターから出てきて隣の男に近寄った。 「ほら、翔さん。今タクシー呼びましたから……来るまでに水飲んで少しでも覚ましてください」 背中をさすりながら促すと、男は突っ伏していた顔を上げてのろのろと水のグラスに手を伸ばす。だがその手が余りにも不安定で、察した慎さんが自分の手も添わせて口許までグラスを運ぶ。あ……くそ。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-01
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酔っ払いの妄想か勘違いもしくはこれが一目ぼれ《2》

「下心あんのはてめえだろうが! ゲイかよ! こんなとこまで追っかけてきやがってどんだけ必死だああ?」「俺はゲイじゃねえ! お前が性質悪そうだから様子見に来たんだよ!」「自覚無しかよ馬鹿みたいに張り合ってきて鬱陶しい!」 ゲイじゃねえ! ついこないだまで女もいたんだよ俺は! そう怒鳴り返そうとした時だ、パン!と破裂音のようなものが鳴る。 背後で慎さんが手を打ち鳴らしたのだと一瞬後に気が付いた。「こんなとこで怒鳴り合って、警察でも呼ばれたらどうするんですか二人とも」 腰に手を当てて睨みながらそう言うと、慎さんは俺の横をすり抜けていく。 は、なんで。 迫られて困ってたんじゃないのかよ。 どうして俺まで怒られるんだと納得がいかずにいると、慎さんが男に手を差し伸べて起き上がらせた。 尚更俺が悪い気がして、面白くないが慎さんに諭された手前黙るしかなく二人の会話に耳を傾ける。 またしつこく迫るようだったら、もう一度割り込んで引きはがす気満々だったのだが。 「翔さんも。こんなとこで迫るから勘違いされるんですよ。早く自分の店に戻って仕事したらどうですか」「使えそうな人間発掘してくるもの仕事のうちなんだよ」「だったら他を当たってくださいってば」 思っていたような展開ではなく、首を傾げながら嫌な予感が頭を過る。 「できませんよ、僕にホストなんて」 続けて言った慎さんの言葉に確信した。 どうやら俺は、激しく勘違いをしてしまったらしい。 「ああ、ほら。タクシー来ましたからさっさと乗ってくださいね」 慎さんが男の背中を押して大通りへと促す。 そこには、路側帯に停車したタクシーが見えた。 俺の存
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-01
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酔っ払いの妄想か勘違いもしくはこれが一目ぼれ《3》

こうして近くに立つと身長差がよくわかる。 多分七十ちょいくらい。俺が九十超えてるから、あんまり背の低いやつは苦手だった。 そうそう、こんくらいがちょうどいいんだよ、とまた一歩近づいた。 「陽介さん?」 あんまちっさすぎるとさ。 小動物に覆いかぶさる捕獲網になった気がするっつーか。だからこんぐらいがちょうどいい。 一歩遠ざかったから、一歩進めて距離を縮めた。 その行為になんら疑問も感じなかったのは、やっぱり結構酔ってたんだろう。後にして思えば。 頭もぼんやりしていたし、視界もなんだか白く靄がかかっていた気がする。その靄の中で、より白い肌と潜められた柳眉は色気があった。 上から改めて見下ろしていると、随分と細い肩だ。そういえば、指も細かった。 「ちょっ……酔ってるんですか」 戸惑う声も色っぽくて、横に逃げ出そうとするのをつい慎さんの後ろにある壁に手をついて塞いでしまった。  ふわりと風が流れて、シャンプーの香りが鼻を掠める。ああ、やばい。 どストライクなんだよ、まじで。咎めるような視線に、胸が痛くなる。 翔子と別れたばっかりなのに、不謹慎だと思われたんだろうか。 いや、でもさ。 恋を忘れるには新しい恋を、とかいうだろ。 腕を曲げて更に距離を縮めると、綺麗な目が威嚇するように鋭さを増す。ああ、気の強いのとかもかなり好きだ。 悪いけどその表情、逆効果だ。 「……いい加減、離れてください」 っていうか、あれ?俺なんか大事なこと忘れてないか。 そう気づいた時には、考える間もなかった。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-02
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余りにも直球過ぎてこの人の将来が心配だ《1》

頭の天辺から強目のシャワーを浴びて、全身の泡を流して落とす。排水溝に消えていく泡を見ながら、ぼんやりと夕べの事を思い返していた。くそ。 変な夢を見たのは、絶対あいつのせいだあの酔っ払い。結局あのあとべらぼうに飲んだ挙げ句に、連れの浩平さんにも見捨てられ、最後は店で爆睡しやがったあの木偶の坊。壁際に追い詰められた時の、あの目を思い出すとぞくりと鳥肌が立つ。 悪い人じゃない、善人だとは思うのだが。あの身長は、卑怯だ。 僕が長身な方であっても身体を鍛えても、あんな上から見下ろされたら流石にすくんだ。鳩尾に拳を入れてやったものの、あの時の空気がまとわりついて夢の中にまで侵入され忌々しいことこの上ない。 「……くそ」 夢の中だけで、現実には何一つされていないというのに手首を掴まれた感触が生々しい。シャワーの中で手首を掴んで手のひらでこすり上げ、架空の感触を泡と一緒に洗い流して、カランを捻った。きゅっ、という少し油の切れた音がしてシャワーの音が止む。 脱衣所に出て、バスタオルで乱暴に頭を拭った。ぽたぽた、と前髪の先から雫が落ちる視界の中、洗面台の鏡に映る自分の姿を視た。痩せた肩、鎖骨の下と視線を下ろすと、そこには僅かな膨らみがある。 自分が弱い生き物であることの証だった。溜息をつくと、脱衣かごに用意した着替えの中のチューブトップに手を伸ばす。 大した膨らみでもないからこれで十分かと思っていたが。 「……めんどくさ」 今日は、さらしでも巻いた方がいいかもしれない。 しっかりと鍵をかけた扉を隔てて、店内でまだあの男が寝ているはずだから。 身支度を整えて髪も乾かして、一部の隙も見せないつもりで扉を開いた。 その音と同時に、奥のテーブル席のソファからむくりと起き上がる影がある。 「よく眠れました?」 声
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-02
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余りにも直球過ぎてこの人の将来が心配だ《2》

 自分がゲイの男にどうにも好かれやすい見てくれなのは、自覚している。 そういった好意を感じる度に、適当にあしらう癖もついてしまった。だが、正面切ってこんなにはっきりと言われたのは初めてだ。 何より、抑々がおかしい。 「何言ってんですか。貴方ゲイじゃないでしょう」 そう、陽介さんはつい最近まで彼女がいたという話をしていたのだ。 だったら男に惚れるわけがないだろう。まさかの両刀使いという可能性もあるが、そんな風にも見えない。 この仕事をし始めてから、人間観察には鋭くなったつもりでいたが。 「いや、男に惚れたのは俺も初めてで」 びっくりです、と驚いた顔をしたけれど、悩む様子も欠片も見せないこの男に裏があるとも思えなかった。というか、少しは悩まないのか。 普通悩むだろう。 「なんでそんな疑り深い顔するんですか」「は?」 余程僕が訝しい顔をしていたのか、不思議そうに此方を見上げる男の目がまっすぐで、僕にはそのことの方が不思議だ。何でも何も、ないだろう。 満面笑みでその告白を受け入れるとでも思ったのか。だけど陽介さんは、僕の予想とは斜め上の方角を行く。 「嫌そうな顔か気持ち悪そうな顔されると思ってたんで」 そこは覚悟できてたんかい、と突っ込みそうになって踏みとどまる。 本気で突っ込んだら、調子に乗られてこっちが苛つきそうだ。 「嫌に決まってるでしょう」 突っ込む代わりに思いっきり顔を顰めてやったのに、どういうわけか全くへこたれた様子がない。「あ、やっぱり」「やっぱりって何が」「慎さんもゲイじゃないんだなあと」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-03
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余りにも直球過ぎてこの人の将来が心配だ《3》

流石に真剣に悩み始めた男の手が緩む。 その隙に振り払って、距離を取った。「少しは頭が冷えましたか」若干眉根を顰めて見えるのはきっと、脳内でおぞましい映像でも流れてるんだろう。 その様子を見ていると、さっきまでの苛立ちがすっと収まった。 かといって、代わりに溢れて来たのは好意的な感情でもなく、寧ろ逆で、軽蔑に近い。 自然と男を見る目が冷やかになる。 馬鹿なお調子者といった雰囲気ではあったが、嫌いなタイプではなかった。 だが、なんて浅慮で物を言う男だろう。「冷えたっつーか……男同士で諸に想像してしまうと」「だったら無理でしょう。軽いノリで言っていいことではないですよ」実際にそういった性癖の人間だっているというのに。 彼らが聞いていればきっと、「馬鹿にするな」と言いたいだろう。 溜息を落としながら壁に手をあて照明のスイッチを入れると、ぱぱっと点滅した後に白色灯が部屋を照らして、薄暗い部屋に慣れていた目が一瞬眩んだ。目を細めて、明るさに慣れるまで数秒かかった。 軽く瞼に力を入れて漸く視界がクリアになったころ、同じように目頭に皺を寄せている男の姿が目に入る。向こうも丁度、焦点が合ってきたところだったんだろう。 ぱちりと視線が絡まって、身構えたままなぜか言葉に詰まった一瞬。彼が、笑った。 それこそぱっと光が差したように嬉しそうで、思わずどきりと心臓が跳ねた。「……何をへらへらしてるんですか」動揺したせいだ。 ちょっと告白されたくらいで、変に意識してどうする、と説明のつかない鼓動を動揺のせいにした。余りにも陽介さんの言葉が直球過ぎるから、動揺させられるんだ。 ほんと、迷惑な男だと脳内で散々悪態をつく。「いや、すんません。確かに、軽率だったなあと……なんで訂正します」彼は随分あっさりと、さっきの言葉を改めた。ほら、見たことか。 案外我に返るのが早かったな、と安堵の溜息が漏れそうになったが。「抱きしめたい、は訂正します。近づきたいです。慎さんに」その言葉にぎゅっと顔を顰めて、溜息は飲みこんだ。「……何が違うんですか、それ」「キスとかセックスとか、そんなんはとりあえず置いといて。慎さんに近づくチャンスが欲しいなあと……だめっすか」「だから、何が違うんだって」「女とでも、別に最初っからセックスばっかり考えるわけじゃない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-04
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余りにも直球過ぎてこの人の将来が心配だ《4》

「は?!」「だってお前、今日道場行く日だろ。だったらこいつに掃除手伝ってもらえば早く済むだろ」何がそんなに不服なんだとでも言いたげな、不思議そうな表情で僕を見る。が、わからないのは僕の方だ。確かに今日は週に一度の道場通いの日だけど、別に掃除くらい頼まなくてもできるし時間がなければ佑さんがしてくれていいはずだ。今までずっとそうだったんだから。「やります。いいんすか、全然やりますよ俺」「いいって! 大丈夫だから!」「頼むわ。俺もっかい寝る」「うぃっす!」僕の言葉は丸無視で佑さんはごろんとソファに寝転んでしまい。ビシッと、挙手付きで返事をした陽介さんが、嬉しそうにこちらを向いた。耳と尻尾の幻影が見える。まるで大型犬に全力で懐かれている感覚で疲労感が半端ない。毒気を抜かれる、という単語が頭に浮かぶ。何か悪態をついてやろうかと口を開くのだが、もはや何を言えばいいのかわからなくてはくはくと唇が空ぶった。「何からしたらいいっすか。床掃き?」ぶんぶんと尻尾を振る大型犬がお座りで指示を待っている。再びソファに身体を沈めて、背もたれの影で見えなくなった佑さんに舌打ちを一つ鳴らして溜息をついた。「……そこ。小さい取っ手の付いてる倉庫に、掃除機が入ってるから」「うぃっす!」と軽い返事でキビキビと僕が指を差した方へと向き直る。壁に馴染んだデザインで目立たないよう配慮された倉庫の扉を開き、中からイソイソと掃除機を出す後ろ姿に追って言った。「椅子は全部上げて、隅まできっちりかけてくださいよ!」ガーガーと掃除機の音がする中で、僕は寝たふりをする佑さんのソファを軽く足で蹴った。「どういうつもり?」掃除機の音は僕達には会話の邪魔にはならない程度、だけど掃除機をかけている男には聞こえないだろう。「何が」「何がじゃないよ。あんなやつさっさと追い出してくれたらよかったのに」もう一つ、ソファの底を蹴ると佑さんはむくっと身体を起こしてくつくつと喉を鳴らした。「いやだってお前、面白いだろあの男」「ただの馬鹿なお調子者だよ、少しも面白くない」佑さんにとっては面白い他人事なのだろう。だったら他人事なのだから変な口出しも気回しもしないで欲しい。「まあまあ、いいだろ。向こうだってまずは近づきたいって言ってんだから誠実じゃねえか。ようはお友達からってこと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-05
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男の口説き方《1》

【高見陽介】 よくよく考えたら、いきなり男からそんなセリフ言われたって気持ち悪いに決まってるよな。 「俺、慎さんに惚れました」 言っちゃってから、しまったと思ったのは確かだけど、言っちまったもんはもうしょうがない。 うん、しょうがない。 第一嘘は欠片もない。 俺よりずっと男前のこの人に、普通ならやっかみやら憧れやらを抱くのが本当なんだろうが、それもないことはないけれど。 「何言ってんですか。貴方ゲイじゃないでしょう」 白くて綺麗な陶磁器のような肌にちょっとだけでも触ってみたいし、胡散臭そうにこちらを見る、気の強そうな目もすげえ好きだ。 そう、接客中は只管営業スマイルで物腰は一見穏やかだけど、時々ちらりと攻撃的な色を滲ませる瞳が、見ていてなんか、うずうずする。 営業スマイルの防御壁の向こうに隠されたものが、知りたい。じろじろと上から下まで。 眉間に皺を寄せた顔で何度も往復する視線。 若干引き気味に、気持ち悪いというよりも不審なものを見るようだった。 俺だってほんと驚いたし昨日は悩んだ。 けど仕方ないだろ、なんでか感覚の全部が慎さんに向かっていて、さながら慎さん専用のアンテナのようだ。 「いや、男に惚れたのは俺も初めてで」 あんまり疑わしい目で見るので本当のことだと主張してみたが、なぜだか疑いが晴れた感じがしない。 「なんでそんな疑り深い顔するんですか」「は?」 気持ち悪いと言われるならわかるんだけど。 それよりも疑いの目の方が強いのはなんでだ。 わからないから素直に聞いてみただけなのに、まるで珍獣でも見るような目で見られた。 酷い。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-05
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男の口説き方《2》

セックス……セックス。男同士でどうやるかなど、知識として知っているのは使う場所くらいで実際に映像や生現場を見たことは勿論ない。いや生現場ってどういうことだよ。自分の脳内思考に自分自身で突っ込んでそちらに気が取られていたら、いつの間にか手が緩んでた。ここぞとばかりにぱしんと冷たく手を振り払われて、ちょっと悲しい。怒られた。目が怒ってる。 「少しは頭が冷えましたか」「冷えたっつーか……男同士で諸に想像してしまうと」「だったら無理でしょう。軽いノリで言っていいことではないですよ」 冷やかに諭されたことで、慎さんの怒りの発生源を知る。そうだ、現実にそういう性癖の人間はいる。彼らにしてもきっと、最初はそんな自分に戸惑い悩み、周囲との折り合いを付け乍ら過ごしているのだ。俺の考えなしの言葉は、彼らを馬鹿にしているようなものなのかもしれない。確かに浅慮だったなと少々反省もしたけれど、別に俺も軽いノリで言ったわけではない。ただ、それを主張し返すことよりも、嬉しかった。俺が好きだと思った人が、誰かを気遣う優しい人なんだということが。壁のスイッチを押す音がした。ぱぱっと白色灯が点滅して薄暗がりに慣れていた目が眩む。何度か目を閉じては開くを繰り返して明るさに慣れた頃、目の前の慎さんと目が合った。 「何へらへらしてるんですか」「いや、すんません。確かに、軽率だったなあと……なんで訂正します」 面食らったといった表現がまさに当てはまる慎さんの反応に、「嬉しくて」と言えば被虐趣味だと勘違いされそうなので止めといた。別に怒られた事実が嬉しいわけじゃねえし。そんなことよりも、もう一度きちんと口
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-06
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男の口説き方《3》

目が覚めて慎さんの顔を見て、改めて好きだと気づいてからずっと俺はハイテンションで、考えてみればもうちょいやりようがあった。とか多少の反省もしつつ、一目ぼれなんだからしょうがねえ。ひとめぼれ……ふためぼれ?そんなわけで開き直った俺は、慎さんの冷たい仕打ちにも全くめげずご機嫌で掃除機をかけている。近づくチャンスが得られるなら、掃除でもなんでもしますとも。どうやら佑さんを味方に付けとくことが、慎さん攻略の最短距離だと思われる。少し古い、小型のその掃除機はがーがーとうるさくて、何やら慎さんと佑さんが話している気配はしても声までは届かなかった。いかにも迷惑そうにしながらも慎さんも遠慮がなく、掃除機の次は拭き掃除を命じられる。いえっさー。元々惰眠を貪るだけになる予定のつまらない土曜日だ。喜んでやらせてもらいます。拭き掃除なら音に邪魔されずに二人の会話にも混ざれるしな。と、思ったら。どうやら、昨夜の俺の恥ずかしい勘違いをネタにされていたらしい。佑さんが、腹を抱えてゲラゲラ笑った。 「だって仕方ないじゃないっすか。浩平から慎さんにご執心のゲイの男がいるって聞いたからてっきり」 さすがにちょっと拗ね乍ら、カウンターの隅を拭いていると、その内側で洗いあがったグラスを丁寧に磨いて棚に戻していた慎さんが眉根を寄せた。 「あー、なるほどな」 佑さんが納得したというように、しきりに頷く。ちなみに俺と慎さんを働かせておいて、この人はソファで煙草を吸っていた。 「やっぱいるんですか、そういう奴」 もしかしたら、昨日の男のしつこい勧誘が客の誰かにそう勘違いされたのか、とも思ったが。どうやら、そうではな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-06
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