「ほら、そこ。隅までしっかり拭いてくださいよ」 小姑と化した慎さんの虐めにも俺はくじけてはいけない。 くじけないけどちゃんとやってるアピールはしとこう。 「拭いてますよちゃんと!」「角! まあるく拭いてもダメなんですって」 あ。 「まあるく」とかそういう言い方かわええな。 思わず頬が緩んだのを見て、慎さんがちょっと頬を赤らめた。 「丸く拭かないで隅まで拭いてくださいって言ってるんです!」 いやいや。 そんな赤い顔で怒ってもちっとも怖くないから。 恥ずかしがり屋の一面を見つけて、にまにまとほくそ笑む。 そのやり取りを黙って見ていた佑さんが煙草の煙を吐き出しながら言った。 「陽介さ。お前、週末とか結構暇?」掃除の指令を受けた辺りからいつのまにか呼び捨てにされている。 どうやら佑さんにとって俺の存在は客からパシリに変更になったらしい。 「そんなん、その時の予定によりますよ」 なのでちょっとだけ見栄を張ってみた。 翔子と別れたおかげで本当は、予定が入る気配は暫くない。 精々浩平と飲みに行くのが関の山だ。 しかも行先は絶対ココだろう。 「へえ、そうか。じゃあ今日明日は?」「いや、今週はなんも」「来週」「……来週も、とくに」「再来週」「も……なんも」「暇なんだな」「はい、暇っす」 慎さんが、ふっと鼻でせせら笑うのが見えた。 嘘の吐けない俺のバカ。 「お前、番犬やれよ。そのおっさんが来るのが大抵、木曜以降から
최신 업데이트 : 2025-03-07 더 보기