「きっと借りられるわ」「すごいじゃん!講師からお金を借りるなんて。前に散々悪口言ってたのに、今度は借金?それも貸してくれるの?」「涼と礼二は宿敵同士だから。私が彼を助ければ、当然貸してくれるはずよ」「なるほど」月子は遅れて気付いたように言った。「ちょっと待って、何を助けたの?」「涼への対抗よ」「えっ?本当に涼と手切れするの?」月子は驚いた。以前の奈津美が涼をどれほど深く愛していたか、彼女はよく知っている。単なる一時の感情的な反応だと思っていたのに、本当に婚約を破棄するつもりとは。まさに成長したものだ。奈津美は月子の驚いた反応を見て、思わず苦笑いした。親友でさえ、自分は涼から離れられないと思っているのだ。他の人々は一体どう思うだろう。滝川家のお嬢様が、涼のために道化を演じていたと。本当に笑えることだ。夕方、美香は着飾ったやよいを連れて黒川グループを訪れた。社長室で、美香は椅子に座る涼を見て、取り繕うように笑った。「社長、先日は奈津美が無礼を働き、申し訳ございませんでした。あの子は頑固で、自分からは謝罪に来ませんので、今日は特別に彼女のいとこを連れてきて、お詫びさせていただきたく」涼は冷ややかに言った。「へぇ?滝川奈津美から頼まれたんですか?」「もちろんです!」美香は急いで答えた。「奈津美も自分の過ちを認めております。婚約破棄も本心ではないと。どうか若さゆえの過ちをお許しください」奈津美が非を認めたと聞いて、涼は冷笑した。「少しは分かってきたようだな」「はい、その通りです!」美香はタイミングを見計らって、やよいに目配せした。やよいは涼から目を離せないでいた。部屋に入って以来、ずっと涼を見つめていた。こんなに格好いい男性を見たことがなく、うっとりしてしまっていた。「やよい、お義兄さんに挨拶しなさい」「お義兄さま......」やよいは恥ずかしそうに俯いた。涼はその「お義兄さま」という言葉を聞いて、なぜか気分が良くなった。奈津美は口では婚約破棄を言いながら、裏では着々と準備を進めているということか。結局は自分との婚約を懇願することになるのだろう。美香は様子を見計らって言った。「黒川様、やよいは最近田舎から戻ってきた
最終更新日 : 2024-12-13 続きを読む