「どんなやり方ですか?」吉沢凛子は篠崎暁斗は物事を頭ごなしに決めつける人間だと思った。「どんなって、さっきのようなやり方ですよ。すぐに乱暴に走るような真似です」篠崎暁斗は吉沢凛子のやり方には本当に呆れてしまった。吉沢凛子も言い訳をしたくなかったので、携帯を開いてある録音を流し始めた。録音の中で、相田おばさんは何度も強調して、篠崎暁斗が吉沢凛子に毎日三食を作るように要求したのだと言っていた。しかも吉沢凛子に自分のことだけやって、他のことには口を出すなと偉そうな態度だった。ベテランの財務として、吉沢凛子は自己防衛の警戒心がとても高い。普段から上司や同僚に用心して、いつでも録音するのが彼女の仕事上での習慣になっていた。それがまさか今日役に立つとは思っていなかった。篠崎暁斗はその録音を聞いていくうちに眉間のシワがだんだん深くなっていき、驚きと怒りが混じっていた。しばらく経ってようやく彼は再び口を開いた。その時の彼の口調はだいぶ穏やかになっていた。「相田さんはおばの紹介なんです。あなたがここに来てすぐに他の家政婦に変えたら、おばにどう説明すればいいのやら。もし彼女を使いたくなければ、今はとりあえず様子を見てもらえませんか」吉沢凛子は篠崎暁斗が困っているのは見て取れたが、このような家政婦がおじいさんのお世話をちゃんとできるとはとても思えなかった。「じゃあ、家の中に監視カメラを設置したいんですけど」篠崎暁斗は吉沢凛子の意図を読み取った。彼女は相田おばさんがおじいさんに何か良からぬことをしないか心配しているのだ。「家のことはあなたが決めて大丈夫です」篠崎暁斗はそう言うと、車を出し吉沢凛子を会社まで送った。篠崎暁斗と吉沢凛子の会社はそんなに離れていないが、彼女に自分の正体を明かしたくないので、ある十字路のところに車を止め、ここまでしか送れないと言った。吉沢凛子もあまり深く考えずそのまま車を降りた。そして、会社に入ってすぐ、榎本月香に捕まった。「良いお知らせよ、佑樹は昨日アステルテクノロジーに面接に行って、人事部長から好印象だったらしいの。今回私の佑樹がアステルテクノロジーに就職すれば、一気に出世したも同然よ」「あなたと林佑樹のことは私には関係ないでしょ。今後二度と私に話さないで」吉沢凛子は榎本月香を押し退けて行こうとした。
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