1. 年越しの夜、家々は灯火で輝いていた。 私は冷めた料理をもう一度温めた。 潤一は今夜に残業すると言っていたが、私が彼の助手に電話をかけた。 助手は彼が今日、会社には一度も来ていないと言った。 彼に何度も電話をかけたが、誰も出なかった。 私たちは7年間交際しており、婚約したばかりだ。普通なら、彼をもっと信頼すべきだと思っていたが、心の中には不安が広がっていた。 ベランダに出ると、花火が目に入った。 それは、潤一と一緒に年越しのために買った特別な花火だった。 次の瞬間、目の前がパッと明るくなった。 川沿いに花火が打ち上がっているのが見えた。 誰かが愛している人のために花火を上げたのだろうか。 私は携帯の地震警報が鳴っていたことに気づかずに、その景色にしばし浸っていた。 身体が揺れるのを感じた時には、足元にすでに1メートルほどの大きな亀裂が走っていた。 恐怖に怯える間もなく、ビルは一瞬で崩れ落ちた。 私はバランスを失い、気がつけば廃墟の中に閉じ込められていた。 全身が激痛に襲われ、動けなくなった。 胸の中から熱い血が溢れ出しているのを感じた。 耳元には、砂が落ちてくる音と、人々の悲鳴が聞こえてきた。 意識を失う前に、心の中でただ潤一が無事であることを祈っていた。2. 「杉木美咲さんですね、肋骨が2本骨折し、右足が粉砕骨折になりましたので、暫くは動けなくなるでしょう。」 目が覚めると、耳にかすかな声が聞こえてきた。 それはまるで霧がかかったような、ぼんやりとした音だった。 医者が私の目を見て話していたが、その声が全く聞こえなかった。 私は不安になり、小さな声で言った。 「聞こえません。」 彼は眉をひそめた。 そして私は思い出したように聞いた。 「彼氏は来ましたか?」 潤一が無事なら、きっと私に会いに来てくれるはずだ。 医者が首を振るのを見て、私は不安が募った。 医者は私の布団を整え、部屋を出て行った。 胸が痛み、耳元には何の音も聞こえなかった。 いつの間にか眠りに落ちていた。 目が覚めた時、かすかに声が聞こえてきた。 「昨夜のあの花火、知ってる?聞いたところによ
Last Updated : 2024-09-26 Read more