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第10話

私は少しの間立ち止まり、前へ進んだ。

墓の前にはすでに一本の花が置かれていた。

私はそれに触れず、自分が持ってきた花をそっと隣に置いた。

古びた写真が刻まれた墓石を静かに見つめた。

「ばあちゃん、会いに来たよ」

私は一人でたくさんのことを話した。

潤一はずっと隣で黙って聞いていた。

最後に、私はバッグからあの古びたメモ帳を取り出し、ライターで火をつけた。

それを見た彼は、慌てて手を伸ばして止めようとした。

「何をしてるんだ!」

潤一の顔には焦りが浮かんでいた。

私は手を緩め、燃え盛る紙は彼の花に落ちた。

彼はすぐにしゃがみ込み、手で火を消そうとしたが、火に焼かれたのか、「あっ」と声を漏らした。

「ばあちゃんが残してくれたものを、どうして燃やすんだ?」

花にできた焦げ跡を見ながら、私は静かに言った。

「あなた、どうしてここに来ることができたの?地獄に落ちるのが怖くないの?」

彼の動きが止まった。

しばらくして、彼は立ち上がり、私を見つめた。

彼の目の下にはクマができ、口元には無精ひげが生えていた。

彼は口を開き、かすれた声で言った。

「最後に説明させて欲しい」

私は彼をじっと見つめた。

「何を?また何を装うつもり?」

彼の顔は少し青ざめ、血走った目で私をじっと見つめた。

その中には、私には理解できない感情が混じっていた。

彼は喉を鳴らし、重苦しい声で話し始めた。

「君は信じないかもしれないけど、俺は本当に君を愛していたんだ」

ネットのことは申し訳なかった。でも、君をどうしても取り戻したくて、訴訟を取り下げさせようとしたんだ。婚約を続けられるようにと思って。それが間違っていたことはわかってるけど、それでも本当に愛していたんだ」

彼が話すにつれて、その目は暗く沈んでいった。

その言葉を聞いて、本当に情けないと感じた。

そして、静かに問い返した。

「謝るべきことは、それだけじゃないでしょう?」

「大晦日の夜、あなたが玲奈のために打ち上げた花火、私は見ていたよ。私もたくさんの花火を買って、あなたと一緒に打ち上げたかったんだ」

潤一はその言葉を聞いて、目が赤くなった。

「玲奈が
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