どれだけ二人の間に争いがあったとしても、藤沢修は結局、若子に不利益を被らせるようなことはしたくなかった。彼女に与えるべきものは、惜しみなく与えたかったし、彼女には幸せに暮らしてほしいと願っていた。たとえ時折、彼女に対して怒りやさまざまな感情を抱いていたとしても、彼は彼女が苦しむのを望んではいなかった。藤沢修が若子の名義に自分の家を過渡したという事実だけでも、彼女は十分に驚いていた。それに加えて、彼がSKグループの株式を5%も譲渡したことには、さらに驚かされた。それは一生分の財産であり、その5%の株を売ってしまえば、もう何も働く必要がなく、十生涯分のお金を手に入れることになる。SKグループは非常に優れた企業であり、安定した成長を続けている。この5%の株式は、今後ますます価値が上がることは間違いない。まさか、修がこれほど大盤振る舞いをするとは思ってもいなかった。若子はその驚きから、しばらくの間、言葉を失っていた。「これを私に渡す必要なんてないでしょう?」若子は顔を上げ、静かに言った。「私が欲しかったのは、それじゃない」「じゃあ、何が欲しいんだ?」修の目には、どこか捉えどころのない感情が浮かんでいた。「言ってみてくれ。俺に与えられるものかどうか試してみたい」若子は苦笑し、口元にわずかな笑みを浮かべた。それを、彼が与えることは永遠にできない。なぜなら、もう他の女性にそれを捧げてしまったのだから。もうここまできてしまった以上、言うことは何もない。彼女は首を振りながら、「今は何も思い浮かばないわ。急にあなたから株をもらったから、頭が少しぼーっとしているのかもしれない」と答えた。修は若子の目にわずかな失望の色が見える気がした。彼は理解できなかった。5%の株を譲り、今や彼女は富豪の仲間入りをしたのに、どうして彼女は喜ばないのか?彼女はいったい何が欲しいのか?物質的なものは揃った。離婚して自由の身になれば、彼女は好きな人と一緒になれる。それなのに、なぜこんなに悲しそうなのか?修は口元を引き締め、「ぼーっとすることなんてないさ。これはお前が当然もらうべきものだ」と言いながら、少し笑みを浮かべた。「離婚したとしても、若子、お前は藤沢家の一員であることには変わりない。俺たちが夫婦じゃなくなっても、親族であることに変わりはないんだ」
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