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第227話

彼は実は朝早くから来ていて、ずっと遠くから様子を見守っていた。

心の中はずっと張り詰めていて、今日もまた二人が離婚できなかったらどうしようと心配していた。

しかし、二人が役所に入っていき、しばらくして手にいくつかの本を持って出てきたのを見て、きっと無事に離婚できたのだと確信した。

その瞬間、彼はようやくほっと息をついた。

この世の中に、自分の心に私心がない人なんていない。誰もが自分の感情を抱え、例外はないのだ。

遠藤西也は二人が話しているのを見ても、邪魔することはなかったが、今の状況を見て、すぐに車を走らせて彼らの元へと駆けつけた。

藤沢修の顔はすでに張り詰めていたが、遠藤西也の姿を見た瞬間、まるで黒い雲の中に雷が落ちたようだった。

若子は藤沢修から逃れたい一心で、そのまま助手席に回り込んでドアを開けて座り込んだ。「ここを離れて、できるだけ遠くへ」

今、彼女はただ彼から逃れたい、それだけだった。どこへ行くかは関係ない。

遠藤西也はすぐに窓を閉め、車を走らせた。

藤沢修は呆然とその場に立ち尽くし、風が吹き抜けて、彼の瞳に切なさが映った。彼は遠ざかっていく車をじっと見つめたまま、ただ呆然と立ち尽くしていた。手のひらは空っぽで、かつてそこにあったものが全て消えてしまったかのように、何も残っていなかった。

......

車内。

若子はしばらくの間、ずっと黙っていた。

遠藤西也も彼女を邪魔することなく、黙って運転していた。若子がどこへ行きたいのか分からなかったので、適当に車を走らせて、最終的に交通量の少ない道へと進んでいった。

そして、車は一つのコンクリートの道で止まった。

右側には砂浜が広がり、目の前には限りなく広がる海が波を立てており、金色に輝く砂浜に波が寄せては返していた。

遠藤西也は車から降りて、副座席のドアを開けた。「若子、外に出て歩こう」

彼は、今この女性の心がとても疲れていることを知っていた。どれだけ傷つけられたとしても、長年愛してきた男とようやく別れたばかりの彼女の心が、完全に吹っ切れるわけがなかった。

表に出さないということは、それだけ心の中に苦しみを抱えているということ。

彼は、むしろ若子が涙を流して泣き出すほうがいいと思っていた。

若子はしばらく黙ったままだったが、やがてシートベルトを外して車から降り、遠藤西也と
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