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第228話

「そうだね、私は卒業したばかりで、そして離婚したばかり」若子は苦笑しながら言った。「今や私はお金持ちだよ。何もしなくても、大金を手に入れることができるんだから」

遠藤西也はポケットに手を入れたまま尋ねた。「藤沢修が補償をくれたのか?」

若子は「うん」と頷いた。「不動産、それに5%の株式も」

遠藤西也は少し眉を上げて、驚いたような表情を見せた。「彼もずいぶん太っ腹だな」

遠藤西也は藤沢修のことを嫌っているが、今回は認めざるを得なかった。藤沢修がかなり気前よく、5%の株をポンと渡すなんて、これで若子は何もしなくても、悠々自適に暮らせるだろう。

「それで、その後はどうするつもりだ?」遠藤西也が尋ねる。

「その後は......」若子は少し考えた後、ふと笑った。「その後、私はお金持ちになるのよ。努力しなくても、こんなにたくさんの財産を手に入れられるなんて、まったく幸運すぎるわ」

遠藤西也は彼女の笑顔を見て、まるで無理やり口角を引き上げたような笑い方をしていることに気づいた。笑ってはいるが、その心の中は決してそう思っていないのが見て取れた。

「彼がくれたものは、受け取ればいい。お前は元々彼の妻だったんだから、それは君が当然受け取るべきもので、彼をただ得させるのはもったいない」

若子はため息をついた。

「何かしら仕事を探そうと思うの。何かしないと、大学に通った意味がなくなってしまう」

遠藤西也は少し考え込んだ後、「うちの会社で働くのはどう?適切なポジションがあるし、金融関係の仕事なんだが、もし......」

「西也」若子は彼の言葉を遮った。「ご好意は本当に感謝してる。でも、大丈夫。仕事のことは自分で何とかするわ」

彼女は藤沢修の助けも、遠藤西也の助けもいらなかった。

遠藤西也はいつも若子の決断を尊重してきた。彼女にとって害のあること以外は、決して反対しない。

彼は藤沢修とは違うことを示したかった。若子に対して、あの男とは違うと感じさせたかったのだ。

「分かった。もし何か必要なことがあれば、いつでも言ってくれ」

松本若子は「うん」と短く返事をした。

「西也、一緒に物件を見に行ってくれない?」

「いいよ。家を買うつもり?」遠藤西也が尋ねた。

「違うの。家を借りたいだけ。彼と離婚したから、引っ越したいの」

藤沢修は家を彼女に譲ったと言ったけれど
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