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第221話

若子は慌てて体を横にずらし、彼との距離を取った。一瞬で警戒心が表情に現れ、「何するつもり?」と問い詰めた。

「お前が休めって言ったんだろう?ここは俺の部屋、俺のベッドだ。俺が横になるのは当然だろう?」

普段は端正で厳格な男が、まるで小さなチンピラのように、図々しく振る舞っていた。

しかし、そのチンピラのような雰囲気が、彼にはどこか言いようのないセクシーさを添えていた。

「あなた.......」若子は彼を罵りたい衝動に駆られたが、反論する理由が見つからなかった。

確かに、ここは彼の家だ。明日離婚したら、彼女は出て行くつもりだ。

「わかったわ。ここがあなたの部屋なら、あなたがここで寝ればいい。私は出て行く」

彼女は客室に行って寝るつもりだった。どうせ「最後の夜」なんてどうでもよかった。藤沢修とここまでこじれた関係になったのだから、もう何も問題ではなかった。

若子がベッドから降りようとした瞬間、手首が突然力強く掴まれた。

振り返ると、修の大きな手が彼女の手首をがっちりと握っていた。彼女はその手を振りほどこうとしたが、彼の手の力はますます強くなった。

若子は眉をひそめ、「何をするの?」と尋ねた。

修は、この女が自分に近づくたび、必ず警戒した目で「何をするのか」と聞いてくるのがわかっていた。

彼が何をするのか?

彼は彼女の夫なのに、彼女のその態度はまるで彼が赤の他人であるかのようで、少しでも近づくと、彼女はまるで洪水や猛獣に遭遇したかのように構えてしまう。

「俺はお前の夫だ。俺が何をしようと、全部当然のことだろう!」彼は突然若子の体を強く押してベッドに倒し、その上にのしかかった。

大きな手で彼女の顎をぐいと掴み、その力がどんどん強まっていく。まるで彼女の骨を砕くように。

「俺が本当にお前を食ってしまったら、それがどうしたって言うんだ?」

彼は彼女の顎を離し、シャツのボタンをすべて外し、シャツを左右に開いた。彼の厚い胸が上下に大きく動き、若子はその心臓の鼓動が「ドクン、ドクン」とはっきり聞こえた。

そして、その目には燃えるような熱が宿っていた。

若子の心臓は激しく鼓動し、緊張でいっぱいだった。彼女は唾を飲み込み、怯えたように言った。「明日、私たち離婚するのよ。だから、そんなことは......」

「そんなことは、何だって言うんだ?」修は彼女
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