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第224話

終わるべきものは、どんなに遅かれ早かれ、いつかは終わる。どれだけの波乱があっても、どれだけの予期せぬ出来事があっても、それは結末を変える兆しにはならない。

ついに、彼女は「藤沢夫人」ではなくなり、藤沢修の妻ではなくなった。

そして、修は桜井雅子の夫になるだろう。

若子はしばらく沈黙し、その感情をどう言葉にすればいいのか、見つけられなかった。

その心境はとても言葉にしがたい。まるで何かが心の中をくり抜かれたような感じだった。痛いと表現するのも違うような気がするが、痛くないと言えば、それもまた違う。まるで魂を抜き取られたようで、頭と体がばらばらになったかのようだった。

もしかすると、これも痛みの一種なのかもしれない。痛みが魂を奪い、痛覚さえも消え失せてしまったのだろう。

藤沢修は手を差し出し、「君の結婚証明書を渡してくれないか?」と尋ねた。

若子はぼんやりとしたまま、「え?」と聞き返した。

「結婚証明書はもう無効になったんだから、どうせ捨てるだけだ。俺にくれないか?雅子に見せたいんだ」

若子は冷たい笑みを浮かべた。「本当に彼女の気持ちを大事にしているのね」

結婚証明書には「無効」の印が押され、もう使い物にならない。二人それぞれが一冊ずつ持っているのに、彼はそれをわざわざ桜井雅子に見せたいという。

何の必要もないことなのに、それでも彼は雅子のためにそんな余計なことをする。

それこそが、真実の愛というものなのだろう。

一方、藤沢修は若子のために、そうした余計なことを一度もしてくれたことがなかった。

やはり、簡単に手に入れられたものには強気でいられ、手に入らないものには必死に手を伸ばすものなのか。

「お願いできるか?」

修がもう一度尋ねてきた。

彼がこうして二度言うときは、本当にそれを望んでいるという意味だ。

若子は少し呆然としながら、自分の手にある赤い本をじっと見つめた。既に無効になった結婚証明書と、新しい離婚証明書が手の中にあった。

離婚証明書は渡すつもりはなかったが、この無効になった結婚証明書なら、もうどうでもよかった。それが、彼に贈る最後のプレゼントだと思えばいい。

この一年間、彼が見せてくれた夢への感謝と、その後のすべての痛みを捨てるための贈り物として。

若子は手に持った赤い本を修に差し出した。「持っていけばいい」

修は若
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