彼女は唐沢修司の妹で、名前は唐沢麻衣。唐沢健介の長男、唐沢翔の娘だ。彼女が部屋に入ると、まず唐沢桜子と江本辰也に目を向け、二人をじっと見つめた。その後、唐沢健介の前にやって来て、スマートフォンを取り出し、ニュースを見せた。唐沢健介はそのニュースを見た途端、驚きで目を見張った。それは、川島隆が唐沢桜子を明和ビルに迎え入れたというニュースだった。明和株式会社の社長である川島隆だ。星野市では、四大一族でさえも川島隆の顔色を伺わなければならないほどの権力者だ。彼は急いで机の上にある注文書を取り上げ、20億円の注文書であることを確認すると、満足げに大笑いした。「ははは、桜子、よくやった、さすが我が唐沢家の一員だ。明和の20億円の注文を獲得し、ついに我が唐沢永光も星野市で名を上げることができる」「おじいちゃん、じゃあ江本辰也は?」「何、白石家の若様が来たの?」部屋の外から中年の女性がもう一人入ってきた。それは唐沢桜子の母、唐沢梅だ。彼女が部屋に入ると、白石翔太に気づき、すぐに彼に近づき、にっこりと笑いながら言った。「白石さん、お噂はかねがね伺っておりますが、どうでしょうか? 私の娘、桜子は気に入っていただけましたか?あなたが頷いてくだされば、今日から桜子はあなたのお嫁さんになりますよ」「お母さん!」唐沢桜子は焦って足を踏み鳴らし、唐沢健介を見つめながら、泣きそうな顔で言った。「おじいちゃん、あれはあなたが言ったことです。今、契約書も手に入れましたから、約束を反故にしないでください」「ふん」座っている白石翔太は冷たく鼻を鳴らし、「契約書を取り戻したからといって安心できるわけじゃない。俺が電話一本かければ、明和の契約はキャンセルされる」「あなた……」唐沢桜子は震えながら白石翔太を指差し、その後、唐沢健介に向かって叫んだ。「おじいちゃん!」唐沢健介は契約書を下ろした。彼はなぜ川島隆がわざわざ唐沢桜子を迎え入れたのか理解できなかった。だが、明和と白石家は確かに親密なビジネスパートナーであり、白石翔太を怒らせれば、手に入れた契約は無くなってしまう。しかも、この契約は唐沢桜子が持ち帰ったもので、江本辰也の手柄ではない。彼は煙管を吸いながら言った。「桜子、この契約書はお前が持ち帰ったものだが、江本辰也とは何の関係もない。
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