第5話

白石家は星野市の四大一族の筆頭である。

今日は白石家にとって祝いの日だ。一つは、白石家の竜星グループが明和株式会社と協定を結び、最も緊密な協力関係を築いたことだ。これにより、白石家の勢力は一段と強化された。

もう一つは、白石家の当主である白石洋平の80歳の誕生日である。

白石家の別荘の外には高級車がずらりと並び、星野市における有名な人物が続々と現れて、白石洋平の80歳の誕生日を祝うとともに、白石家と明和株式が永久的な協力関係を結んだことを祝っていた。

「黒木家からは蓬萊の玉の枝、価値は1億６千万円、白石様に山や海より、長生きを願って贈ります」

「橘家からは龍の首の珠、価値は2億4千万円、白石家の財産が豊かであることを願って贈ります」

「藤原家からは葛飾北斎の絵、価値は1億7千万円……」

白石家の玄関前では、受付嬢がマイクを持ち、来賓の贈り物を次々とアナウンスしていた。

別荘のホールでは、青い衣装をまとった白石洋平が笑みを浮かべていた。80歳を迎えた彼は、年齢を感じさせないほど活力に満ちており、多くの来賓の贈り物を聞いて、目を細めて笑っていた。

宴会には星野市の各家族からの人々が集まっていた。唐沢家のような二流一族でさえも、白石家に取り入れるために来ており、唐沢健介も白石洋平に仏の御石の鉢を贈るために多額の費用をかけていた。

各一族の人々はこの機会を利用して、人脈を広げようと積極的に交流していた。

そのとき、白石家の別荘の外から、茶色のコートを着た男性が棺を担いで歩いてきた。彼の顔には仮面がかかっており、その棺は少なくとも100キロはありそうだったが、男性は片手で簡単に持ち上げていた。

それは江本辰也だった。

南荒原を制覇する竜帅、江本辰也。

彼が今回戻ってきたのは、恩を返すためと、復讐を果たすためだった。

彼は現在、唐沢家に婿入りし、唐沢桜子の夫となっていたため、彼女に迷惑をかけたくないと思い、黒い仮面をかぶり、仮面鬼神と化していた。

「バン！」

江本辰也は白石家の玄関前に到着すると、勢いよく力を込め、その棺を投げつけた。棺は瞬く間に白石家の大門を粉々にし、別荘のホールに落ちた。

突然の出来事に、宴会に参加していたすべての人が驚き、騒がしかった宴会は一瞬で静まり返った。

何が起こったのか？

今日は白石洋平の80歳の誕生日なのに、誰がこんなことをしでかしたのか。棺を贈るとは、なんて大胆な行動だろう。

白石洋平は当主たちと会話をしていたが、飛び込んできた棺を目にすると、顔色を変え、怒鳴りつけた。「どういうことだ、警備員は何をしている？この棺を持ち込んだのは誰だ、早く持ち出せ！」

「白石洋平、この棺は貴様への贈り物だ。今日は80歳の誕生日だが、今日、お前の命日になる」

門外から響く声に続いて、茶色のコートを着て、鬼の仮面をかぶった男性が歩いてきた。

「お前は、一体誰だ？」白石洋平は江本辰也を睨みつけた。ここは白石家で、彼はその当主であり、星野市でも大物である。誰がここで無礼を働けるというのか。

「お前の命を取りに来た者だ」

冷徹な声がホールに響き、黒い仮面をかぶった江本辰也が一歩一歩と近づいてきた。

「好き勝手にはさせんぞ」20歳前後の若い男が歩み寄り、江本辰也を指さしながら罵声を浴びせた。「どんな奴であろうと、白石家に来たからには、大人しくしろ！」

彼は白石家の白石直樹であり、叱りながら、江本辰也の顔にかかった鬼の仮面を取ろうとした。「仮面をつけて怪しげな真似をしやがって、正体を暴いてやる！」

江本辰也は素早く手を伸ばし、白石直樹の腕を掴むと、わずかに力を入れ、白石直樹を引き寄せると同時に勢いよく回転させた。

「ガチッ」

白石直樹の片腕が生々しく引きちぎられ、血が地面に飛び散った。

「うぁ……！」

白石直樹は心を引き裂かれるような痛みの叫び声を上げた。

宴会に参加していた星野市の名士たちは恐怖で呆然とした。彼らは平和な時代に生きており、こんなに血なまぐさい光景を見たことがなかったので、多くの人が恐怖に駆られ後退し、巻き込まれるのを恐れた。

江本辰也はまるで殺戮の神のように、白石直樹の片腕を簡単に地面に投げ捨てた。彼の身から放たれる威圧感と、容赦ない行動に、白石家の人々は恐怖で身体を震わせ、次々と後退していった。

白石洋平もまた一歩後退し、腰に手を伸ばして武器を取り出し、この不審者を撃ち倒す準備をしていた。

江本辰也は一歩一歩、白石洋平に近づいていく。

数十人がいる別荘のホールには、白石直樹の痛みに満ちた叫び声だけが響いていた。しかし、その叫び声も数回続いた後、彼は痛みに耐えきれず気絶し、ホールは瞬く間に静まりに包まれ、ただ死の予感の足音だけが響いていた。

「跪け」

江本辰也の声が響き渡る。

彼の身から発せられる威圧感は強大で、これは戦場で数え切れない敵を斬り倒してきた者の殺気だった。その殺気に押され、星野市の名士たちや白石家の人々は皆、恐怖で震え上がり、誰一人として声を上げることができなかった。白石直樹の腕が瞬時にねじ切られた光景を目の当たりにし、さらに誰もが立ち上がることすらできなくなっていた。

「跪け」という一言は、まるで雷鳴のように白石洋平の心を震えさせ、彼の心に恐怖を刻み込んだ。

この瞬間、白石洋平は抵抗することを忘れ、身体が自分の意思に反して地面に跪いてしまった。

「ドサッ」

この光景を目の当たりにした星野市の名士たちは唖然とした。

あの白石洋平が、星野市の四大一族の筆頭である白石家の当主が、今や犬のように地面に跪いている。

江本辰也の手には一本の鉄線が現れた。その鉄線は不気味で、よく見ると無数の針が繋がっていることが分かる。

「白石洋平、お前は罪を知っているのか？」

この瞬間、白石洋平はようやく状況を理解したが、背中には冷たい汗が流れた。どうしてこんなことに？どうして自分が跪いているのか？

彼は立ち上がろうとしたが、足に力が入らず、どうしても立ち上がることができなかった。

「小僧、お前は誰に向かって話しているのか分かっているのか？」立ち上がれないまでも、彼はなおも強気な態度を崩さず、腰に手を伸ばし、この不審者を撃ち倒す準備をしていた。

他の白石家の人々はこの光景を目の当たりにしながらも、恐怖のあまり一歩も動けず、巻き添えを食うことを恐れていた。

「死ぬまで分からせてやる。十年前、月見湖で起きた火事、一昼夜を焼き尽くした三十八の亡霊、その血によりお前に罪を償わせる」

冷徹で無情な声が別荘のホールに響き渡る。

江本辰也は一瞬で白石洋平の背後に現れ、手に持った針で作られた鉄線を彼の首に巻きつけ、軽く力を加えた。

血が飛び散り、首が地面に落ちた。

「キャーッ！」

星野市の名士たちは恐怖で叫び声を上げ、全員が地面に伏せ、身体を震わせた。白石家の人々も、白石洋平がむごたらしく死んだ光景を見て、魂が抜けるほどの恐怖に襲われた。

江本辰也は黒い袋を取り出し、地面に転がる首をその中に入れると、振り返ることなく去っていった。

彼が去った後も、白石家の別荘は静まりに包まれていた。すべての人々が地面にしゃがみ込み、両手で頭を抱え、白石洋平の頭がない死体はホールの中で静かに横たわっていた。

……

江本家の霊園、江本健太の墓の前。

江本辰也は手に持っていた黒い袋を墓前に置き、墓石にもたれかかった。

彼はお酒を取り出し、大きく一口飲んだ後、残りを墓の前の地面に注いだ。

「おじいちゃん、安らかに眠ってください。俺が必ず江本家の亡霊を安息させ、花咲く月の山居も取り戻す」

そう言い終わると、彼は立ち上がり、その場を去った。

天城苑に戻った後、江本辰也はシャワーを浴びた。

白石家の別荘。

お祝いに来た星野市の名士たちは、皆すでに去っていた。

別荘のホールには棺が置かれ、白石洋平の遺体が静かに横たわっていた。

片腕を折られた白石直樹はすでに病院に運ばれていた。

白石家の人々は皆、白石洋平の遺体の前に跪いていた。

その中でも、先頭に立っていたのは、セクシーで美しい女性、白石洋平の末娘である白石若菜だった。

彼女は一人の力で江本家を翻弄し、江本家を破滅させた張本人である。

彼女の美しい顔には深い悲しみが浮かんでいた。

「哲也兄さんに電話をしたの？」

白石若菜の怒りに満ちた声が静かなホールに響き渡った。

「はい、しました」

「現場は何も動かさないで、哲也兄さんが帰ってくるまで待っていて」

……

夜が深まり、星野市軍区に数機のヘリコプターが降り立った。ヘリコプターには「西境」の二文字が刻まれていた。

戦闘服を着た冷徹な表情の中年の男がヘリから降りた。

外には、装備を整えた兵士たちが一列に並んでおり、直立不動で敬礼した。

続いて数台のジープが到着し、その中年の男は車に乗り込み、車は白石家別荘へと向かった。

帰ってきたその中年の男は、白石家別荘の状況を見て、ホールに横たわる頭がない白石洋平を見た瞬間、帽子を取り、一気に地面に跪いた。

「父さん、遅れてしまいました。誓って言います、誰であろうと、絶対に許しません」

激しい怒りを帯びた叫び声が響き渡った。

「哲也兄」白石若菜が近づいてきた。

目の前の男は、白石洋平の四男、白石哲也だった。

白石哲也は無表情で、沈んだ顔をしていた。「宴会の監視カメラ映像が必要だ」

「はい、すぐに取ってくる」白石若菜はうなずき、すぐに人に命じて映像を取りに行かせた。

白石哲也は立ち上がり、白石洋平の傷口を調べた後、映像を確認し、江本辰也が白石洋平を殺す一部始終を目にした。

彼の表情は冷たく、「この男は父さんを殺す前に何と言っていた？」と尋ねた。

白石若菜は答えた。「十年前、月見湖で起きた火事、一昼夜を焼き尽くした三十八の亡魂、その血によりお前の罪を償う、と」

その言葉を聞いて、白石哲也は拳を握り締め、顔色を変えた。「江本家の生き残りか？」

「その可能性が高い」

白石哲也は顔を覆い、白石若菜に向かって軽く手を振り、「父さんを土に返して安らかに眠らせてくれ。葬儀は簡単に済ませるように。今夜中に帝都に向かい、あの大物に江本家の他の生き残りがいるかどうか尋ねてみる」と言った。