第97話

「お、お兄さん、申し訳ありません、お願いです……お願いですから、チャンスをください」

唐沢悠真は全身傷だらけで、必死に懇願していた。

その時、誰かが部屋に入ってきて、言った。「林さん、誰かが来て、お金を持ってこのやつを解放してほしいと言っています」

「連れて来て」

「はい」

すぐに、石村陽太が数人の部下に連れられてやって来た。

彼は唐沢悠真が縛られ、吊るされ、全身傷だらけになっているのを見て、驚きのあまり足が震え、地面に倒れそうになった。

しかし、唐沢悠真を解放すれば唐沢桜子を手に入れられると思うと、彼の勇気も出てきた。

それに、林春吉の噂はかなり多い。石村陽太は、林春吉が義理堅く、無闇にトラブルを起こさない人物だと知っていた。

彼は林春吉が座っている椅子の方へと歩み寄り、タバコを取り出して渡しながら、腰を曲げて笑顔で言った。

「林さん、こんにちは。私は石村陽太、石村の石村陽太です。父は石村実で、以前に一緒に食事をしたことがあります」

「ふふ……」林春吉は軽く笑いながら言った。「なるほど、石村実の息子か。確かに、お前の父親とは何度か食事をしたことがあるし、知り合いではあるが、このやつは目が節穴だな。俺の車にぶつけるだけでなく、無礼な言葉まで言いやがった。もし俺が何も言わなかったら、林春吉が無能だと思われてしまうだろう？」

「林さん、このやつは確かに教訓を受けるべきですが、彼の姉は私の彼女です。ですから、私が直接来たのは、父の顔を立てて……」

林春吉の表情が険しくなり、石村陽太の髪を掴んで言った。「お前の父親のために？お前の父親が何者だって？たとえお前の父親が直接来ても、このやつを簡単には放さないと言ったはずだ。俺は言っただろう、１億６千万円、そのまま連れて行け」

石村陽太は林春吉が言葉に重みを持つことを知っていたからこそ、ここに来たのだ。

それ以外に、彼は十倍の胆力を持っても来る勇気はなかった。

彼は父親の名前を使えば、この金を免れられると思っていたが、どうやら唐沢桜子を手に入れるには、ある程度の犠牲が必要なようだ。

「林さん、怒らないでください。お金は持ってきました。お金を出しますが……父とあなたの関係を考えて、少しだけ減らしてもらえませんか？」と石村陽太は試しに言ってみた。

林春吉は石村陽太から手を放した。

「そうだな、じゃ