林原辰也たちが去ると、会場に残された招待客たちは、和泉夕子に対してひそひそと話し始めた。彼女がどうしてあんな危険そうな男たちと関わりを持っているのか、誰もが訝しんでいた。夕子はその視線や噂を気にせず、すぐに白石沙耶香と江口颯太の方に目を向けた。「夕子、あの人たちは一体何者なの?」沙耶香は不安そうに彼女を見つめていた。直感的に、あの集団がただのビジネス関係者ではないことを感じ取っていたのだ。夕子は微笑みながら、沙耶香の手を軽く叩いて安心させるように言った。「あの人は林原氏グループの社長よ。今日は私に大事な契約書を取りに来たの」この言葉をわざと大きな声で言い放った。沙耶香のウェディングドレスには小さなマイクが付いていたため、夕子の言葉は自然と会場全体に響き渡った。招待客たちは彼女の説明を聞いて、再びざわざわと話し始めた。「沙耶香の友達ってすごいね。林氏の社長と知り合いなんて」江口颯太の親戚たちはA市郊外の出身で、普段は大物との接点がない。だが、A市のいちばんの金持ちの名は誰もが聞いたことがあった。夕子がわざわざこの説明をしたのは、江口家の親戚たちに変な誤解をされないためだった。誤解されたままでは、沙耶香が「怪しい友達」を持っていると噂される可能性があったのだ。人は付き合う相手によって評価されるというのは、名誉を壊しかねない厳しい現実だった。招待客たちは夕子の説明に納得したようだったが、沙耶香の心にはまだ不安が残っていた。彼女は事がそんなに単純ではないと感じていた。「もし契約書を取りに来ただけなら、どうして林原氏の社長があんな大勢を引き連れてきたの?それに、あの人があなたの腰を触ったりするなんて……普通じゃない」彼女は林原辰也の動作を目の当たりにして、ただならぬ危険な雰囲気を感じ取っていた。彼が夕子を追いかけているというよりは、むしろ脅しているように見えたのだ。沙耶香は心配で仕方なく、ウェディングドレスに付けていたマイクを外すと、夕子の手を取り、真剣な表情で彼女を見つめた。「夕子、本当に危険な目に遭ってるなら、絶対に私に言って。命を懸けてでも、あなたを守ってみせるから」沙耶香は子供の頃から美しい夕子に、多くの悪い縁が寄ってきたのを知っていた。かつては桐生志越が彼女を守っていたが、今はもう彼の姿はな
Read more