和泉夕子はニュースを見終わり、しばらく呆然として立ち尽くしていた。こんな短時間で、どうやってA市の巨頭である林原氏を一夜にして崩壊させたのだろうか。どんな力が働いたのか、まるで理解できなかった。ふと、彼女は昨夜の仮面をかぶった男の言葉を思い出した。「林原辰也はもう戻らない」と言っていた。彼はどうして事前にそんなことが分かっていたのか?この事件は、もしかして彼の仕業なのだろうか?もしそうだとしたら、彼女が以前考えていた「仮面の男は林原辰也の友人」という仮説は成り立たないことになる。そして、林原辰也の友人がこんなにも巨大な力を持つとは考えにくい。林原氏を一晩で崩壊させるなど、常人にはできることではない。「夜さん」と呼ばれるその男はいったい何者なのだろう?和泉夕子の頭は混乱し、思考が限界に達しそうだった。だが、少なくとも林原辰也が何者かによって排除されたことで、もう彼の脅威に怯える必要はなくなった。それだけが救いだった。しかし、林原辰也の脅威から逃れたと思った途端に、彼女は別の狂人に目をつけられていた。和泉夕子はしばらく考えた末、ホテルのマネージャーに頼んで監視カメラの映像を確認してもらうことにした。結果、林原辰也が部屋に出入りする様子は映っていたが、あの仮面をかぶった男に関する映像はすべて削除されていた。この事実に、和泉夕子はさらにその男の正体がただ者ではないと感じた。証拠となる映像もなく、相手が誰なのかも分からない。彼を訴える証拠さえもないのだ。だが、彼女はこのまま泣き寝入りするつもりはなかった。あの男は少なくとも沙耶香のことを脅迫していない。それを考えると、彼女は警察に行って事情を話すことを決意した。警察に出向き、彼の電話番号、LINEのアカウント、そして送られてきたメッセージをすべて警察に提供した。しかし、警察の話では、その電話番号には身分証明書が登録されておらず、LINEのIPアドレスも特定できないため、相手を特定するのは非常に困難だという。さらに、メッセージに関しても、彼女が自ら相手に連絡を取っていたため、相手が他人を騙っていたとしても直接的な証拠とはなり得なかった。警察は、せめて体液の証拠を採取するために病院に行くことを勧めてくれた。失望しながらも、和泉夕子は病院で検査を受け、証拠を残すために体液の
続きを読む