鈴は、鼻を突くような煙草の臭いに顔をしかめ、思わず席をずらし、藤沢との距離を取った。ふと目を向けると、藤沢の歯の隙間には黄ばんだ汚れがこびりついているのがはっきりと見えた。……最悪。一見まともな男かと思えば、近くで見るとこれほど不潔とは――鈴は内心、吐き気を覚えた。「何?帰してくれないってこと?」できるだけ息を吸わないようにしながら、藤沢と同じ空気を吸うのを避けるように言った。「安田翔平のベッドを温めてたかと思えば、今度は帝都グループの本社社長に乗り換えた。浜白に戻るなり、俺たち古株を踏みつけるとは……大したものだな、三井社長」鈴は唇に皮肉な笑みを浮かべ、眉をわずかに上げた。「それで?わざわざ私を呼び出したのは、褒め称えるため?」「いや、それだけじゃない。安田が抱いた女が、どれほど違うのか……試してみたくてね」藤沢の目は露骨な欲望に濁り、いやらしく鈴を値踏みするように見つめていた。彼にとって、数日前の出来事はまだ忘れられない屈辱だった。最初はただの飾り物かと思っていたが、ここ数日、鈴の鋭い判断力と手腕を目の当たりにし、彼の中に焦燥感が募っていた。この女を、何としても踏みつぶさなければ――!そんな考えが、藤沢の中で渦巻いていた。鈴は、冷笑を深めながら、ゆっくりと言った。「へえ……まさか藤沢社長が私をそんな目で見ていたなんて」「女なんて所詮、大した実力もないくせに。ベッドの上の技がなけりゃ、こんな高い地位に就けるわけがないだろ?」藤沢の言葉には、女性への軽蔑が露骨に滲んでいた。鈴は一瞬、帝都グループの採用基準を疑った。こんなクズが、どうやってここまで上り詰めたのか。「それに……俺は安田との結婚生活の話も聞きたい。特に、ベッドの上の話なんか、面白そうだよな?」「そんなに興味があるの?」鈴は冷ややかに鼻で笑い、ちらりと周囲を見回した。「でも、ここには人が多いから……話すには、ちょっと不向きかもね」「心配無用、三井社長」藤沢の目がいやらしく細まり、ポケットからカードキーを取り出した。「お待ちしてるよ」「さっき言ったわよね? 私は本社社長の後ろ盾を得たって。そんな私が、もし彼にこの話を告げ口したらどうする?」鈴は興味深げな視線で藤沢を一瞥し、何か別の意味を探ろうとした。探るような視線を向けると、藤沢の顔
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