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第49章 安田社長、怖いのか

「三井さん、あなたの馬術は見事ですね」

向井蒼真は三井鈴を称賛し、その目は誠実で不快感を与えない。

三井鈴の視線は一瞬安田翔平に向けられたが、すぐに向井蒼真に戻り、「向井社長、少し別の場所でお話しできませんか?」と尋ねた。

啓航グループは、テクノロジーの核心に特化した会社だ。

この5年間で、数々の新しいスマートバイオロボットを開発し、各分野で高い評価を得ている。

今回のナノロボット技術は前例のない技術的突破であり、医療史上の難題を解決する可能性がある。

三井鈴はこの点に注目し、就任後にこの契約を成立させたいと考えていた。

安田翔平の黒い瞳は冷たく沈み、不快感を帯びた声で言った。「啓航グループはすでに安田家と契約している。何も隠す必要はない」

彼の視線は三井鈴から一度も離れず、彼女が馬に乗って登場した瞬間からずっと彼女を捉えていた。

三井鈴が彼の前で馬に乗ったことは一度もなく、そのことについても話したことがなかった。

この女性には、彼が知らないことが多すぎる。

啓航グループと安田家の協力はまだ秘密の段階にあるが、この女性がこんなに早く情報を得て介入しようとしているのを見ると、今後浜白のビジネス界での競争は少なくないだろう。

三井鈴は少し驚いたが、両者の動きがこんなに早く、数日で契約手続きを完了しているとは思わなかった。

心の中では少し遅れたことに苛立ちを感じたが、彼女の顔には自信に満ちた笑みが浮かんでいた。「このプロジェクトに帝盛も加えることはできませんか?」

向井蒼真は笑みを浮かべ、その目には何を考えているのか分からない光が宿っていた。「現在、啓航グループはすでに安田家の資金を得ている。新たな投資者を加えるのは適切ではないかもしれません」

向井蒼真が拒否することを予想していたかのように、三井鈴は依然として冷静で、ゆっくりと説得を続けた。「新たな投資者を加えることで、規模が拡大し、リスクを分担することができるのではないでしょうか?」

「帝盛の医療研究技術は、ナノロボットの実用化をより一層支援することができます。自分の心血を大切にする人なら、このような大きな推進機会を見逃すことはないでしょう」

三井鈴の自信に満ちた目は、向井蒼真の深い瞳をまっすぐに見つめた。「向井社長、もう一度考えていただけませんか?」

向井蒼真は説得されたように見え
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