All Chapters of 離婚後、私は世界一の富豪の孫娘になった: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話 社長補佐の派手な振る舞い

スマホ画面には安田翔平のいつもの強硬な口調が書かれていた。「今日のことは遥が悪かった、謝らせるから、お前も若菜に謝るんだ!」三井鈴は怒りで頭に血が上り、思わず悪態をついた。「頭おかしいの?最低!」と返信した後、彼女は安田翔平をさっさとブロックして、スマホを脇に放り投げた。飯塚真理子は三井鈴にいたずらっぽく笑いかけ、「鈴ちゃん、あさって陽翔兄と一緒にオークションに行くんでしょ?」と尋ねた。三井鈴は頷いた。「そういうことになっているわ」飯塚真理子はワクワクして、「ドレスを選んであげるわ、あんたの豪華なクローゼットを見せてくれない?」と頼み込んだ。「もちろん、中のものは好きなだけ選んでね」三井鈴は快く承諾した。クローゼットの扉を開けた瞬間――飯塚真理子は「わあ」と声をあげた。「ちょっと、ここ広すぎない?浜白のセレクトショップより大きいじゃん!」クローゼットは三層構造のサンクン式になっており、ハイブランドのジュエリーやドレスがずらりと並んでいる。今回戻ってきた後、三井陽翔が改装を指示し、昨日やっと完了した。「私のクローゼットもかなり広いと思ってたけど、こっちはもう規格外って感じだね」飯塚真理子は華やかなドレスに見惚れて、絶賛し続けた。三井鈴はふと一着を手に取り、鏡の前で合わせながら言った。「まあまあね。これからも入りきらなくなったら、また増設すればいいわ」若かった頃は何もわかってなかったな。大人しく家業を継ぐほうが、よっぽど楽だったのに。ちょうどその時、執事の高橋がノックして入ってきた。後ろには二人のメイドが続き、大量のドレスが掛けられたラックを押してくる。高橋は恭しく言った。「鈴様、プラダから新作のオートクチュールドレスが届いております。発売前に、お嬢様にお選びいただきたいとのことです」「うん、分かった。置いておいて」三井鈴は飯塚真理子を引っ張って行き、豪快に言った。「好きなのを選んで、気に入らなければまた届けてもらうわ」彼女のものは親友のものでもあった。飯塚真理子の目がキラキラ輝き、彼女の頬を両手で包んで何度もキスした。「鈴ちゃん、ほんと大好き!」クローゼットの中は、終始楽しげな笑い声で満ちていた。一方、ロールスロイスの車内では、安田翔平が送ったメッセージが赤い感嘆符に変わるのを
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第22話 値段をつり上げる

今日の三井鈴は息をのむほどの美しさだった。絹のように滑らかな黒髪を背に流し、華やかなメイクがその美貌を際立たせる。市場に出回ることのない高級オートクチュールドレスが、彼女のしなやかな体を包み込み、その輝きをさらに引き立てていた。その美しさは、まるで咲き誇るケシの花のように妖艶で、誰もが視線を奪われずにはいられなかった。彼女はゆっくりと安田翔平の方に歩み寄った……安田翔平は、彼女を見つめる瞳に複雑な色を宿していた。その感情は言葉にできないほど混じり合い、深く沈んでいる。かつての彼女は、穏やかで控えめな女性だった。だが今は、華やかで大胆不敵な美しさを放っている。この女、本当に変わったな。記憶の中の彼女とはまるで別人のようだ。「安田社長、あなたって本当に目的を果たすまで諦めない人ね?」目の前に立った三井鈴は、赤い唇を軽く歪め、嘲笑を浮かべた。「お前のボスはどこだ?」安田翔平は冷たい声で尋ねた。三井鈴は冷笑した。「見てわからない?私ひとりよ。期待外れだった?」くだらないメッセージを送ってきたと思ったら、今度は兄に狙いを定めたのか。でも、兄に会いたいなら、まず彼女の許可を取るべきでしょう?意図を見抜かれた上で、嘲笑もされた安田翔平の顔は瞬く間に険しくなった。オークションの主催者はすぐに笑顔で迎え入れた。「三井さん、こちらへどうぞ」三井鈴は彼を無視して、優雅に中へ入った。三井鈴の華やかな入場を見て、安田遥は安田翔平の耳元でささやいた。「お兄ちゃん、やっぱり私の言った通りじゃない?あんなに派手になったのは、どこかの金持ちに取り入ったからでしょ?」安田翔平はますます苛立ち、「黙れ」と不機嫌に言った。彼の機嫌が悪いと察した安田遥は、しゅんとしながら黙り込み、そのまま後ろに従う。佐藤若菜は柔らかい声で安田翔平に言った。「中に入りましょう」三十分後、オークションが始まった。知的で優雅な女性オークショニアが出品物を紹介していた。「氷翡翠のブレスレット、一つ、開始価格は400万円!」ライトに照らされると、そのブレスレットは繊細で透明感があって、見る者に洗練された上品な印象を与えた。三井鈴は安田家の祖母の誕生日が近いことを思い出して、手を挙げて入札した。「600万円」「600万円、入りました!」
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第23話 誰でも美人が好きだ

スタッフの対応は迅速だった。場面転換の合間に、すでにブレスレットが運ばれ、係員はその場で佐藤若菜が小切手を書くのを待っていた。オークションでは自社の名前を使ったため、もし支払いを逃れようとすればオークションハウスに訴えられることになる。佐藤若菜は震える手で小切手に署名するしかなかった。座席の後ろ数列。鈴木悠生は微笑みを浮かべた。「いやぁ、今日はツイてるな。こんな大金をドブに捨てる奴を見られるとは」と言った。このブレスレットはせいぜい600万円だ。当時は宝石商に騙されて、400万円もの大金を払って母親に贈ったものの、母親は気に入らず、結局オークションに出品することになった。ただ……視線はその馬鹿な奴と値段を競った美しい女性に留まっていた。誰でも美人が好きだ。ましてやこんなに面白い美人ならなおさらだ。彼はますます興味をそそられた。「なんだか見覚えがあるような気がするんだが、誰だ?」と鈴木悠生は隣にいるHBグループの社長に尋ねた。「確か、三井鈴って言うらしいよ」「三井鈴?」鈴木悠生はその名前を繰り返しながら、ふと昔の顔にニキビがいっぱいあった三井家の四女を思い出した。途端に全身に鳥肌が立った。まさか……そんなはずはなかった!何度か瞬きをして、再び三井鈴の美しい横顔を見て、彼は確信した。「絶対に別人だ、同じ名前の別人だ」次の出品が舞台に上がった。「ヨーロッパ製のアンティーク懐中時計、開始価格は1億円!」その懐中時計が三井陽翔から指示されたもので、三井鈴は手を挙げて「1.2億円!」と言い出した。「1.3億円!」……佐藤若菜が無駄に競り上げることもなく、オークションは順調に進行する。三井鈴は最終的に1.4億円でこの懐中時計を落札した。佐藤若菜は心の中で悔しさが渦巻き、腹立たしくもあったが、これ以上三井鈴と競り合う勇気がなかった。彼女がまた何か策を仕掛けてくるのが怖かったのだ。彼女の口座には確かにもう限界に近かった。それでも、彼女は可憐な声音を装いながら安田翔平に話しかける。「翔平、しばらく会わないうちに、三井さんのこと、見直さなきゃいけないね」「離婚した時には一文も取らなかったのに、数日経っただけで、1.4億円の懐中時計を何のためらいもなく落札するなんて」彼女は話しながら
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第24話 君も僕も見る目がない

「あなたには関係ないでしょ?わざわざ教える理由なんてある?」と三井鈴はゆっくりと立ち上がって、軽蔑の表情を浮かべて冷たく言った。安田翔平は突然気づいた。彼らは既に離婚していて、確かに、今さら彼女に詮索する資格なんてないのかもしれない。だが、次の瞬間、別の感情が湧き上がる。かつて、心も身も自分のものだった女が、今は別の男の腕にいる――その事実を思うと、彼の胸の奥に言いようのない所有欲が芽生え、理性をかき乱した。「離婚の本当の理由は何だ?」と安田翔平は冷たい声で尋ねた。三井鈴は冷笑を浮かべて、「もうずいぶん前のことなのに、まだそんなことを聞いて、何か意味があるの?」と言った。彼女は安田翔平の暗い瞳を真っ直ぐ見つめ、一語ずつはっきりと告げる。「理由はただ一つ――もう、うんざりだったからよ」「いったい何が不満なんだ!この三年間、お前は安田家で何不自由なく暮らし、俺のそばでは重要な役職についていた。今と何が違う?」安田翔平は少し間を置いて、離婚前の夜、三井鈴の求愛を思い出した。「まさか、俺が手を出さなかったせいか?」安田翔平が三井鈴を抱かなかったのには理由がある。彼女は、寝言で別の男の名前を呼んだからだ。プライドの高い安田翔平にとって、それは許し難いことだった。だからこそ、結婚生活の間、一度も彼女に触れなかった。三井鈴はそれを聞いて、軽く笑った。「馬鹿馬鹿しい、何考えてんの?」「だったら、今すぐお前の望みを叶えてやる!」安田翔平は数歩詰め寄り、三井鈴の顔を両手で包むと、そのまま唇を奪おうとした。「バシッ」と。彼は三井鈴に強く押しのけられて、その勢いのまま頬を思い切り打たれた。頬に火がつくような痛みが走って、安田翔平は舌で歯茎を押さえて、目には狂暴な怒りが広がっていた。目の前の三井鈴のことがますます分からなくなった。三井鈴の目尻はわずかに濡れ、怒りで胸が上下していた。この馬鹿はまさか、本気でそんな理由だと思ってたの?彼女がどうして当初、安田翔平に恋をしたのか?気持ちを整えて、「三年間、あなたは自分が見たいものしか見てこなかった。そんなの、目を開けたまま盲目なのと同じよ」凍りついた瞳を閉じて、嘲笑しながら、「そうね、最初に見る目がなかったのは私の方だった。あなたが感動して、最後には愛してくれると思
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第25話 必ず彼女を落とす

三井鈴は拳を強く握りしめて、手を出さないように必死に抑えた。この男は兄が言っていた、自分と縁談を進めようとしている相手——鈴木家のプレイボーイ、鈴木悠生だった。もし婚約の話だけなら、三井鈴はこれほど反応を見せなかった。最も根本的な理由は——この鈴木悠生が五歳の時から彼女をブスと言いふらしていたからだ。それだけでなく、その後も「死んでもブスと結婚しない」と宣言していた。はっ、こっちだって鈴木悠生なんか願い下げだわもし彼の父親である鈴木先生が彼女の父親の恩師でなければ、彼女はこの「毒舌男」を徹底的に懲らしめていただろう!鈴木悠生はまだ喋り続けていて、「面白い美女」の顔色の変化に全く気付いていなかった。目の前の三井鈴が記憶の中の三井鈴であるとは全く思いもしなかった。「ねえ、もしよかったら、連絡先を――」話がまだ終わらないうちに、顔に美女が投げたハンカチが当たって、手を伸ばしてそれを受け取ると、再び顔を上げた時には「面白い美女」はすでに遠くへ行っていた。美女の怒りに満ちた後ろ姿を見て、彼は困惑した。「彼女は一体……」彼は美女が残した涙のハンカチを持ちながら困惑しながら呟いた。「俺、何かしたか?」鈴木悠生はその背中をしばらく見つめた後、再び笑みを浮かべた。「個性がある、いいね、こういう子。俺の好みだ」そう言って彼は友達グループのチャットに入った。【悠生様】:重大ニュース!皆の悠生様がついに運命の人を見つけたぞ!!!【熊谷湊斗】:?【安田翔平】:美貌と知性を兼ね備えた絶世の美人か?【悠生様】:その通り!しかも、高貴で冷たくて、めちゃくちゃカッコいい!完全に俺の理想!【悠生様】:今度こそ本物の恋だ!彼女しかいない!【熊谷湊斗】:は?お前の性格、俺らが一番よく知ってるんだけど?また適当なこと言ってんじゃねぇよ。 【悠生様】:いや、本気だって!もしかしたら、俺もついに人生を改めて、運命の相手に出会い、真面目な男になるかもしれないぞ!【安田翔平】:それはほぼ不可能だ。宝くじに当たる確率の方が高いな。【悠生様】:いいだろう、賭けようじゃないか!一ヶ月以内に彼女を落として、ツーショットをこのグループに送ってやる!……三井家の書斎にて。三井鈴はアンティークな美しい木箱を三井陽翔に渡して、「陽翔兄、この
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第26話 三井鈴は理想的な嫁

三井陽翔はすぐに応接室へと姿を現れた。彼はまず鈴木先生と挨拶を交わしてから、安田翔平の前に立った。二人の間には、互いに引けを取らない強いオーラがぶつかり合う。だが、今日は安田翔平が頼み事をする立場にあるため、やや劣勢に見えた。「三井社長、お噂はかねがね」「安田社長、こちらこそ」二人が握手を交わすとき、安田翔平は三井陽翔から無意識に放たれる敵意をはっきりと感じた。それが彼を少し困惑させた。鈴木先生は白い着物を身にまとい、穏やかな笑みを浮かべながら座っていた。だが、その眼光は鋭く、商人特有の計算高さが滲み出ている。彼は朗らかな口調で切り出した。「三井くん、今日は安田くんと共に、医療展示会の件で話をしに来たんだ。どうやら安田グループは帝都グループのリストから外されたらしいが、これは何かの誤解では?」三井陽翔の冷たい目が安田翔平を見据えた。「誤解はありません。帝都グループは安田グループが基準を満たしていないと判断しただけです」「安田グループとしては、追加で資金を出す用意があります。三井社長、帝都に取り次いでいただくことは可能でしょうか?」安田翔平は今回の展覧会に参加することが安田グループに大きな利益をもたらすと考えて、解決するつもりで来た。三井陽翔は相変わらず冷静な態度を崩さず、コーヒーをテーブルに戻して、冷ややかな声で言った。「無理です」相手が自分の譲歩を無視して、話し合う意思がないことに安田翔平は怒りを募らせた。「三井社長、ビジネスの世界では、そこまで露骨に門前払いするのは、いささかやり過ぎでは?」二人は互いに譲らず、緊張が高まっていた。そこで仲裁役の鈴木先生が再び口を開いた。「今日はわしがこの場にいるんだから、若い者同士、わしの顔を立ててくれないか。両社の社長が揃っているんだから、腹を割って話し合うのはどうだろうか?」安田翔平はその言葉を聞いて怒りを収めた。彼は結局、仕事のために来たのだから、対立しても問題は解決しないのだ。彼は冷静な表情で言った。「三井社長、ご希望があればどうぞおっしゃってください。安田グループが満たせるものかどうか、検討させてもらいたい」「安田さんがもし、御社の研究チームの核心技術を帝都グループと共有できるなら、検討する余地があるかもしれませんね」三井陽翔は気のない様子で言った。
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第27話 さっさと離婚しよう

「三井鈴が浜白に行くって、本当?」鈴木先生はこの知らせを聞いて明らかに興奮し、目を輝かせた。「それなら、以前から話していた婚約の件も、そろそろ本格的に進めたほうがいいんじゃないか?」三井陽翔は淡々とした口調で、鈴木先生ほど積極的ではなかった。「結婚するのは当人たちです。彼らの意思を尊重するのが筋でしょう」三井陽翔の言葉の意味を、父である鈴木先生は痛いほど理解していた。自分の息子がどんな人間か、彼はよくわかっている。晩年に授かった一人息子を甘やかしすぎたせいで、遊び人に育ってしまった。表向きは鈴木グループの社長として問題なく振る舞っているが、実際には酒や女、カーレースに明け暮れ、まともな結婚相手とは言い難い。三井家が望む婿にはほど遠いのだ。三井家の娘は三井鈴一人しかおらず、大事に育てられて、まさに宝物のように扱われてきた彼女を、このような放蕩息子に嫁がせるなど、到底納得できるはずがない。三井鈴はいい子で、顔立ちも整っているし、性格も申し分ない。まさに理想的な嫁だ。どうやら……今回もあのろくでなし息子を浜白に派遣して、機会を掴むように注意を促さなければならない。親として助けるのは当然だ。早く帰って鈴木悠生にこのことを話さなければと考えて、鈴木先生はすぐに席を立ち、三井陽翔に別れを告げた。三井陽翔が応接室から戻ると、ちょうど三井鈴が書斎から出てきた。「陽翔兄、私を浜白に先行させるつもり?」三井陽翔は眉をひそめて冷静に言った。「うん、お前は浜白には詳しいから、戦略の配置は君が一番適任だ。残るか、浜白支社に行くか、選択権はお前にある」三井鈴の目には自信が輝いて、迷いなく答えた。「私が浜白支社に行くわ」三井陽翔は、念を押すように言った。「浜白で働くなら、帝都グループの利益を最優先にするんだ。感情に流されて自分を見失わないようにね」安田翔平が今回ドバイで苦戦して、浜白に戻った後は帝都の支社に容赦しないかもしれない。その後、両社の競争は少なくないだろう。もし三井鈴が嫌なら、彼も妹の決定を尊重するつもりだ。三井鈴は三井陽翔が心配していることを理解していたし、自分が背負っているのは支社の未来であることもよく分かっていた。「陽翔兄、私は帝都での成長のために浜白へ行くのよ。本社にいきなり社長補佐として配属されたことで、
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第28話 サインを確認する

「あいつがそんなに早く離婚したいなら、望み通りにしてやる!」「弁護士に電話して、市役所に行く時間を決めろ」と安田翔平の声はますます大きくなって、胸の怒りが収まらなかった。蘭雅人は電話を切る勇気がなかった。「社長、向こうはできるだけ早くと言っています。社長が日時を決めさえすれば、いつでも対応可能とのことです」それを聞いて、安田翔平はまだ通話中の電話を地面に投げ捨てた。額に手を当て、痛むこめかみを押さえながら低く呟く。「三井鈴……やるじゃねぇか!」……帝都グループ浜白支社のビル。三井鈴は会議室のドアを開き、優雅なOLスーツをまといながら飯塚真理子と共に姿を現した。飯塚真理子とは最近関係を修復したばかりだが、それを機にフランスに戻らず、一緒に事業を立ち上げることを決意した。そして、二人でセレクトショップを開く計画も進めている。三井鈴は彼女と飯塚真理子を紹介した。「皆さんこんにちは。ドバイ本社から赴任してきた社長の三井鈴で、隣にいるのは飯塚真理子副社長です。今後の業務で皆さんと協力して、浜白支社の業績を共に高めていければと思います」ここにいる人たちはほとんどがドバイ本部から派遣された人で、一年前に来て、すでに自分の勢力を築き上げていた。長らく空席だった社長の座を狙っていた彼らは、突然現れた「社長」に驚きを隠せない。しかし、三井鈴が安田グループの社長秘書だったことを知っていたが、彼女の身元については全まったくの謎だった。「三井社長、よろしくお願いします」「よろしくお願いします」ほとんどの者は黙って受け入れたが、中には納得できない者もいた。「三井さんはかつて安田グループの秘書だったそうですが、今は帝都グループに来たということは、会社の機密情報を安田グループに漏らす危険性があるのでは?」飯塚真理子はそれを聞いて、三井鈴を守ろうとしたが、三井鈴はそれを制して、自分が解決できると目で伝えた。話していたのは事業部の部長、藤沢颯真で、この人たちの中で最も業績が優れている人物だ。誰もが彼が次の社長になると思っていた。藤沢颯真は、まさに手に入るはずのポジションを若い女性に奪われたことに対して怒りを覚えて、また、三年の秘書経験しかない彼女が自分の上に立つことを許せなかった。三井鈴は眉を軽く持ち上げて、危険な笑みを浮
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第29話 また厄介者に遭遇した

商業エリアの中心に、ひときわ目を引く五階建ての独立した建物がが建っていた。その外観は全面ガラス張りで、洗練された雰囲気を放っている。今日は飯塚真理子がセレクトショップを再オープンする日だ。三年間手をつけていなかったデザインを、今再び始めた。三年前よりも立地は良く、店舗の広さも格段に大きくなった。店内は独特な装飾が施され、華やかな照明が輝き、厳選された一流ブランドの服やジュエリーが並べられている。シンプルなガラス張りの外観は、通りすがる人々にその独自のセンスをさりげなくアピールしていた。かつて、二人の独創的なデザインとセンスあるコーディネートが浜白の貴婦人たちの間で一躍話題となって、若い女性たちからも大きな注目を集めていた。まだ正式にオープンする前から、店の前には長蛇の列ができていた。並んでいるのは皆、家柄の良いお嬢様たちで、予約番号を手に順番を待っている。三井鈴も今日、飯塚真理子に会社から呼び出されて、客のコーディネートを手伝うことになった。午前中は忙しすぎて目が回りそうだったが、ようやくランチタイムに、少し人が減ったので、二人は疲れてソファに倒れ込んだ。飯塚真理子は三井鈴の腕に抱きついて、「鈴ちゃん、今日の感じ、まるで昔みたいじゃない?」と笑いかけた。「うん、一瞬で三年前に戻ったようだね」三井鈴は微笑みながら飯塚真理子の頬に軽く触れた。「真理子がそばにいてくれて、本当に良かった」「私もよ」その後、飯塚真理子は二階を見に行くと言って、三井鈴にはもう少し休むように促した。一人ソファに腰掛けていた三井鈴は、ふと安田遥と佐藤若菜の姿を目にした。安田遥はオフシーズンの高級ブランドドレスを着て、店内でひたすら自撮りをしていた。撮った写真を加工してから九枚をまとめてSNSにアップした。「最高級のバイヤーショップで爆買い中……」と得意げにコメントを添えて投稿した。投稿が終わると、彼女は興奮したまま、佐藤若菜と店内をあちこち見て回りながら楽しそうにしていた。安田遥は今シーズンの3600万円する高級ブランドのドレスを手に取り、期待に満ちた目で佐藤若菜を見つめて、「若菜さん、ねえ、このドレス、私に似合うと思わない?」と問いかけた。その目線には、「あなたは私の義姉でしょ? しかもお金持ちなんだから、私にプレゼントして
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第30話 内緒で結婚した真相

「ダフ屋から買った招待枠は、その場で無効になるのがルールよ」三井鈴は目を細めて、顔には嘲笑の色が浮かんでいた。「それに、店長自ら接客するなんてサービスは存在しないわ」「もちろん」彼女の視線が流れて、微笑んだ。「もしお二人が今日店内で10億円を使うなら、私が店長として接待することも可能よ」佐藤若菜はただの佐藤不動産の令嬢で、財布にそんな大金が入っているはずがない。前回は6億円も無駄に使ったばかりで、彼女が今財布の中が空っぽだと三井鈴は賭けていた。もし彼女が意地を張って散財してくれれば、それは飯塚真理子の売上に直接貢献することになる。まさに一石二鳥だった。だが、安田遥は何も考えずに焚きつける。「若菜さん、あんな女の店の商品、全部買い占めてやりましょ!あなたの財力を見せつけてやればいいのよ!」佐藤若菜は目を伏せて黙っていた。安田遥が何を言っても動かなかった。「もしかして、お金がないの?お金もないのに、見栄を張ってダフ屋からチケットを買ったわけ? そんなにこの店を見学したかったのね。なら仕方ない、警備員を呼んでお引き取り願おうかしら?」彼女の声は決して大きくはなかったが、店内の誰もがはっきりと聞き取れるほどの絶妙な音量だった。上流社会のマダムたちの間では、ヒエラルキーが厳然としている。すぐさま数人の好奇心旺盛な女性たちが、この出来事をグループチャットに投稿した。次の瞬間、いくつもの通知音が鳴り響き、各グループで話題が一気に爆発する。一瞬にして、安田遥と佐藤若菜の周りは嘲笑に包まれた。二人の顔色はまさに「見もの」としか言いようがなかった。言葉では表現しきれないほどの屈辱が浮かんでいる。「三井鈴!調子に乗るのも大概にしなさいよ」佐藤若菜は目を細め、顔は怒りのあまり真っ白になっていた。声にははっきりとした威圧感が滲んでいる。三井鈴は微笑みを浮かべながら、目はますます鋭くなっていった。「そう?私はこういう性格なんだ。不満でもある?」次の瞬間、黒いサングラスをかけた警備員が静かに現れ、佐藤若菜と安田遥の背後に立った。そして、無言で「お引き取りください」と言わんばかりの手振りをする。周囲の冷ややかな視線に耐えられず、二人は肩をすくめながら店を飛び出した。店の外に出た瞬間。佐藤若菜は、これ以上の屈辱はないと感じた。こ
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