All Chapters of 会社を辞めてから始まる社長との恋: Chapter 261 - Chapter 270

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第261話 手際が良すぎた

 翌日。入江紀美子が子供達を送ったあと、杉浦佳世子から電話がかかってきた。佳世子は単刀直入に田中晴が会って服装工場の話をしたがっていると言った。紀美子は10分後に会社のビルの下で会うと約束した。会社についてから、紀美子はアフターサービス部と短い会議をして、松沢楠子を呼んでコーヒーショップへ向った。コーヒーショップに入ると、佳世子と晴は既に席に座って待っていた。楠子を見て、二人は目を合わせた。晴は佳世子に近づき、低い声で彼女に注意した。「相手を疑ってもいいけど、あまり露骨すぎないように。でないと一旦疑われたら、また彼女から情報を聞き出すのが難しくなる」佳世子は歯を見せて笑い、「私がそんなバカな真似をすると思う?」晴は驚いたふりをして佳世子を見て、「おや、自明してるじゃない!」佳世子は絶句した。彼女はいっそのこと目の前の毒舌男を嚙み殺そうとした!しかし紀美子が既に近くまできたので、彼女はテーブルの下で思い切り晴の太ももを摘みながら、笑顔で紀美子に挨拶した。「紀美子、アメリカンコーヒーを頼んでおいてあげたよ!」「ありがとう」紀美子は座って晴に挨拶しようとしたが、彼が顔を真っ赤にして隅で変な顔になっていたのに気づいた。「田中さん、最近は十分休みをとれていないの?」紀美子は戸惑って尋ねた。佳世子は面白そうなふりをして晴を見て、「うひゃ、晴犬、いつも酒はほどほどにと注意したのに。ほら、表情筋が麻痺しちゃったんじゃない?」それを聞いた紀美子は、目線をテーブルの下に垂れた佳世子の手に落とし、一瞬で彼女が何をしていたかが分かった。紀美子は見て見ぬふりをして、メニューを楠子に渡し、「好きなのを頼んで」と言った。楠子は無表情に、「ありがとうございます、私は喉が渇いていませんので」と断った。紀美子は頷き、顔色が大分良くなった晴に、「田中さん、話にあった服装工場はあなたの会社のものなの?」晴は太ももを揉みながら、「俺のだけど、設備が整ったばかりで君のことを聞いたので、協力しないか聞きたいところだ」紀美子「私が知っている限り、田中グループはまだ服装業界に業務を展開していないようだけど、その工場は……?」「確かに業務は展開していないけど、俺は金があり余ってるから工場を作ってみたいってのはダメ?」晴は笑
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第262話 まだ動きはない

 松沢楠子は顔色を変えずに、「はい」と返事した。杉浦佳世子「……」それ以外の返事はないの?「はい」一つで終わり?もっと楠子の話を聞いて突破口を探そうとしたのに!用心深くて、流石だ!田中晴は絶句して、先ほど彼女に注意したばかりなのに、またその話を持ち出した!どうなってんだ、この女の記憶力は?!入江紀美子は佳世子の話に乗じ、楠子を見て、「朔也とは連絡が取れた?」と尋ねた。楠子「いいえ、まだです」佳世子は驚いて、「朔也がどうかしたの?」と聞いた。紀美子は、「彼の携帯は事件の日からずっと携帯の電源が落ちて、未だに音信不通だわ」と説明した。佳世子は目を大きくした!なに?!まさか本当に露間朔也だった?!でないと何であいつの電話が繋がらなかったのよ!晴は嘲笑いながら佳世子を見て、目の中は皮肉で一杯だった。この馬鹿女はまさかまた朔也のことを疑ってるのか?紀美子は明らかにわざとそう聞いてるのに、彼女はなぜ分からないのだろう。晴は紀美子の話に沿って言った。「往々にして一番身近な人の素性が最も推測しにくいものだ」「確かに」紀美子はそう言いながら、契約書に自分の名前を書いて、晴に渡した。「田中さん、一式二部よ。私はまだ仕事が残ってるので先に失礼するわ。これからは宜しくね!」晴は頷き、佳世子は慌てて合わせた。「紀美子、時間があればまた会いにいくから!」紀美子「うん、わかった」二人が帰ったあと、佳世子は晴に睨んで文句を言った。「高いよ!もう少し負けてあげられなかったの?!」晴「それはもう十分すぎるぐらい安かったんだぞ、信じられないならあの工場の敷地面積を見てくるか?」佳世子は口をゆがめ、「もういいわ、私だって混乱してるし、これ以上細かく聞いてられないわ!」「どうした?君はまた朔也を疑ってるのか?」晴は口元に笑みを浮かべて聞いた。「そうだよ!」佳世子はため息をついて、「みんなが疑わしいのよ!わかんないよ!」と言った。晴は笑って何も言わなかった。午後、MK社にて。晴は契約書を森川晋太郎に渡して、「ほら、契約を結んできたよ」晋太郎は「ああ」と返事して、契約書をめくっていったが、読めば読むほど、彼の顔が曇ってきた。「協力期間中、在職社員の給与は乙方が支払う、だと?半年の借用レンタ
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第263話 君の親戚だ

 森川晋太郎のその落ち込んだ顔をみて、田中晴は笑いを堪えきれなかった。晴はできるだけ晋太郎を刺激して、彼に勇気をつけてもらい、自分の女を取り戻してもらいたかった。晋太郎は契約書を握りしめ、俊美な顔は埃が被ったかのようだった。もし渡辺翔太の手元にも服装工場があったら、入江紀美子はまったく自分の好意を受け入れようとしなかったのか?自分はいつから人の第二選択肢になった?そこまで考えると、彼は思い切り契約書を笑いを堪えていた晴の顔に叩きつけた。……午後。紀美子が新工場に行こうとした時、松沢楠子が入ってきた。楠子「社長、下に4人あなたに会いたい人がいて、あなたの親戚だと自称しています」紀美子は戸惑い、「親戚?」と確認した。楠子「その人達は、あなたの父親の茂さんの故郷の親戚だと言っています」急にその名前を聞くと、紀美子はめまいがした。養父には故郷に妹がいることは、以前母から聞いたことがある。しかし母はあの家の人たちは皆面倒くさい人だと言い、これまで彼女に接触させようとしなかった。彼らは今更何をしに訪ねてきたのだろう。紀美子はなんとなく悪い予感がした。そして彼女はきっぱりと断った。「会わない!」「はい」楠子は部屋を出ようとしたら、紀美子の机の上の電話が鳴り出した。繋がると、電話の向こうから受付の声が聞こえた。「社長!こちらにあなたに会いたいと騒いでいる人が……」受付の話がまだ終わっていないうち、電話は誰かに奪われた。そしてすぐ、尖り切った中年女性の声が響きた。「もしもし、紀美子か?!」紀美子「いいえ、違います」「絶対あなたでしょ!」中年女性は紀美子を脅かした。「上がらせてくれないと、記者たちを呼んでくるから!あなたは自分の父を監獄送りにしたことを忘れたの?」紀美子は拳を握りしめ、「一体何がしたいんです?」と聞いた。「怖気着いた?ならば会ってから話そうじゃない!」紀美子は深呼吸をして、怒りを押さえながら楠子に、「上がらせて」と指示した。「はい、社長」5分もしないうちに、男が二人に女一人、そして七、八歳の女の子が一人紀美子の前に来た。外観的には男は30代前半で、身の上は社会をさまようチンピラそのものだった。もう一人の男は凡そ50代だった。二人は先に入って
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第264話 君の親戚

 「私たちは親しい親戚だったの?」入江紀美子は怒りを通り越して呆れた。紀美子に問い詰められた入江世津子はいきなり尖った声で叫び出した。「あぁ、お兄ちゃん!あんたは本当に無様な死に方をしたわ!あんたの娘は今お金持ちになったら、こちらを知らないふりをしはじめたわ!お母さん、お兄ちゃん、一体誰が助けてくれるの、もう生きていけない、いっそのこと死んでしまいたいよ……」紀美子は手をゆっくりと握りしめ、真っ青な顔で暴れていた世津子を見た。彼女には分からなかった、以前父がギャンブルの借金に追われていた頃、一切連絡してこなかった親戚達がなぜこの時急に訪ねてきたのだろう。彼女は必死に考えていた最中に、耳元にはっきりとした物が割れた音が聞こえた。紀美子は音の方向を見てみると、会社の開業式の時、兄の渡辺翔太がくれたウサギの飾り物が入江億実によって地面に叩きつけられた。「ちょっと落としただけで割れるなんて、ガラクタじゃない」億実は嫌そうに口元を歪め、また手を展示棚のもう一つの物に伸ばした。今度彼女が3層目にあった花瓶だが、手が届かなかったので、入江邦夫が彼女を抱き上げて取らせた。「いい加減にしてくれない?」我慢できなくなった紀美子は立ち上がり、冷たい目線で彼らを見渡して言った。「あなた達がちゃんと話してくれれば、私も落ち着いて接してあげるけど、出来ない、或いはうちの物を壊したり、うちの社員の仕事の邪魔をしたりしたら、暴力的な手段で止めるから!」「おや?」入江万両は胸を押さえながらチンピラのように笑った。「こええ、俺マジで怖いわ」そう言いながら、彼は紀美子の前にきて、見下ろして聞いた。「暴力的な手段でうちを止めると言ったな?」万両が近づきすぎて、彼の臭い息で紀美子は窒息しそうだった。彼女は吐き気を堪えながら、冷たい目線で万両を睨みつけた。「そうよ!」「やってみろ!」万両はそう言いながら携帯のカメラを立ち上げ、紀美子の顔に向けて動画を取り始めた。「殴ってみろよ、人を遣って殴らせてみろよ!全部撮ってやるわ、いい気になるんじゃねえよ!」紀美子は怒りを抑えきれず、手で万両の携帯を振り払って、そして思い切り彼の顔にビンタした。「いい加減にしなさい!」世津子の泣き声がいきなり止まり、飛びかかってきて万両の顔の隅々までチェ
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第265話 イカれちまってんだ

 20分後、入江紀美子は彼らを連れて藤川別荘に帰った。彼らが車を降りて、入り口の前にいたボディーガードたちはその人たちに疑いの目線を送った。入江邦夫は初めてボディーガードを見たので、目を大きく開いて近づいていった。ボディーガード達の前まで来て、珍しそうに彼らの体を触りながら呟いた。「うほ、本物の人間だ!全く動かなかったからてっきり人形だと思ってた!お前ら、警備員か??」ボディーガードは嫌な顔を見せ、邦夫の襟を掴んで彼を引っ張り上げた。「ボディーガードを聞いたことはないのか?」「ボ、ボディーガード?!人を殴ったりするアレか?!」それを聞いた入江世津子はびっくりして、慌ててボディーガードに説明した。「うちの旦那は何も分からないから、お二人さん、どうか彼を驚かせないで」そう言って、歯を食いしばって力を入れて邦夫をバシッと叩いた。「余計なことをしないで、さっさと入るわよ!」ボディーガード達はまた嫌な顔を見せた。紀美子は口元にあざ笑いを浮かべながら、ドアを開けた。ドアを開けた瞬間、白いワンピースを着ていて、長い髪を滝のように垂らした白芷白芷が玄関に立っていた。紀美子の後ろにいた皆はその光景を見て、びっくりして体が震えた。まるで幽霊だった!紀美子は口を開こうとしたら、白芷はその後ろの人達を見て眉を寄せた。背の高い入江万両を見たとき、彼女は惨い目つきになった。紀美子が彼女の表情から反応を取る前に、白芷は万両に飛び掛かった。彼女は万両を押し倒し、彼の体に乗っかって思い切り彼の首を締めた。「死ね!!死ね!!クズ男は!!皆死ね!!」入江家の人びとは驚いて、恐怖で目を大きく開いて呆然とした。紀美子は眉を寄せながら、素早く前にでて彼女を止めようとした。「白芷さん!もうやめて!」紀美子の声を聞いて、入江家の人達はやっと我に返った。世津子「ちょっと、何をすんのよ!この女は誰よ!」入江億実「お兄ちゃん、お兄ちゃんの首を締めないで!!」白芷は手に力を入れ、惨い目つきで入江家の人達を睨み、尖った声で叫んだ。「黙れ!全員黙って!彼に死んでもらう!死ね!!」邦夫は驚きすぎてまともに喋ることすらできなかった。騒ぎを聞いた秋山先生は状況を確認してから抗不安剤を取ってきた。白芷に注射して
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第266話 私は知らなかった

 2階から降りてきたばかりでその光景を見た入江紀美子は、その場で立ち止まった。そのレゴの別荘は、佑樹とゆみ、そして念江達が無数の時間と精力を注いで漸くここまで立てた。最上部はまだ封じていなかったのに、このまま壊され、子供達が戻ってきたらきっと悲しむだろう。紀美子はイラついて目を閉じ、壁に背を当てて思考を整理した。下からのはしゃぐ声や叫び声、議論の声を聞きながら、彼女は何度も繰返して呼吸を整えようとした。彼女が乱雑な出来事を忘れ、再び目を開いた瞬間、目の中は清らかな光を発していた。彼女は階段を降り、その人たちの金に目がない表情を見て、冷たい声で「3階には部屋が二つあるけど、自分で選んで」と言った。入江家の人達はそれを聞いて、興味津々になった。「行こう、上の部屋を見てみよう!」入江世津子はそう言いながら体で階段を塞いでいた紀美子を押しのけ、皆を連れて上がっていった。この時、秋山先生は階段を降りてきた。彼女は上の騒ぎを聞きながら、紀美子の傍にきて、「入江さん、あの人達は……」と尋ねた。「我慢するしかないわ」紀美子は心が疲れて、秋山先生に、「まだ会社に仕事があるから、家は宜しく頼むわ」「あ……はい」秋山先生は無言にため息をついた。午後。紀美子は田中晴と服装工場に向った。工場についた後、紀美子はその面積の広さに驚いた。来る前は、MK社の服装工場の規模は絶対小さいものではないと、ある程度心の準備はしていた。しかし実際自分の目で見てみたら、その規模は大学二軒分の広さにも及ぶものだった!彼女は、半年で2000万円のレンタル料金は安すぎたとまで思った。工場に入り、紀美子は各現場の銘板を見た。それぞれの現場は製作プロセス別で分けられており、更に、MK社は自分の紡績現場もあった。晴はパトロール用の電動車を見つけて、紀美子を連れて工場全体を回ったが、相当疲れた。彼は運転しながら杉浦佳世子に撮った写真を送っていたからだ。大分経ってから佳世子は返信してきた。「漸くあの『高くしていない』の意味が分かった」晴は携帯をポケットに戻し、ぼんやりとしていた紀美子に、「どう?なかなかいい工場だろ?」と聞いた。紀美子は視線を戻して、笑って答えた。「良い取引だったわ、そして勉強にもなった」「えっ?」晴は
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第267話 心配しないで

 工場を回り終わった頃、子供達が下校する時間になった。入江紀美子は田中晴と分かれ、幼稚園に向かった。子供達を迎えて、紀美子は車の後ろの席に座り、彼らに打ち解けた。「佑樹、ゆみ、お母さんはあなたたちに言っておきたいことがある」入江ゆみは大きな目を瞬きながら、「なに?」と聞いた。紀美子「お母さんのお父さんの方の親戚が家に来てるけど、その人達はちょっと悪いことをしてて、うっかりあなた達が建てたレゴのお城を壊しちゃったのよ」「えええええ?!」ゆみは目を大きく開いて叫んだ。「何で私たちが頑張って建てたお城を壊したの?!」隣で話を聞いた入江佑樹も笑みを収め、眼差しが暗くなった。「生まれてから教養がない人もいるのよ、でも一つだけお母さんと約束してくれる?何があっても必ず自分をちゃんと守って、いい?」紀美子は子供達に注意した。佑樹「その人達はいつ帰るの?」紀美子「分からないわ」ゆみの目が潤んで、「お母さん、その人たちはお母さんをイジメてたの?」と聞いた。紀美子は娘を懐に抱き込み、「お母さんは頭がいいから、イジメられるわけがないでしょ?心配しないで。」とゆみを慰めた。ゆみは小さな手でしっかりと紀美子の服を掴み、泣きそうな声で、「その人たちが酷いことをしない限り、私とお兄ちゃんはお母さんを困らせたりしないから」「大丈夫だわ」紀美子は笑って、「さっき言ったでしょ、あなたたちがちゃんと自分を守れば、それでいいの。たとえ本当にその人たちにイジメられても、絶対に罵って言い返してはいけないよ」と言った。弱腰を見せればイジメられるだけ、自分を守る方法は沢山あって、彼女は子供達に小さい頃からイジメを甘んじて我慢するのを絶対許さない!佑樹は拳を握りしめ、その人たちは一体どんな素性をしているか、彼は見てみたかった!母親にそんな話まで言わせた奴、絶対許さない!家に着いて、紀美子はドアを開けると、入江億実が自分のハイヒールを履いて歩いていたのを見た。彼女のシルクのパジャマは入江世津子が着ており、顔には彼女のシートマスクをつけていた。ゆみはそれを見て、何も言わずに飛び掛かっていった。彼女は億実の前に止まり、幼い声で怒鳴った。「誰があなたはお母さんの靴を履いていいと言ったの?!」億実はゆみを見下ろして、「履きたいから履いたの
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第268話 まずは200万を寄越しな

 そう言って、入江紀美子は子供達の手を繋いで、2階に上がろうとした。汚いものに触れたら、洗わなきゃ。入江世津子は一歩先に紀美子の前を塞がって言った。「待って!自分の子供を教育しろってどういう意味?あなたの子供にイジメられるなんて、うちの子は何か悪いことでもしたの?!」紀美子は一瞬で目つきが冷たくなり、世津子を厳しく睨んで、一文字ずつ言葉を並べた。「もう一度言ってみなさい?」世津子は紀美子の目つきに押さえられ、「い、いくらでも言うわよ!あなたなんかに脅かされてたまるか!あなたんちのその……」「うるさい……」突然、白芷白芷の声が階段の方から聞こえてきた。世津子はぞっとして、大人しく口を閉じた。そして泣き散らかっていた娘を抱き上げ、彼女の口を手で塞いで慌てててトイレに隠れた。その反応は、まるで幽霊でも見たかのようだった。白芷は呆然と目を瞬き、首を傾げて目が赤くなったゆみを見た。彼女は眉を寄せ、慌てて入江ゆみの傍にきた。ゆみの顔にまだ唾が付いていたのを見て、白芷はブチ切れた。「誰にイジメられたの!」ゆみは小さな口を歪め、「白芷おばさん、あの女が私とお兄ちゃん、そしてお母さんをイジメたの」白芷は厳しい眼差しでトイレの方を目掛けた。トイレのドアの前に立ち、彼女は思い切りドアをノックして、「またうちの子供達をイジメたら、バラしてやるわよ!」リビングに座っていた人達は一斉に視線が白芷に集まった。白芷はその人たちの目線を感じたのか、振り向いてリビングにいた親子を毒々しく睨みつけた。2人はほぼ同時に体を縮め、ソファに隠れてひやひやとしていた。そして、白芷は紀美子の傍にきて、ゆみを抱き上げて階段を登っていった。紀美子はほっとして、やはり自分がいくら厳しいことを言っても、白芷の目つきには敵わなかった。夜。紀美子は子供達と白芷を連れて晩ご飯を食べに出かけようとしたら、世津子に引っ張られた。世津子は当たり前のように手を伸ばして、「金をくれ!」と要求した。「何の金?」と紀美子は聞き返した。「晩飯の金に決まってるでしょ!私たちはここに来たばかりだし、外でいいモンを食べさしてくれるわよね??あなたが記者達に家まで訪ねてこられたくなければ、先に200万を寄越しな!」紀美子は暫く世津子を見つめ
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第269話 あと数日しかない

 せっかくこんないい男に出会ったのに、彼女は簡単に手放すわけがなかった!狛村静恵は携帯を取り、「森川さん、いきなり誘ってごめんなさい、今後は気をつけることにします」と返信した。森川次郎「こちらこそごめんね、今度必ず行くから」静恵は彼が故意に自分を断っているのではないと感じて、少し意外だった。森川次郎……静恵は彼のことを考えながら、前買収した森川晋太郎の会社の技術員にメッセージを送った。「100万やるから、森川次郎が結婚してるかどうかを調べてもらいたい。彼はそっちのボスの兄だから、絶対に間違えるな!」技術員「分かりました、明日の午後までに返事します」チャット画面を閉じて、静恵はツイッターを開いた。トレンドトップのトピックに目を惹かれた。『Tycの女性社長の別荘に住むとはどんな体験かと言うと』彼女はトピックを開き、別荘の写真を一枚ずつチェックした。載っている入江紀美子が2人の子供と一緒に撮った写真を見ると、彼女は我慢できずに笑った。紀美子の親戚は流石に動きが速かった!彼女はただその人たちにエサを撒いただけなのに、こんな速いスピードで住み込んでくれたとは!恐らく紀美子は彼らに相当悩まされたのだろう。その記事はまだ発表して3時間しか立っていなかったが、書いたアカウントは既に4000人ものフォロワーが増えた!静恵は急に笑顔を収めた。紀美子は流石に知名度が高い!こんなに多くの人に注目されていたとは!だがいずれ、彼女は紀美子の名声を跡形無く潰してやると決めた!夜8時半。紀美子は子供達と家に戻った時、入江家の人達はまだ帰ってきていなかった。意外な安らぎで、子供達の顔色もほんの少しよくなっていた。紀美子は2人の子供を部屋に戻して寝かせた。入江ゆみは、「お母さん、あの人たちはもう帰ったのかな?」と聞いた。紀美子がまだ答えていないうちに、入江佑樹は口を開いた。「違う、その人達はただまだ遊びきれていないだけだ」ゆみは口を歪め、「お母さん、その人達はあの意地悪な子供をお兄ちゃんと私の幼稚園に送ったり、しないよね?」と聞いた。「縁起でもないことを言うなよ」佑樹はそれを考えるだけで嫌になった。あの女の子、会うたびに吐き気がした。もうし自分に昼にも夜にもあのような奴と会わなくてはなら
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第270話 あなたに不公平だ

 「もう、さっきまでずっとその話をしてたけど、私だってそんなにかかると思ってなかったんだもん!やっぱり都会の店はみんなぼったくりだわ!」「だから、私が言ったように、明日は彼達についていくのよ!いっぱい食べてやらないと損する、その金を節約して他の所に使ったらいいじゃない!」「どこにも使わないわよ、貯めておく!ここに住み込んだ以上、かかる金はすべて彼女に出してもらう!もう少し経ったら、彼女に家を買ってもらうから!」「ママ、それいいアイデア!今都会で流行ってるルーフバルコニーの家、私も住んでみたい!」「いいわ!買ってもらう!」その会話を聞いた白芷白芷は、怒りで拳を握り緊めた。マズい!紀美子ちゃんは狙われている!助けてあげなきゃ!1階にて。入江紀美子はお風呂上りに渡辺翔太に電話をかけた。電話が繋がり、翔太は、「紀美子、もう遅いのにまだ仕事してるのか?」と聞いた。紀美子は眉間を揉みながら、疲弊した声で答えた。「ううん、実はちょっと手伝ってもらいたいことがあって」翔太は持っていた資料を置いて、笑って聞いた。「言ってみて」紀美子は工場を回っていた時、田中晴に2人の子供の所在を聞かれたことを翔太に教えた。翔太は暫く沈黙してから、「それならなんとかする、死亡証明書は偽造できるから。ただ、晋太郎がそれを知ったらどう反応するかは、よく考える必要がある」「既にそう言ったから、やるしかないわ」紀美子「すくなくとも、そうすれば子供達を森川家に奪われなくて済む」翔太「君がそう決めたのなら、私もこれ以上多く言わない」「このことはできるだけ急いでやらなければならないわ。晴は晋太郎の一番の親友だから、絶対すぐに彼にこのことを教えたはず」「分かった。心配するな、すぐに手配する」紀美子は少しため息をついて、「お兄ちゃん、今回のことはあなたに不公平だけど、そうするしかないわ」「バカなことを言うな」翔太は笑って答えた。「はい、もう遅いし、寝よう」時を同じくして。屋上の露店バーにて。晴はグラスにワインを注ぎ、晋太郎に渡した。晋太郎はゆっくりと目を上げて、「今夜は女に付き合わなくていいのか」と聞いた。晴の手が一瞬止まり、「女なんかより友達の方がずっと大事だけど、たまには女を抱きたくなるってのも、よくあることじゃない?
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