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第270話 あなたに不公平だ

 「もう、さっきまでずっとその話をしてたけど、私だってそんなにかかると思ってなかったんだもん!やっぱり都会の店はみんなぼったくりだわ!」

「だから、私が言ったように、明日は彼達についていくのよ!いっぱい食べてやらないと損する、その金を節約して他の所に使ったらいいじゃない!」

「どこにも使わないわよ、貯めておく!ここに住み込んだ以上、かかる金はすべて彼女に出してもらう!もう少し経ったら、彼女に家を買ってもらうから!」

「ママ、それいいアイデア!今都会で流行ってるルーフバルコニーの家、私も住んでみたい!」

「いいわ!買ってもらう!」

その会話を聞いた白芷白芷は、怒りで拳を握り緊めた。

マズい!紀美子ちゃんは狙われている!助けてあげなきゃ!

1階にて。

入江紀美子はお風呂上りに渡辺翔太に電話をかけた。

電話が繋がり、翔太は、「紀美子、もう遅いのにまだ仕事してるのか?」と聞いた。

紀美子は眉間を揉みながら、疲弊した声で答えた。「ううん、実はちょっと手伝ってもらいたいことがあって」

翔太は持っていた資料を置いて、笑って聞いた。「言ってみて」

紀美子は工場を回っていた時、田中晴に2人の子供の所在を聞かれたことを翔太に教えた。

翔太は暫く沈黙してから、「それならなんとかする、死亡証明書は偽造できるから。ただ、晋太郎がそれを知ったらどう反応するかは、よく考える必要がある」

「既にそう言ったから、やるしかないわ」紀美子「すくなくとも、そうすれば子供達を森川家に奪われなくて済む」

翔太「君がそう決めたのなら、私もこれ以上多く言わない」

「このことはできるだけ急いでやらなければならないわ。晴は晋太郎の一番の親友だから、絶対すぐに彼にこのことを教えたはず」

「分かった。心配するな、すぐに手配する」

紀美子は少しため息をついて、「お兄ちゃん、今回のことはあなたに不公平だけど、そうするしかないわ」

「バカなことを言うな」翔太は笑って答えた。「はい、もう遅いし、寝よう」

時を同じくして。

屋上の露店バーにて。

晴はグラスにワインを注ぎ、晋太郎に渡した。

晋太郎はゆっくりと目を上げて、「今夜は女に付き合わなくていいのか」と聞いた。

晴の手が一瞬止まり、「女なんかより友達の方がずっと大事だけど、たまには女を抱きたくなるってのも、よくあることじゃない?
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