梨花は呆然としてしまった。星野おばあさんはどうしてこんなにも常識外れの行動を取るのだろうか?「何をじっと見ているんだい?ドラマの主人公にでもなったつもりか?」紗枝は皮肉げに笑った。「さっさと消えな、ここを汚すんじゃないよ」そう言うと、紗枝は小さな巫女の目を手で覆い隠した。「見ちゃいけないよ、目が汚れるからね」梨花は全身ずぶ濡れのまま戻ってきたが、口からは悪態をつき続けていた。「何なのよ、あの変なお婆さん!助けないだけならまだしも、あたしにかけたのって一体何よ、臭いったらない!」昇は鼻をつまみながら遠くへ逃げた。「藤城さん、こっちに近づかないでください。それ、たぶん長い間取っておいたおしっこだよ。おかげで峻介社長まで臭いで倒れちゃいるよ」梨花は泣きたい気持ちを抑えきれなかった。「おしっこ?どうしてあたしにおしっこをかけるのよ!」慶太は困ったように答えた。「ここではおしっこが邪気を払うものとされているらしいですよ」「いやいや、生きてる人間におしっこをかけるってありえないでしょ?」「それは藤城さんが余計なことを言うから。星野おばさまは最初、普通に話してたよ。でも、あなたが『婚約者』って言った瞬間から態度が変わった」「きっと一生独り身だったから性格が歪んでるのよ。テレビだと、愛する人のためにお願いすると、世捨て人の高名な医者が感動して助けてくれる話ばかりじゃない?どうしてこんなことになるのよ!」結局、世間の高名な医者のような情けを受けるどころか、彼女はおしっこを浴びせられるという屈辱を味わったのだ。「そこの小川で体を洗いなさい。僕たちは別の方法を考える。今や引き返す余地はない。峻介社長には残り一日しかない」進は、たとえ糞を浴びるリスクを負ってでも、紗枝に治療を頼むつもりだった。「兄貴、俺も一緒に行くよ。どうせ俺にはプライドなんかないし、どれだけ汚されても平気だ」慶太も後を追った。部屋には正昭と峻介だけが残った。正昭は痛みに耐えながら自分の服の端を掴んでいる峻介を見て、静かにため息をついた。「あなた、何やってるんですかね」もともと一発の銃弾で片付いたはずの問題だった。それを、あの顔のせいで自らをこんな目に遭わせていた。「もしここで死んだら、彼女はそのことさえ知らないだろうに」峻
Last Updated : 2024-12-11 Read more