二人の子どもたちも優子を心配そうに見つめながら、「ママ!」と声をかけた。「私……」優子は真澄の肩にもたれ、小さく息を切らしていた。彼女の顔色は悪く、全身から力が抜けたように見えた。真澄は険しい表情で尋ねた。「優子、最近ずっと解剖してても吐き気なんてしなかったのに……ちょっと聞くけど、峻介と最近そういうことしてないわよね?なんか、これって……妊娠してるんじゃないの?」優子の表情が固まった。数日前に峻介の世話をしたが、その時は何もしなかった。時間的にも妊娠の可能性は低いはずだった。ただし……彼女の頭に浮かんだのは、船上でのあの一夜だった。弘樹と一晩中愛し合ったことが蘇った。翌日、霧ヶ峰市に戻った優子はすぐに良平に頼んで避妊薬を買ってもらった。「いや、妊娠なんてありえない。避妊薬を飲んだから」優子の声にはかすかな震えがあった。「避妊薬?優子、あれが100%効くわけじゃないってことぐらい知ってるでしょ?最後に生理が来たのはいつ?」優子は記憶を辿った。最後の生理は2カ月前だった。彼女の生理はいつも不規則で、あまり気に留めていなかった。だが、自分が妊娠している可能性を考えると、優子は急に平静を失った。彼女は何度も首を振った。「そんなはずない、妊娠なんてありえない!」真澄は優子の怯えた表情を見て、事態が簡単ではないと感じた。「優子、大丈夫よ。もしかしたら、ただの疲れで吐き気がしてるだけかもしれない。お医者さんだって、妊娠しづらいって言ってたでしょ?」優子の手のひらは冷たい汗で湿っていた。もし本当に弘樹の子どもを妊娠していたらどうすればいいのか。彼女の頭の中はその考えでいっぱいだった。優子は弘樹のことが好きではなかった。あの夜はただの事故に過ぎなかった。彼女たちはその後も旅を続け、小さな島々を通過した。しかし、どこにも妊娠検査薬を売っている店はなかった。優子の焦りは日を追うごとに募った。吐き気の症状は悪化するばかりで、真澄も優子の体調に心配を募らせた。妊娠か病気の再発か、どちらにしても良い兆候ではなかった。だが、優子自身は病気の再発ではないことを感じていた。再発なら胃痛を伴うはずで、単なる吐き気では済まない。この症状は、前回妊娠した時のつわりにそっくりだった。彼女たちは半月近く旅を続け、ついに南
最終更新日 : 2024-12-08 続きを読む