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第0296話

「この映像、保存しておいて。それから、顔がはっきり映ってるところ、送って。

「いや、送る必要はない。直接プリントしてちょうだい。何枚か多めにね」

綿は歯を食いしばりながらそう言った。

雅彦はちらっと綿を見て、彼女が何か相当なストレスを受けたのだと感じた。これから復讐するつもりなんだろう、それも一人や二人じゃない相手に。

雅彦はすぐに作業に取り掛かった。

綿は写真を手に、勢いよく病院へ向かった。雅彦は心配になり、スマホで次々とメッセージを送った。

「ボス、冷静にね。感情に流されないで」

「ボス、ちゃんと後ろ盾を残しておいた方がいいよ」

「いや、ボス、僕が言いたいのはさ、相手にも少しは逃げ道を残しておいた方がいいんじゃないかって。あんまり厳しくしないで」

「ボス、僕も一緒に行こうか……」

雅彦は綿が心配で仕方がなかった。彼女が本気で怒ると、誰も止められない、何でもやりかねないからだ。

綿が病棟に入ると、ちょうど病院から出てくる輝明とばったり会った。

彼は電話をしていたが、綿に気づくと、じっと彼女を見つめた。

「謝りに来たのか?」彼は冷たい口調で言った。

綿は微笑んで、「そうよ、謝りに来たわ」

輝明は目を細めた。あんなに謝る気がなかったはずなのに、どういう風の吹き回しだ?

「本当に謝るのか?それとも形だけか?」嬌は今、少しの刺激でも耐えられない状態なんだ。

「本気で謝るわ」綿は素直に頷いた。

輝明は少し黙ってから、「ついて来い」と言って、歩き出した。

綿はすぐに彼の後を追った。

輝明が彼女を連れてエレベーターに乗ると、何度も彼女の顔をちらちらと見た。

しかし、綿は冷静で、まるでこの件には全く関係がないかのような表情をしていた。

輝明は眉をひそめた。森下に調査を依頼し、医学院の教授にも確認したところ、嬌が医学院に入れたことを知っているのは、関係者と綿だけだと分かった。

陸川家が自ら暴露するわけがなかった。

では、他に誰がいる?

エレベーターのドアが開くと、綿が先に降りた。

彼女は輝明がエレベーターの中でぼんやりしているのを見て、「高杉さん?」と声をかけた。

輝明ははっとして、彼女が手に持っている茶色の封筒に気づいた。

その封筒の中には何が入っているのか分からないが、かなり分厚いようだった。

「嬌の情緒がまだ不安定だか
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