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第0298話

嬌は顔を真っ赤にしていた。まさか、今回の件が綿の仕業ではないなんて、彼女の頭には一度もよぎらなかった。

最悪、自分がダメになっても、綿を道連れにしてやるつもりでいたのだ。しかし、それが馬場主任の仕業だったとは!

「どうして馬場主任が知ってたの?」嬌は綿に尋ねた。

「私が知るわけないでしょ?あんたがいつも外で好き勝手してるんだから、私がいちいち後始末しなきゃならないの?」綿は怒りを込めて言い返した。

嬌は肩をすくめ、驚きで震えた。

「高杉輝明、今後は何かあるたびに私に罪をなすりつけるのはやめて。私はそんな卑怯な人間じゃないの」そう言い終えると、綿は茶封筒を輝明の胸に押しつけた。

そして、二人の顔色がどんどん悪くなっていくのを見ながら、手を振って「どうぞ、お幸せにね」と皮肉っぽく言い残した。

そう言い終わると、綿は一度も振り返らずに病室を後にした。

病室を出た綿は、まるで重荷が取れたような、爽快な気分になった。

でも、これはまだ始まりに過ぎなかった。

綿は直接小林院長に行くことはせず、輝明が嬌のために動いて、馬場主任を小林院長に報告するだろうと読んでいたからだ。

これまで易と接触したことがなかった綿は、初めて自分から彼に電話をかけた。

易は驚き、綿からの電話だと気づくとすぐに応答した。

「4000万、まだくれる気はある?」綿が問いかけた。

「え?」易は戸惑った。

「彼岸カフェで会いましょう」そう言い、綿は電話を切った。

彼岸カフェ。

綿は白いワンピースにカーディガンを羽織り、上品で清楚な雰囲気を纏っていた。

彼女はコーヒーを飲みながら、外に止まった高級車から降りてくる見覚えのある人物を見つけた。

易が綿の前に立つと、眉をひそめて言った。「考え直したのか?匿名の件を黙っておく気になったのか?」

綿があの手紙を自分が書いたと認めれば、後で小林院長に「ただの悪ふざけだった」と言えば、全てが丸く収まるだろうと思っていた。

嬌の学歴も守られるし、すべてが解決するはずだった。

綿は何も言わずにテーブルの上に茶封筒を置いた。

易は不思議そうに綿を見た。

これは何だ?

彼は茶封筒を開け、中身を確認した。

「この男、誰だ?」暗い顔が映る写真を見ながら、彼は尋ねた。

綿は手を広げて、もっと見てみなさいと促した。

嬌が病院にいる間
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