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第0297話

綿は輝明を見上げ、口元に薄く笑みを浮かべた。

その瞬間、輝明は嫌な予感がして、反射的に嬌の前に立った。

綿は茶封筒から写真をすべて取り出し、輝明に向かって勢いよく投げつけた。

写真が四方に散らばり、その中の一枚が輝明の頬をかすり、薄い血がにじんだ。

彼が嬌を守るように立っている姿を、綿はしっかりと見つめていた。

その瞬間、綿の心には確信があった。

彼は彼女を本当に愛しているんだ。

輝明は眉をひそめ、無意識に拳を握りしめた。何か言おうとしたが、綿が先に話し始めた。

「ここに来たのは、三つのことを伝えるためよ」綿は冷たく輝明を見つめ、言い放った。その声には冷酷さが漂っていた。

「1つ目は、雪蓮草の件は私じゃない。あれは、悪質なマスコミが勝手に注目を集めるために流したものよ。

「2つ目は、離婚の話が広まったのも、私のせいじゃない。陸川嬌さんが自分でマスコミに話して、私たちを早く別れさせるためにやったこと」

「そして3つ目は……」ここが一番大事なところだ。

綿の目が冷たく光り、その視線は鋭くなった。

輝明は、綿の「謝罪」が実際には過去の問題を蒸し返すためのものだとは夢にも思わなかった。

「陸川嬌の学歴詐称が暴露されたのも、私じゃないわ。彼女が自分で敵を作ったのよ」綿は輝明の後ろで怯えている嬌に冷たく言い放った。

嬌は恐怖で顔が青ざめていた。

特に、さっき写真がばらまかれた瞬間は、まるで花が散るようで、彼女にとって衝撃的だった。

綿はその中の一枚を拾い上げ、輝明に差し出した。

その写真を見た輝明は驚愕した。

「陸川嬌の学歴詐称を暴露したのは、馬場主任よ」綿の声は低く、さらに鋭さを増していた。

まさか、馬場主任がそんなことをするとは。綿自身も驚いた。

彼女たちの財産に嫉妬して、ここまでやるなんて。

今度は嬌を狙ったが、次は自分が標的になるかもしれない。

そんな卑怯なやり方をするなんて、男として最低だ。

本当に気持ち悪い!

「誰……?」嬌は震える声で聞いた。

輝明が手に持っていた写真には、馬場主任が黒い服を着て、小林院長のオフィスのバルコニーで何かをしている姿が映っていた。

綿はその場に散らばった写真を指して、「これが私の無実を証明する証拠よ」と言わんばかりに、冷たく笑った。

驚愕する輝明を見ながら、皮肉たっぷりの声で言った
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