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第0084話

暗い月茶屋にて。

綿と玲奈は個室に入ると、玲奈が尋ねた。「それで、どうしたの?」

「もちろん病院に行ったよ!高杉との離婚は簡単にはできないのよ。高杉のおばあちゃんが見張ってるからね」と綿はため息をついた。

「かわいそうに、婚姻の痛みからやっと抜け出したと思ったら、すぐに仕事に戻らなきゃいけないのね!」玲奈は笑いを堪えきれずに言った。

綿は個室の扉を閉めると、軽く鼻を鳴らした後、にやりと笑って手に持っていた小さな医療キットを見せながら、「さあ、大スター!お兄さんがしっかりと可愛がってやるよ!」と冗談めかして言った。

玲奈は顔をしかめ、「うわっ、気持ち悪い!」

彼女は撮影から戻ったばかりで、腰や背中が痛くてたまらなかったのだ。

綿はそれを聞いて、すぐに針とカッピングの道具を持ってきて、治療してやるつもりだったのだ。

「早く脱いで!」綿は医療キットを開けながら、色っぽい目で玲奈を見つめた。

誰だって美人を見るのが好きに決まってるでしょう?

玲奈は顔をしかめ、美しい顔立ちが一瞬で崩れそうになりながら、「綿、そんなこと言われると脱げないよ……」と呟いた。

「俺様に従え!お兄さんはお金持ちなんだ!」綿は眉を上げ、女遊びの男のような態度で言った。

玲奈はしばし真剣に考え込んだ。

二人はお互いを見つめて、思わず笑みを交わした。

「綿、その演技は私のドラマの男主人公よりも上手よ!」

「それは当然!」

玲奈がソファにうつ伏せになると、綿は鍼灸の道具を取り出した。

特別に作られた針が光を放ち、玲奈は恐る恐る息を飲んだ。「優しくしてね」

その声に反応して、綿は顔を上げて玲奈を見つめた。

朝、輝明が言った「次は優しくしろ」という言葉を思い出した。

綿はうつむき、ため息をついた。目には涙が浮かび、心に少しの苦みが広がった。

玲奈はそのため息を聞いて、綿を見つめた。

彼女がため息をつくほどのことは、輝明を思い出しているに違いなかった。

「綿、そのタトゥーを見せて」と玲奈が突然言った。

綿は振り返り、道具を準備しながらタトゥーを見せた。

玲奈は綿の傷跡に触れ、彼女を見つめ、目に一瞬で哀れみが浮かんだ。

綿はかつて輝明を救うために、あの冷たい海で命を落としかけたのだ。

その燃えるような愛情は、あの冷たい海では消えなかった。しかし、この三年間の結婚
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