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第0092話

「大丈夫、自分で行けるから」綿は司礼の申し出を断った。

「いや、僕が一緒に行く。それで決まり」司礼は再び断る隙を与えず、電話を切った。

綿はため息をついた。スマホを置いたとき、まだ輝明に腕を掴まれていることに気づいた。

「高杉さん、いつまでも掴んでいるのは失礼よ」彼女は優しく注意を促した。

もう元夫妻の関係なのに、どうしていつまでも触ってくるのか、何をしているのか?

もし嬌に見られたら、また泣いて不公平だと思うだろう。

「本気で韓井と付き合うつもりか?」輝明の声には苛立ちが滲んでいた。

「自分のことに集中して、私に構わないでくれる?」綿は嫌そうに彼の手を振り払った。

元夫がしつこくてどうすればいい?誰か助けて、今すぐ解決法を知りたい!

「桜井、あいつはろくなやつじゃないぞ!」輝明は親切心から警告した。

綿は笑った。「この世で一番悪い人間を愛したことがあるんだから、司礼が悪くても怖くないわ」

輝明はその言葉に詰まった。自分が世界で一番悪い人間だと言うのか?

「自分のことに集中しなさい!」そう言って、綿は大股で家に戻った。

彼女の去る背中を見つめながら、輝明はどうにも苛立ちを感じた。

この女、本当に!

理解不能だ!

その時、スマホが鳴った。森下からだ。「高杉さん、コウミズの社長からメッセージが来て、少なくともあと3ポイント譲らないと契約は打ち切ると言われました。調査したところ、コウミズの社長は昨日、韓井グループの司礼さんと会っていました。二人は協力するつもりのようです……」

司礼?また司礼か!

輝明は眉をひそめ、苛立ちを抑えながら怒りのこもった声で言った。「会社に戻って、すぐにビデオ会議を開いて、再交渉する!」

「わかりました」森下は一瞬ためらい、「社長、奥さんは社長が選んだプレゼントを気に入ってくれましたか?」

輝明「……」

森下は本当に痛いところを突いてくるやつだった。

彼が黙っていると、森下は慎重に言った。「プレゼント、もしかして渡せなかったんですか?」

森下がさらに質問しようとしたとき、「ツーツー」という電話の切断音が聞こえた。

うん……この無言の答えが全てを物語っていた。

高杉社長もプレゼントを渡せないことがあるなんて、人生の大きな挫折だ!

……

綿が家に戻ると、執事が言った。「小林院長がいらっしゃいました
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