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第0088話

玲奈はベッドにうつ伏せになり、綿に電話をかけた。「もしもし桜井お嬢様、こんなに長い間どこに行ってたの?」

言葉が終わると同時に、ドアが開いた。

玲奈が外を見ると、綿が元の姿に戻っていた。

「大スターさん、針を抜きに来たよ」綿は歩いてきて、さっき外で起きたことは話さなかった。

「帽子は?」玲奈が尋ねた。

「気に入ったから私がもらったわ。あなたはもうかぶらないで。さもないと、外に出るときに私をあなたと間違えるわ!」綿は適当な理由でごまかした。

玲奈はそれ以上追及しなかった。

綿が玲奈に鍼灸を施した後、玲奈の全身はすっかり楽になり、少しも疲れを感じなかった。

離れるとき、綿はロビーでマネージャーが話しているのを聞いた。「本当に変だな、この監視カメラの映像がどうして消えたんだろう?」

「小林さんがこのお客さんを探してくれと頼まれたんだけど、これが厄介なことになったんだ!」

「うーん、この若い娘は一体どこから来たんだろう!本当に不思議だ!」

綿は黙って下を向き、スマホを見ながらつぶやいた。「何を食べようか?」

「綿ちゃん!」と腕を擦られた。

綿が顔を上げると、「うん?どしたの」と聞きたいときに、ドアの外から二人の人物が入ってきたのが見えた。

輝明と嬌だった。

輝明は手にプレゼントを持ち、嬌はバラの花束を抱えていた。彼女は輝明の腕を取り、二人はお互いに笑い合い、とても仲が良さそうに見えた。

どうやら、嬌が偽物の雪蓮草を贈ったことは、二人の関係には何の影響もなかったようだ。

輝明は嬌に対してそういう態度をとっており、無条件で甘やかしていた。

もし他の誰かだったら、偽物の雪蓮草を持ってきて祖母を騙そうなんて、彼が受け入れるわけがないのだ。

「桜井」と輝明が先に口を開き、声には少し冷たさがあった。

綿は答えなかった。

玲奈は二人の親しい様子を見て、「この裏切り者どもめ!」と心の中で毒づいた。

「綿ちゃん……」嬌が綿を見てまた演技を始めた。「怪我はもう大丈夫?」

「誕生日パーティーではあなたのおかげで助かったわ。ありがとう!」そう言って、嬌は突然手に持っていたバラを綿に差し出した。「これは明兄ちゃんが私にくれた花なんだけど、感謝のかわりにあげるわ!」

綿は一度も輝明から花をもらったことがないはず、彼がくれた花をあげたら、きっと怒るだろうと
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