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第4話

萌香の表情は一変し、涙ぐんでいた顔が興奮と期待に満ちたものになった。

裕也は信じられない様子で、私の肩をしっかりと掴んだ。

「奈々、そんなこと言わないで。離婚なんてありえないよ。」

「さっきは本当に焦ってしまったんだ。痛くないか?病院に行こう……」

私は彼の手を払いのけて、話を続けた。

「明日、私の弁護士が財産分割について連絡する。その後、役所に離婚届を出そう」

裕也は、私が取り合わないのを見て、今度は強気な口調に変わった。

「奈々、お前、後悔するなよ!」

やっぱり彼の利益に触れた途端、態度は変わるんだ。

私はもうこの結婚が終わったことを決めた。

1ヶ月後、私たちは正式に離婚し、私は裕也の財産の半分を手に入れた。

それでも裕也は未練がましくメッセージを送ってきた。

「奈々、最近どうしてる?お前が恋しい。いつでもお前が戻って来られる場所は、俺の隣にあるから」

そのメッセージを見た時、私はもうミラノに到着していた。

安い代替品なんて、くだらない。私は自分の道を歩くのだ。

飛行機は厚い雲を抜けて、徐々に高度を下げていった。

下の高層ビルがはっきりと見える。

3年ぶりに、この地に再び足を踏み入れた。

荷物を待っていると、一人の男性が素早く私の荷物を手に取った。

彼はスラリとした動きで、腰を屈めた瞬間、ピンと張った白シャツが筋肉質の身体を浮き彫りにしていた。

彼は微笑みながらマスクを差し出し、言った。

「帰国がバレたくないなら、マスクをつけな」

私は礼を言い、マスクをつけた。

マスク越しの声は少しこもった。

「真一、わざわざ一緒に帰ってくる必要はなかったのに」

与謝野真一はミラノで私が出会った男性だ。

彼の家は有名な宝石会社MAGを経営していて、人材を求めてミラノに来ていた。

カフェで偶然出会った時、私はうっかりデザインの原稿を落としてしまい、それを彼が拾ってくれた。

それ以来、彼はたびたび宝石の鑑定について私に相談してくるようになった。

彼が私を見る目は純粋ではないことは、もちろんわかっている。

しかし、私も彼の人脈を利用する必要がある。

ミラノでの3年間で、私の専門知識はさらに洗練され、実務経験も豊富になり、国際的な知名度も上がった。

だから私は帰国することにした。

まさか真一も一緒に戻ってくるとは思わなか
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