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第2話

私は、彼がまだ私を愛していると思い込んでいた。

萌香が現れるまで、私の幻想は壊れなかった。

裕也は何度も彼女のために立ち上がり、妥協し、彼女を甘やかして、まるでお姫様のように扱っていた。

彼は、他人に苦しみと幸せを与える王のようで、残酷にもその愛を萌香に移し、私は深い苦しみの中にいた。

彼が離婚したくないのは、私がまだ彼にとっての高嶺の花だからだ。

しかし、彼はその高嶺の花を庭の雑草に変えてしまった。

そして、花は色褪せた。

裕也は一晩中帰ってこなかった。

私はソファに座り続け、一晩中考えていた。どうして私たちの関係がこんな風になってしまったのかと。

昼過ぎに、裕也が帰ってきた。彼は精力に満ちていて、昨夜、萌香と素晴らしい時間を過ごしたことが一目でわかった。

彼は手に持っていた箱を私に渡した。

開けてみると、私がとても好きなマイナーなデザイナーの作品だった。

それほど高価なものではないが、数が限られているため、気づく人はほとんどいない。

裕也はそのネックレスを私の首にかけ、額に優しくキスをして言った。

「奈々、お前がずっと欲しかったものを買ってきたよ」

その瞬間、彼はまだ私を愛しているのだと思った。

私は唇をかみしめ、鏡に映る自分を見た。まるで純白のジャスミンのように、儚く美しい姿がそこにあった。

裕也は私を見つめる、その瞳には愛しさとわずかな罪悪感が宿っていた。

「着替えて、今日は改めて記念日を祝おう」

私は化粧をし、ふさわしい服に着替えた。

裕也は映画を見に連れて行ってくれ、キャンドルライトディナーを用意し、盛大な花火まで打ち上げてくれた。

私はとても幸せだった。

まるで、私たちが初めて出会った頃のような甘い時間が戻ってきたかのように、過去のすべてがなかったことのように感じられた。

裕也が他の女性と頻繁に関係を持つようになってから、私は創作の気分を失っていた。

しかし今、久しぶりに創作のインスピレーションが湧いてきた。

だが、書斎に入ると、私のデザイン稿が無造作に床に散らばっているのを見つけた。

そして、机の上には一つの指輪が置かれていた。

私の手元にあるものと全く同じ指輪だが、それも女性用の指輪だった。

今日起こったすべての出来事が、走馬灯のように頭の中で浮かんだ。

驚きや喜び、そして愛情すべてが偽物だったのだ。

裕也から突然の埋め合わせ、プレゼント。

彼の目の中の罪悪感。

これらすべては白石萌香の仕業だった。裕也の優しさは、萌香が私のデザインを盗んだことに対する謝罪だった。

一瞬のときめきは、今、粉々に砕け散った。

私は涙をこらえながら、裕也に電話をかけた。

電話が長い間鳴り続け、ようやく彼が出た。

「奈々、どうしたの?」

私は問い詰めた。

「裕也、あんたが昨日記念日を埋め合わせすると言ったのは、白石萌香が私のデザインを盗んだからなの?」

裕也はしばらく沈黙してから口を開いた。

「奈々、彼女にはもう説教したから、次はないよ」

私の心は少しずつ沈んでいった。

私は冷たく問いかけた。

「彼女はデザイナーなのに、盗作がどれほど恥ずべき行為かも知らないの?」

「彼女はそんなに無能で、私のデザインを盗むしかできないの?」

突然、電話の向こうからかすかなすすり泣きが聞こえてきた。

萌香が泣いている。

彼女はすすり泣きながら言った。

「ゆんさん、ごめんなさい。プレッシャーが大きすぎて、彼女の作品を参考にしてしまったの」

裕也はため息をつき、「謝って」と言った。

「ごめんなさい」

萌香が泣きじゃくる声と、裕也が優しく彼女をなだめる声が聞こえてきて、私の心はさらに痛んだ。

「奈々、他に何が欲しいものある?俺が埋め合わせるから」

裕也は低い声で頼み込んだ。

「萌香の件が外に漏れると、大きな問題になるから、ほかの人には言わないでほしいんだ」

私の涙は止まらずに落ち続けた。

彼がこんなに優しく私に話しかけたのは、いつ以来だろうか。それも、萌香のためだった。

かつて、彼が最も好きだったのは、私が創作する時に目に宿る輝きだった。

今、彼は私にデザインの原稿を彼の愛人に譲るように言ってきた。

心の中に雨が降り始め、涙が設計図に落ちた。

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