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第9話

結局、彼は株式をすべて現金化し、その全額をオープンプロジェクトに投入した。

表面上、このプロジェクトの未来は明るそうに見えるが、実際には多くの立ち退き拒否者がいる。

たとえ利益を回収できたとしても、それは遥か先のことだろう。

これこそ、私と真一が仕掛けた罠だった。

かつての裕也ならこの企みに気づいたかもしれないが、今の彼はただのギャンブラーに過ぎず、全財産をつぎ込み、すぐにでも利益を回収したいという焦りに駆られていた。

彼がその時まで耐えられるかどうかは、誰にもわからない。

二ヶ月後、裕也の資金はすべて尽き、家、車、腕時計、骨董品までも売り払った。

ついには、かつて萌香に贈った高価な宝飾品にまで手を伸ばした。

これに恐れを感じた萌香は、夜通し荷物をまとめて逃げ出した。

これで裕也は完全に家も財産も失い、破滅の道を辿ることとなった。

彼は古びたアパートに引きこもり、毎日奴隷のように働き、上司の顔色を伺う日々を送るしかなくなった。

最後に彼を見かけたとき、彼は腰をかがめ、へつらうように笑っていた。

私はその光景を見て軽く笑い、車の窓を静かに閉めた。

車は裕也の横を通り過ぎた。

私たちの道は永遠に交わることなく、ますます遠ざかっていく。

すべてが終わったとき、私はふとインスピレーションが湧いた。

書斎にこもり、一晩中デザインを練り上げ、完璧な指輪のペアを創り上げた。

その指輪に「新生」と名付けた。

指輪の上に持ち上がった部分はまるで翼のようで、自由を象徴している。

今の私は、かつてないほど自由だ。

ふと気づけば、外には太陽が高く昇っていた。

そのとき、ドアベルが鳴った。

扉を開けると、そこには微笑む真一が立っていた。

彼は私を見つめて言った。

「新しい生活の始まりを祝って、奈々に新しい子供を連れてきたよ」

私は困惑した顔で彼を見つめた。

すると、真一は後ろから一匹の真っ白な長毛猫を抱えてきた。

小さな子猫は、まるで雪のようにふわふわしていて、甘い声で「ニャー」と鳴いた。

その瞬間、私の心は一気に温かくなった。

私は慎重にその子猫を抱き上げ、その柔らかな感触に満足した。

子猫は私の手にすり寄り、親しげに舐めてくる。

私が微笑んでいるのを見て、真一は安心したように言った。

「たとえ、俺たちが実の子供を持てな
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