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第7話

パシッ

里香は雅之の顔を平手打ちした。

「潔く別れよって?浮気したクズ男に言われたくないよね」

殴られたとは思わなかったのだろ、雅之の瞳孔が一瞬収縮した。

大切に育てられてきた彼はこのような扱いを受けたことが一度もなかった。

雅之は舌先を動きながら里香の手首をつかみ、そのまま彼女をベッドに押し付けた。

「甘やかしすぎた僕が悪かった」

雅之の目には温度が感じられず、重苦しい圧迫感が体を包み込み、里香を強く圧倒した。

里香は凍りつくような恐怖を心から感じた。

雅之は二宮家の御曹司であり、幼い頃から栄華を極めた生活を送ってきたのに。自分はその事実を忘れかけていたところだった。

こんな扱いを受けたことがない彼は怒ったに違いない。

しかし、雅之は自分の夫でもあった!

浮気したのは彼だったのに。

里香は恐怖を抑え、平然とした顔で、赤く染まった目で彼をにらんでいた。「まさくんには確かに甘やかされていた。でも、二宮家のお坊ちゃんであるあなたが私を甘やかすなんて、その話、変だと思わない?」

雅之の目には冷たいものが隠されていた。

「そんな姿、全くかわいくないけど」

雅之は里香から手を離し、立ち上がった。見下したような視線を落とし、すぐ背を向けた。

里香怒りで激しく胸を上下した。かわいくないって?

笑わせるな!

昨夜までこのベッドで愛し合っていたのに、今日は「かわいくない」と言われるなんて。

あの子に会ったせいか?

悔しさが心の中で溢れ、里香は立ち上がり駆け寄って雅之を抱きしめた。「行かないで、雅之!私たちはまだ離婚していないんだから、この家を出るなんて許さないわ!」

「頭のおかしい女がいるこの家に?」雅之は冷たく鼻を鳴らした。

二人が結婚して半年が経つので、里香はもちろん雅之を惹きつける方法を心得ていた。彼女の柔らかな指は、すぐに雅之の服の中に滑り込み、鍛えられた腹筋をなでた。

雅之は息をのみ、里香の手首を握りしめた。「何してる」

里香は雅之の目の前に歩み寄った。「かわいくないって言っただろう?雅之、立場をわきまえてから発言した方がいいよ」

男の陰鬱な顔色を見て、里香は挑発的に微笑んだ。「その子のために貞操を守りたいとでも言いたいの?でも、私たちはまだ離婚していないわ。だから、あなたには妻の欲望を満たす義務があるのよ」

里香はそう言いつつ雅之に近づいた。「どうしても無理なら、お金を払ってくれるならそれでもいいけれど。何しろ、あなたは腰が丈夫だし、この半年間、私をよく満足させてくれたから」

この女、自分を何だと思っていたか?!

心の底から怒りが湧き上がり、雅之は激昂して里香の首を絞め上げ、冷たい声で言った。「僕を挑発した結果を教えてやる!」

そして、激しく唇を奪われた。

その仕草に、以前ほど優しくはなかった。

里香は目を閉じ、まつげを激しくなびかせ、そのまま彼に抱きついた。

目尻から涙がこぼれ落ちた。

わざと挑発したのは、雅之にかつての面影を見出そうとしたからに他ならなかった。

彼は二宮雅之で、私のまさくんでもあったから。

挑発の結果を思い知った。あの夜、里香はたった三時間しか眠れなかった。激しい求めに応えながら、里香は力強く雅之を抱きしめ、何度も彼の名前を呼んだ。

まさくんは、私のものだから。

死ぬまで離婚しないわ。

翌日。

里香は遅刻したため、賃金がカットされてしまった。人事部によれば、それは社長の直接の指示だったという。

里香は歯を食いしばり、「けちなクス男!」とこっそり突っ込んだ。

たった一発殴っただけじゃないか?

仕返しが早すぎる!

それでも里香の考えが甘かった。午前の会議が終わると、桜井はまっすぐ里香の席に来て、「この報告書は現地調査が必要だから、君に頼むよ」と言った。

里香はそれを手に取って見てみると、まさかの工事現場だった。

里香は眉をひそめた。

桜井は「社長の指示に不満があるのか?」と尋ねた。

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