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第403話

慎司が一通り説明を終えると、「僕の考えをいくつか話しますけど、どうでしょうか?」と里香に尋ねた。

里香はうなずき、「戻ったら図面に反映させてみますね。またそのとき送ります」と応じた。

慎司も笑顔で「よろしくお願いします」と返事をした。

里香は立ち上がり、「では、失礼します。お邪魔しました」と席を立とうとしたが、慎司が彼女の腕を引き留め、「小松さん、そんなに急がなくてもいいじゃないですか。せっかく来てくれたんですから、一杯ぐらい飲んでいきませんか?」と誘った。

「そうだ、そうだ!美人で仕事もできるなんて最高じゃないか!」

「ほら、一杯ぐらい付き合ってよ。土地を買ったら小松さんに全部設計頼むんだから!」

周りも次々と盛り上がり出した。

里香の笑顔が少し曇ったが、それでも「すみません、設計図を直さないといけなくて......」と断った。

けれど、慎司は彼女を放さずにそのまま人混みに座らせ、「まあまあ、小松さん、もう少しゆっくりしていきなよ。せめて二杯ぐらい飲んでからね」と押し込んだ。

無理やり座らされた里香の腰に、誰かが手を回してきた。

里香は驚いて立ち上がり、「井上さん、今日は本当に急いでるんです。無理はしませんよね?」と慎司に視線を向けた。

その瞬間、慎司の顔が一瞬固まった。

「なんだよ、ただのデザイナーのくせに井上さんに顔も立てられないのか?俺たちを見下してるのか?」

「そうだよ!井上さん、こんな礼儀知らずのデザイナーどこで見つけてきたんだ?」

「今日の酒はな、飲むも飲まないも、飲んでもらうのが筋だぞ!」

慎司が何か言う前に、周りから不満の声が湧き上がっていた。誰かが里香を引っ張ってソファに座らせ、強引に酒を注ぎ始めた。

「んっ!」

里香は必死にもがいたが、酒が全身にかかり、胸元までびしょ濡れで、みっともない姿になってしまった。

周囲の男たちの目はますます冷ややかで悪意に満ちてきた。

「飲めるじゃねえか、何を気取ってるんだ?」

「これぐらい飲めなきゃ、この取引もなしかな?」

慎司は少し離れたところに座り、冷めた目で里香を眺めていた。彼に恥をかかせた彼女に腹を立てているようだった。

里香は二人に無理やり酒を注がれ、顔にも体にも酒がかかった。

彼女は激しく咳き込み、もがきながら「放してください......」と叫んだ。

その
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