第380話

相手の態度はあまりにも傲慢だった。

かおるはカッとなって、「買えるかどうかは私の問題でしょ。人のものを奪うなんて、失礼じゃない？」と食ってかかった。

女の子は一瞬言葉を詰まらせて、「睦月」と呼ばれた女性の方を悲しそうな目で見た。

睦月は腕を組んでソファに座り、サングラス越しにかおるを見据えて、言い放った。「倍の値段を出すから、その服は私がもらうわ」

かおるは冷笑しながら、「お金さえあれば何でもいいってもんじゃないでしょ？店員さんの気持ちも考えた？商品の値段を上げるなんて、市場をかき乱してるのよ。倍の値段出して、自分の命まで買えると思ってるの？」と挑発した。

睦月のマスクの下の表情が一瞬凍りついた。

「今、その服は私たちが持ってる。どうするつもり？」とさらに突き放すように言った。

なんて傲慢な言い方！

かおるはさらに怒りがこみ上げ、「いい気になるな！そんなに偉そうにするんなら、なんで帽子とマスクなんてしてるの？何か後ろめたいことでもあるんじゃない？そういえば、彼女、あんたのこと『睦月さん』って呼んでたよね？まさか、あの不倫女優の睦月じゃないの？」と皮肉を込めて言い返した。

横にいた女の子がすぐに反応し、「何言ってるの？名誉毀損で訴えるわよ！」と声を荒げた。

睦月は冷静に、「愛されてない方が不倫女と呼ばれるのよ」と切り返す。

「図々しいにもほどがある！」かおるはスマホを取り出し、睦月のサングラスと帽子を剥ぎ取って、「今日はあんたの醜態を全世界にばら撒いてやるわ。ファンがあんたのこんな姿を見てどう思うかしら？」と言い放った。

「何するの！」と女の子は服を投げ捨て、かおるを止めにかかった。

しかし、かおるの力は強く、女の子を突き飛ばしてスマホで睦月の顔を撮り続けた。

睦月は焦りながら、「あんた、正気？」と言って、顔を隠そうとするが、かおるは冷笑して、「さっきまで偉そうにしてたのに、どうしたの？怖いの？怖いなら、最初からそんな悪いことしなきゃよかったのに！」と追い詰める。

「助けて！」睦月は顔を隠しながら、外に逃げることもできず、周りの目を恐れて身動きが取れなかった。

その時、一行が服屋の前を通りかかり、この騒ぎを目にした。

睦月はその中の男性を見つけると、すぐに駆け寄り、泣きついた。「雅之さん、助けて！この女、狂ってるのよ！」

彼女は雅之