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第382話

かおるは里香を引き止めて叫んだ。「謝るわけないでしょ!こんなクズに謝るくらいなら、捕まった方がマシだわ!」

里香は少し悲しげな表情でかおるを見つめた。

二宮家がこの件に関与してきたら、ただの15日間の拘留では済まされないだろう。かおるが雅之を本気で怒らせたことで、彼女の今後、冬木での立場がどうなるか、里香は心配だった。

里香はかおるの手を握り、穏やかに言った。「かおるが拘留されるなんて、私は絶対に嫌だよ」

かおるは眉をひそめた。「でも......」

里香は雅之に向き直り、少し柔らかい口調で話しかけた。「雅之、確かに睦月さんが先に私たちを困らせたのよ。信じられないなら、監視カメラを見て。かおるは私を守ってくれたの。彼女を警察に送るなんて、私を守る人を失いたいってこと?それなら私を連れて行った方がまだマシよ」

雅之の表情が少し変わり、彼女の柔らかくなった態度を見て、わだかまりを感じたようだった。

彼が何か言おうとしたその時、睦月が後ろから口を開いた。「雅之さん、私、本当にどうしていいかわからなかったんです。この店に洋服を買いに来たんですが、この方がいきなり私の服を奪い取って、罵った上に、殴りかかろうとしたんです。見てください、この腕......」

睦月は腕を上げ、そこには明らかに引っかき傷があった。

かおるは目を見開いた。「嘘でしょ!いつ私があなたを殴ったっていうのよ?」

睦月は怯えた様子で雅之の後ろに隠れ、まるで被害者のような顔をした。

「被害者ぶるのはやめて、前に出てきなさいよ。いつ私があなたを引っかいたって?どの指で引っかいたの?こんな嘘つくなんて、恥知らずにもほどがあるわ!」かおるは睦月を睨みつけ、今にも喧嘩をふっかけそうな勢いだった。

二人を見比べると、かおるが悪者で、睦月が被害者のように見えた。

里香も続けて言った。「睦月さん、言葉には気をつけて。この店にはたくさんの人がいるのよ。皆が見ているのに、かおるが暴力を振るったなんて嘘を言って、恥ずかしくないですか?」

睦月は突然泣き出した。「雅之さん、ごめんなさい。私が悪かったです。こんな小さな傷、大したことじゃないですし、今回はこのままでいいです......」

まるでこれ以上問題を大きくしたくないかのように、追及するのを避ける態度だった。

「この狡猾な女......」かおるは冷た
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