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第387話

里香が微笑んで「だいぶ慣れてきた」と言うと、聡が「ならよかった。今夜、事業拡大のためにビジネスパーティーに行くんだけど、大物たちが集まるから君も一緒に来ない?」と声をかけた。

「私?」と里香が驚くと、聡は頷いて「そう。前にマツモトのプロジェクトやってたよね。業界でも知られてるし、君はうちのスタジオの顔だから、連れていけばクライアントもたくさん来ると思うんだよ」と答えた。

里香は少し考えてから「わかった」と頷いた。

聡は嬉しそうに笑って「じゃあ、今夜迎えに行くよ」と言い、里香も「了解」と返事をした。

スタジオはまだ始まったばかりで、こういうイベントに参加するのは大事だ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

夕方、里香が荷物をまとめて外に出ると、すでに聡の車が下に停まっていた。車に乗り込むと、聡から袋を手渡され、「これ、着替えてね」と言われた。

里香は袋を見ながら「そんなに派手にしなくてもいいんじゃない?ビジネスパーティーなんだし、シンプルでフォーマルな感じがいいと思うよ」と答えた。

聡は驚いたように彼女を一瞥して「君を連れて行くのは本当に正解だったな」とつぶやいた。

里香は淡々と微笑みながら「こういうパーティーって、みんな目的は同じで娯楽も少ないからね」と返すと、聡は頷いて「なるほど。じゃあ、任せるよ!」と頼もしく言った。

パーティー会場のホテルに着くと、すでにたくさんの人が集まっていて、皆ビシッとスーツを着こなしており、どこか冷ややかな雰囲気が漂っていた。

聡は里香にウインクしながら名刺を取り出し、次々に周りの人に話を掛けた。綺麗な女性が加わると、周りの反応はさらに良くなっていた。

里香も最初は少し緊張していたが、聡が楽しそうにやり取りするのを見て、だんだんとリラックスしていった。

その時、ふとした視線を感じ、少し不快に思った里香が振り返ると、少し離れたソファに座っている若い男性がじっとこっちを見ていた。

里香は眉をひそめて、「ここで何かされることはないだろう」と心の中で思って視線を戻した。

その直後、聡が里香を連れて、そのソファの近くまでやってきた。

「パチッ!」

突然、軽い音が横から聞こえてきた。さっきから里香を見つめていた男が、にやりと笑いながら話しかけてきたのだ。

「プロジェクト探してるんだろ?ちょうどいいのがあるよ」

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