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第386話

かおるはじっと里香を見つめ、ふと首をかしげて、「里香ちゃん、結局何が言いたいの?」と問いかけた。

里香は静かに答えた。「もう彼に歯向かうのはやめて。あなたにとって何の得にもならないから」

かおるは黙ったままだったが、心の中で納得していた。仕方ない、これが現実なのだ。

冬木は完全に雅之のテリトリー。彼を怒らせたら、簡単に消されるのは目に見えている。

里香は真剣な顔で言った。「彼との問題は私が片付ける。だから、あなたには巻き込まれないでほしい。あなたが私の弱点になるのは嫌なの」

かおるはすぐに里香を抱きしめ、「でも、里香ちゃん。私がいなかったら、あなた一人であのクソ野郎と戦うことになるでしょ?絶対いじめられるに決まってる!」と声を震わせた。

里香の目に涙が浮かび、鼻をすすりながら、「大丈夫。彼と離婚したら、たとえ彼が土下座しても、二度と振り返らないから」ときっぱり言った。

かおるは思わず手を叩き、「それでいいのよ!」と笑顔を見せた。

二人は庭を歩きながら、昔の楽しい思い出を語り合った。時間はあっという間に過ぎ、ふと目を上げると、二階のバルコニーに立つ雅之の姿が見えた。彼はじっとこちらを見つめ、遠くからでもその苛立ちが伝わってきた。

里香は軽くため息をつき、かおるに「運転手を呼ぶから、早く冬木を離れて」と静かに言った。

かおるは少しうなずき、「分かった」と答えた。

里香は運転手を呼び、かおるが車に乗って去っていくのを見送った。車が完全に見えなくなるまでじっと見つめてから、屋敷に戻った。

二階に上がり、寝室に入ると、雅之に向かって「書斎が欲しい」と切り出した。

雅之は冷たく返した。「ここはお前の家だ。好きな部屋を使えばいい」

そして少し間を置いて、「僕の書斎の隣の部屋は日当たりがいい」と付け加えた。

里香はその言葉には返事せず、三階の廊下の端にある部屋に行き、そこを自分の書斎にすることに決めた。

雅之の書斎からはほとんど見えない場所だった。里香は執事に必要なものを伝え、すぐに手配を進めてもらった。

荷物が運び込まれると、雅之は寝室から出てきて、三階に運ばれている様子を見て顔色を曇らせた。「なぜ全部三階に運ぶんだ?」

執事が説明した。「奥様は三階の部屋を選ばれました。そこを新しい書斎にされるそうです」

雅之の顔はさらに険しくなった。彼は無
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