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第388話

聡は振り返り、「それ、どういう意味ですか?」と少し警戒しながら尋ねた。

浩輔は薄く笑いながら、「まぁ、話は座ってからだ。相手にしないつもりか?それなら、お前たちのスタジオはもう終わりだな」と、まるで無関心そうに言い放った。

その横柄な態度に、聡も里香も完全に軽んじられているのが感じられた。しかも、浩輔が里香をまるで獲物のように見ていることは明らかだった。

聡の顔には緊張が走り、険しい表情になった。

一方、里香は一歩前に出て、「私、あなたのことは知らないんですけど」と冷静に言い返した。

浩輔はそれを軽くいなすように、「関係ないさ。俺が知ってればそれで十分だ。さぁ、ここに座れ」と、自分の膝を叩いて誘う仕草をした。

その場は一瞬で嘲笑に包まれ、浩輔の取り巻きたち――友人やボディガード――が、嫌らしい目つきで里香を見つめていた。周りの人たちも、助けに来るどころか、浩輔の影響力を恐れて関わりたくないという様子がはっきりと見て取れた。

里香の表情も険しくなった。

「この男、かなり強力な後ろ盾があるみたいね」と、里香は考えながら、一瞬視線を落とし、すぐにスマホを取り出して電話をかけ始めた。

それを見た浩輔は鼻で笑い、「何だ、助けを呼ぶ気か?なら見せてもらおうじゃないか。この冬木で、俺に逆らえるやつがいるとでも?」と挑発するように言った。

「二宮雅之」と、里香は静かに名前を告げた。「ちょっと困ってるの。今どこにいるの?」

その声は決して大きくなかったが、会場全体に静かに響き渡った。

浩輔の顔が一瞬ひきつった。「今、なんて言った?」

横にいた男が慌てて、「横山さん、彼女が呼んだのは…二宮雅之みたいですよ」と囁いた。

浩輔はその男の頭をパシッと叩き、「バカ言え!こんな小娘が二宮雅之なんか知ってるわけがないだろう!」と、苛立った様子で叫んだ。

周りの人々は息を呑み、里香に疑いの目を向けた。彼女が本当にあの二宮雅之と知り合いなのか、誰も確信を持てずにいた。

浩輔は苛立ちを隠せず、里香のスマホを強引に取り上げ、「見栄を張るのはやめろ。大人しく従わないと、お前もお前のスタジオもこの街から追い出すぞ!」と、乱暴に電話を切った。

目の前の小娘が、あの二宮雅之と知り合うなんて、初めから信じていなかった。

あれは、冬木のトップの名門、二宮家の御曹司、そしてDKグル
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