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第384話

里香は怒りを込めて雅之を睨みつけ、「雅之、かおるをどこに連れて行ったの?私たちの問題に、関係ない人を巻き込まないでくれる?」と声を荒げた。

雅之は鼻で軽く笑い、「僕たちの問題に、あいつが何の権利で口を出すんだ?」と言い放つ。

里香の体は怒りで震えた。

雅之は人前でこれ以上争うのを避けたかったのか、無理やり里香の腕をつかんでショッピングモールの外に引き出し、車に押し込んだ。

「かおるを放して!」里香は必死に抵抗しながら叫んだ。

雅之は冷たく肩を押さえつけ、「かおるを放してほしければ、大人しくして僕を満足させろ。そうすれば自然に放してやる」と低く言った。

里香は雅之をじっと見つめた。そこに見える彼の顔が、まるで知らない人のように感じられた。

雅之が車に乗り込むと、窓の外の視線が遮られ、彼の表情はますます冷たく険しくなっていた。

感情を抑え込みながら、里香は静かに言った。「雅之、今日のことは私が悪かった。睦月さんを叩くべきじゃなかったし、あんなことも言うべきじゃなかったわ。お願いだから、かおるを放してくれない?」

素直な謝罪にもかかわらず、雅之の表情は変わらず冷たかった。「お前はもう離婚することしか考えてないのか?」と問いかけた。

里香の睫毛が微かに震えた。彼の問いに答えたら、何を言い出してしまうかわからなかった。

雅之は返答を待つことなく、胸の中に苛立ちを抱え、ネクタイを引っ張りながらその苛立ちを紛らわそうとしていた。

車内は一瞬にして重苦しい空気に包まれた。

里香は怒りと悲しみに打ちひしがれていたが、かおるが捕まっている以上、感情を爆発させることはできなかった。

彼女は泣きそうだった。どうしてこんな人を愛してしまったんだろう。

それでも、今はかおるを救うことが最優先だった。

「雅之、かおるを放してくれない?私はあなたの外でのことには何も言わないから。あなたが他の女と一緒にいても、何も見なかったことにするわ。お願い......」

里香の声は弱々しく、ほとんど懇願するような響きになっていた。

雅之はますます険しい顔つきになり、「随分寛大になったな」と皮肉げに返した。

「それがあなたの望みなんでしょ?」里香はそう返す。

雅之は彼女をじっと見つめ、「僕が何を望んでるか、お前は本当にわかってないんだな」と冷たく言った。

里香は口を開いた
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